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東京オリンピック大会の競技場建設工事で、違法な熱帯木材型枠の使用問題。大会当局はNGOの利用停止要請を拒否。「持続可能なオリンピック」の看板に汚名(RIEF)

2017-11-03 17:17:01

ran2キャプチャ

 

  レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)などの環境NGOは、2020年の東京オリンピック大会の競技場建設に不法伐採の疑いのある熱帯林合板が使用されている問題で、大会当局側からの回答を明らかにした。それによると当局側は、欠陥のある木材調達コードの改訂を拒否するともに、合板の使用を続ける姿勢を堅持した。これに対して、NGO側は「疑念のある熱帯材の使用継続は、持続可能なオリンピック開催という日本の約束と矛盾している」と批判声明を出した。

 

 NGOとオリンピック関係者は10月19日に会合を持ち、意見交換をした。当局側は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、日本スポーツ振興センター、東京都オリンピック・パラリンピック準備局の各関係者が出席した。NGO側はRANのほか、ブルーノマンサー基金(スイス)、サラワク・ダヤク・イバン協会(マレーシア)、マーケット・フォー・チェンジ(豪)、熱帯林行動ネットワーク、FoE Japanの各団体。

 

 NGO側は、新国立競技場の建設に大量の熱帯材のコンクリート型枠合板が使われており、その大半が違法伐採、熱帯林破壊、現地住民の土地権侵害などの問題を引き起こしているマレーシアとインドネシアから持ち込まれている、と批判してきた。また木材調達コードに例外規定などの欠陥があるなどを指摘、コードの改定を要請してきた。

 

熱帯林合板のコンクリート型枠
熱帯林合板のコンクリート型枠

 

 こうした要請と公開質問に対して、大会当局側は、コードの改訂については明確に拒否し、コードの要件に準拠していると認定された熱帯材の使用は引き続き続けるとの姿勢を強調したという。コードは、一方で国産材の使用を優先させる方針を示している。

 

 だが大会当局は、コンクリート型枠用合板に、持続可能な森林が証明される国産材の使用を優先させる考えはないとの判断であることもわかったという。ただ、熱帯材使用について、より透明性を確保することは約束し、関連施設建設現場で使用される型枠合板の量および正当なデューデリジェンス(確認)プロセスを開示することは認めた。

 

 こうした当局側の姿勢に対して、RANのハナ・ハイネケン氏は「東京大会で熱帯材を継続して使用し、合理的なデューデリジェンスを拒否していることは、持続可能なオリンピックを開催するという日本の約束と矛盾している。当局は木材調達コードを改善する必要がある」指摘している。

 

 熱帯林行動ネットワークの原田公氏も「大会当局の姿勢は、責任ある形で製造された国産型枠合板が利用可能であるにもかかわらず、それを優先せず、責任あるビジネスを目指している日本企業に間違ったメッセージを送っている」と述べている。

 

森を丸ごと破壊するサラワクでの伐採の模様
森を丸ごと破壊するサラワクでの伐採の模様

 

 NGO側の調査では、今年4月、新国立競技場の建設現場でマレーシアの木材会社シンヤン社が供給した熱帯材合板が使われていることがわかった。同社はマレーシアのサラワクで、手つかずの熱帯林を組織ぐるみ破壊し、違法伐採や人権侵害に関与してきた、と現地で批判されている。http://rief-jp.org/ct12/69522

 

 こうした実態を踏まえて、世界中の47のNGOが、9月11日に国際オリンピック委員会(IOC)と東京大会当局に公開書簡を送り、熱帯材及びその他の高リスクな供給源からの木材の使用の終了、使用される熱帯材の出所と量の開示、木材サプライチェーンの完全な追跡可能性と第三者検証、より強い木材調達ルール、他のすべての森林リスク商品に対する確固としたな調達要件の採用などを要求していた。http://rief-jp.org/ct12/72596

 

 日本は、熱帯材合板を世界でもっとも多く輸入している国として知られる。その多くはマレーシアとインドネシアの熱帯林から来ている。しかし、 日本の木材調達は合法性や持続可能性を確保できていないことで、国際的にも広く批判されてきた。NGO側は、「東京大会は、日本が欧米並みの調達基準に切り替えるチャンスだった。だが、日本は従来のビジネス慣行に固執した」(マーケット・フォー・チェンジのペグ・パット氏)と指摘している。

 

 アジア、南米、アフリカの熱帯林は温室効果ガスの吸収に重要な役割を果たしている。しかし、大規模伐採や違法伐採などでその劣化が続き、熱帯林が炭素排出の吸収源から排出源転じているとの報告もある。 熱帯林の減少と劣化は、地球温暖化ガス排出量の約5分の1を占めている。

 

 このままでは、「東京オリンピックが温暖化を加速した」との見方も出て来そうだ。「グリーン」「持続可能性」を掲げる小池百合子都知事はこのままま、大会当局のやり方を受け入れていくのだろうか。それでは、希望だけでなく、グリーンの色も色褪せてしまう――。

 

 NGO側は、日本が真に持続可能なオリンピック・パラリンピックを開催するには、紙パルプ、パーム油、ゴムなどの他の全ての森林リスク商品を対象とした、明確な調達要件を築くことが必要、と主張している。

 

http://japan.ran.org/?p=1136