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中国の全国版排出量取引制度(C-ETS)、スタートから1カ月で初値から15.5%上昇。取引量等は安定的に推移(各紙)

2021-08-23 22:38:32

C-ETSキャプチャ

 

    中国が7月にスタートさせた全国版のCO2排出権取引制度(C-ETS)が先週で一カ月の節目を迎えた。上海の上海環境能源交易所でのカーボン取引価格はEU市場等に比べると低いものの、比較的安定的に上昇し、市場運営も順調に推移している。8月12日の終値は1㌧当たり55・43元(1元=約17円)で、7月16日の最初の価格から15.5%上昇した。

 

 C-ETSは7月16日に正式に取引を開始した。初値は1㌧当たり48人民元(7.40㌦)。最初の取引は取引量16万㌧、52.78人民元で成立した。初日の平均取引価格は51.23人民元。取引量は410万4000㌧、出来高は2億1000万人民元を超えた。

 

 AFP等の報道によると、その後、取引量が次第に減少し、1日わずか2万㌧の営業日もあった。C-ETSの規制対象は当面、電力会社だけで、かつ対象業が排出削減義務を履行するまでには時間があることから、クレジット取引で不足分をカバーする取引需要は年後半にならないと顕在化しないとみられることなどから、取引需要は大きくないとみられていた。

 

 ただ、立ち上がりから1カ月の間で、取引に慣れることを目指して、次第に市場参加する企業が増えてきたとみられる。今月12日までの累計取引量は646万7800㌧、出来高は3億2600万人民元となった。初日の「ご祝儀取引」の後、約5割程度の取引が緩やかに続いてきたことがわかる。

 

 C-ETSの対象となる電力会社は、国内のCO2排出量の40%以上を占める事業者2225社。年間約45億㌧のCO2排出量となる。各社に対する排出許容枠はEU-ETSの第一フェーズと同様、グランドファザリングルール(直近年の排出量の平均)で認められており、コロナ禍の影響もあって、各社の排出枠の達成はかなり余裕があるとみられる。

 

 ただ、スイス金融大手UBSによると、初年度の取引によって、非効率的な火力発電事業者は9%の減益となる一方、クレジットを売却できる水力発電事業者は7%の増益になるとみられている。

 

 一方で、気候変動の加速化現象が各地で起きていることから、世界最大の温室効果ガス排出量である中国の排出削減を促進する声が高まっており、排出権取引規制の対象産業の拡大、排出許容枠の強化等を求める国際圧力も強まりそうだ。

 

 そうした国際環境を意識してか、中国生態環境部の劉友賓(Liu Youbin)報道官は、発電企業を中心としたCO2市場の良好な運営を土台として取引対象業界を増やし、排出量が大きい企業をさらに参加させるとともに、取引の品目や方式、主体を徐々に充実させ、排出権取引市場の活力を高めていきたいと述べている。

https://www.afpbb.com/articles/-/3362443?cx_part=top_category&cx_position=2