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英国も昨年(2022年)の発電量の4分の1を風力発電で供給。ドイツとほぼ同水準に。昨年11月には、発電量の7割を「CO2フリー電力」でカバー(RIEF)

2023-01-07 19:47:49

UKwind001キャプチャ

 

  英国の昨年の発電量の4分の1強が、風力発電で占められたことがわかった。風力は電源別では天然ガス火力に次ぐ2番目 の主電源の座となっている。先にドイツも再エネ発電が電力消費量の半分に達し、風力発電も英国同様、全体の4分の1を占めた。一方、わが国の風力発電はわずか0.9%、再エネ全体でもやっと2割に届いたというスローペース。石炭火力発電の温存と、原発新増設をエネルギー政策の柱とする経済産業省の政策運営が、再エネ発電を抑える影響を及ぼしており、日本は当分、「再エネ後進国」の座から抜け出せそうにない。

 

 英National Gridの最新データによると、2022年の風力発電の発電量は前年比で5%㌽上昇し、英国の発電量全体の26.8%を占めた。風力が電源構成で4分の1を占めたのは英国では初めて。風力発電量の増えた要因としては、昨年8月、デンマークの再エネ開発会社オーステッド(Orsted)が北海で開発中だった世界最大の洋上風力発電事業「Hornsea 2 wind farm」が正式稼働したことが大きい。同事業は約140万世帯の年間消費電力を供給できる。

 

 先に公表されたドイツの電力消費量では、再エネ電力の割合は全体の48.3%と前年の42.7%から5.6%㌽上昇し、50%台に接近した。再エネ電源別では、陸上・洋上を合わせた風力発電が全体の25.9%、次いで太陽光発電が11.4%、バイオマス8.2%、残りの2.8%が水力やその他の再エネ電力となっている。https://rief-jp.org/ct10/131409

 

 英国の風力発電は、風が強かった2月には、国全体の月間電力消費量の41.4%を発電した。また11月3日の一日でみると、風力発電だけで20896MWと初の20GWを発電、同日の英国全体の発電量の53%をカバーした。風力に加えて、他の再エネ、原発を含めると電力の70%が「CO2フリー」で占められた。https://twitter.com/NationalGridESO/status/1588185454590889984

 

英国の電源構成(2022年)
英国の電源構成(2022年)

 

 National Gridは「風力発電による電力は、英国の電力網の運営においてさらに重要性を高めている」と強調している。英国の北海等では、現在も新たな風力発電事業が開発中で、風力発電の比率は今後さらに高くなる見通しだ。22年の再エネ全体の割合は38.2%と4割に近づいている。英国では日照条件が良くないことから、太陽光発電比率は4.4%と風力の6分の1程度。石炭火力は1.5%に過ぎない。

 

 しかしその英国でも10年前の2012年には、石炭火力が電源の40%を占め、風力発電は5.5%に過ぎなかった。それが北海等の洋上風力発電に適した地域での開発に政府が力を入れ、内外の民間開発事業者と連携して大規模プロジェクトを展開してきたことから、風力発電は10年で主電源化した。風力発電は大規模な設備投資を必要とするが、風車の大型化に伴って、一基当たりの発電量が大きく、さらに蓄電設備との併用で、安定電源化している。大型ウィンドファームの運営は、風車のメインテナンス等を軸に、沿岸地域の都市に新たな雇用も生み出している。

 

 英国で風力発電よりも、発電量が多いのは天然ガス火力。電源全体の38.5%を占める。ただ、伸び率は21年の37.8%から0.7%㌽でほぼ横ばい状態。英国は原発も維持しているが、原発は昨年、2つの原発が稼働を停止したこともあって、電源構成比は15.5%で風力より11%㌽も低い。

 

 一方、日本の2021年度の電源構成(速報値)では、年間の発電電力量に占める再エネ発電比率は20.3%と初めて2割を超えた。だが、4割を超える英独、さらにスペイン等に比べると、かなり劣るほか、中国も3割近い再エネ比率に達しており、いずれも日本を上回る。日本では石炭火力発電の廃止が進まないことから、CO2排出量も20年度まで低下傾向を辿っていたものの、21年度は前年度比1.2%増と8年ぶりの増加に転じている。現行のエネルギー政策の「行き詰まり」が見えている。

 

https://www.nationalgrideso.com/news/britains-electricity-explained-2022-review