ブラジルで開催中の「エクエーター原則協会年次総会」。気候変動対応と先住民族の人権擁護を原則に盛り込むことを求めるNGO・団体の要請を受け、大きな焦点に（RIEF）
2017-10-25 07:15:45
ブラジルのサンパウロで23日～25日の予定で開いている国際金融機関による「エクエーター原則協会（EPA）」の年次総会に対して、世界の環境NGOや先住民族代表らが「原則の改定」を求めて、大規模な要請行動を展開している。
（写真は、石炭関連投融資の停止をBank of Americaの支店に直接要請する抗議活動の模様）
エクエーター原則（赤道原則）は国際的なプロジェクトファイナンスに伴う環境・社会影響を、事前に金融機関が自主的にチェックする制度として2006年に発足した。現在、91の国際的金融機関が採択している。原則の内容もこれまで2度にわたって改定されてきた。
しかし最近になって、同原則に署名している金融機関が、石炭火力発電所事業に投融資を続けていたり、米国のトランプ政権下で、米先住民族の居留地を無視する形で推進されたDakota Access Pipeline（DAPL）事業のような人権無視の事業にファイナンスするなどのケースが各地で起きている。DAPL事業には、同原則に署名する日本の3メガバンクをはじめ、欧米のエクエーター銀行も資金供給をしている。
こうした状況から、エクエーター原則参加金融機関の行動をフォローしている環境NGOのBankTrackをはじめ、世界の環境・人権NGOら65団体が8月に連名で、原則の全面改定を求める公開書簡をEPAの理事会に送付した。同要請に対して、世界246のNGO・団体と11万人を超す個人が、支援の輪を広げている。
今回のEPA年次総会は、その成否を問う場でもあるのだ。しかも、原則改定を求める動きは、NGOサイドから出ているだけではない。今年5月に、フランスやオランダ、イタリアの10の原則署名金融機関が連名でEPAに対し、①現行の原則の内容では先住民族の権利擁護が十分でない②原則の土台である国際金融公社（IFC）のパフォーマンススタンダードに比して問題がある――と指摘して、協定の見直しを求める声明を出している。10の金融機関は、フランスのSociété Générale、BNP Paribas、Credit Agricole CIB，オランダのABN Amro，Raabo Bankなど。http://rief-jp.org/ct6/72267
また仏大手銀行のBNP Paribaは、年次総会の直前に、シェールオイルや同ガス、オイルサンド（石油成分を含む砂岩）の探鉱・生産・供給に関連する企業向け投融資の全面停止と、北極海での採掘事業への投融資取りやめを宣言した。化石燃料事業からは温室効果ガスが大容量で排出され、パリ協定に反するため、との理由だ。http://rief-jp.org/ct6/73507
こうしたことから、EPAの今年次総会では、気候変動対応と先住民の人権・居住権の尊重を協定の中に盛り込むかどうかの議論が最大のポイントとなっている。NGOや支援者たちは、年次総会の会場周辺で要請行動をとるほか、米国、カナダ、欧州、アジアなどの44都市で「DivestTheGlobe」金融機関への要請行動を市民に呼び掛ける活動を同時に展開している。
また、米国の98の宗教・倫理団体は宗派を超えたグループを構成して、米国のBank of America、 Citibank、 JPMorgan Chase、 TD Bank、Wells Fargoの5金融機関に対して、直ちに化石燃料関連事業への投融資を停止するよう要請した。また、10のエクエーター銀行が協定改定を提案している内容にそった協定の改定も呼びかけた。http://lastrealindians.com/faith-community-calls-on-us-banks-to-cease-fossil-fuel-financing/
BankTrackは、こうした各方面からの協定改定の要請が高まっていることを踏まえて、91の署名金融機関に向けて、「署名機関は、もはや『何もしない』というオプションは取り得ない。そうした選択は、エクエーター原則の評判を決定的に打ち砕く」と警告を発している。さて、「エクエーター原則Ⅳ」に向けた作業が立ち上がるかどうか。
Research Institute for Environmental Finance