HOME13 原発 |ドイツ、「脱原発」の完了を一時延長。ロシアからのエネルギー供給停止に備え、残る3基の原発のうち、2基を来年4月半ばまで非常用の予備電源として維持。残り1基は年内停止(RIEF) |

ドイツ、「脱原発」の完了を一時延長。ロシアからのエネルギー供給停止に備え、残る3基の原発のうち、2基を来年4月半ばまで非常用の予備電源として維持。残り1基は年内停止(RIEF)

2022-09-06 11:33:47

nuke002キャプチャ

 

  ドイツ政府は5日、国内で稼働中の原発3基のうち2基を2023年4月半ばまで稼働させると発表した。同国は今年末までに3基の原発をすべて閉鎖して、脱原発を完了させる方針だったが、ロシアのウクライナ侵攻の影響でロシアからの天然ガス輸入が大幅に減少、今冬の暖房需要をまかなえない可能性に備えて一時稼働させる。

 

 (写真は、来年4月半ばまでの稼働延長が決まったドイツのイザール2原発)

 

 ドイツ政府は、冬のエネルギー需要増大に備えて、原発稼働を続けるかどうかのストレステストを実施した。その結果、電力網で危機的な状況が発生する可能性は低いとしながら「完全には排除できない」との結果となった。

 

 この結果を受け、エネルギー政策を担当する副首相のロベルト・ハーベック(Robert Habeck)経済・気候保護相は同日、「今冬に、電力供給の危機が起きる恐れを完全には否定できず、追加の対策が必要との結論に至った」と説明。原発3基のうち、同国南部にある2基を来年4月半ばまで非常用の予備電源として使えるようにする方針を公表した。

 

 ドイツはメルケル前政権時に、日本の東京電力福島第一原発事故を受けて、国内の全原発の停止を決定し、現在は、残り3基だけが稼働中。3基とも年内に閉鎖する予定だった。現シュルツ政権は、社会民主党、自由民主党、グリーン党の連立で、脱原発を支持するグリーン党は一時的にしろ、稼働延長すると、長期稼働につながるリスクがあるとして、政策変更に難色を示していた。https://rief-jp.org/ct10/127884

 

 ただ、国内での世論調査では、稼働の継続を求める回答が8割に達するなど、国民の間では、エネルギーを「人質」にとったロシアの圧力に対抗するには、「脱原発」を一時的に先延ばしすることに強い抵抗感はない状況だ。https://rief-jp.org/ct13/127433?ctid=76

 

 稼働を一時的に延長するのは、南部にある「イザール2(Isar 2 )」と「ネッカーベストハイム2(Neckarwestheim 2)」の原発2基。西部にある「エムスラント」は予定通り22年末に稼働を終える予定。稼働させる2基については新たな燃料は投入せず、23年4月中旬に原発ゼロを完了させる方針。

 

 今回の決定では、脱原発政策自体は堅持した。ハベック氏は「原子力はリスクの高い技術であり、放射性廃棄物は世代を超えて負担になる」とも指摘した。同国の電源構成に占める原発の比率は22年1~3月時点で6%と低い水準にある。電力全体の半分近くは風力や太陽光などの再エネ電源が占めている。2030年までに電力消費量の8割を再エネで賄う計画だ。

 

  日本でも岸田政権は、原発の再稼働から新規建設を展望する発言をしている。これに対して、ドイツの再稼働はあくまでも、ロシアからの天然ガス輸入の削減・停止に対抗する一時的措置との位置づけだ。ただ、ウクライナ戦争が長期化する中で、冬のエネルギー需要期を越えた後の実務的な対応については、先送りする形でもある。

https://www.dw.com/en/germany-to-extend-last-2-nuclear-power-plant-lifespans-by-a-few-weeks/a-63023953