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東北小水力発電(秋田)、豊田通商と連携、トヨタの廃プリウスの部品を再活用する発電システム開発。コスト3分の1に抑制。従来よりさらに「小さな」小水力発電の実用化が可能に(RIEF)

2019-03-16 22:57:40

Hibrid3キャプチャ

 

 小水力発電の開発ベンチャーの東北小水力発電(秋田市)は豊田通商(名古屋市)と連携し、廃車になったハイブリッド車(HV:トヨタ自動車のプリウス)のモーターなどを再利用して小水力発電に組み込むことで、従来より3分の1にコストを抑えることのできる新型発電システムを開発した。コスト削減で、これまでよりさらに小規模な小水力発電の実用化が可能になるという。2019年度中に発売の予定。

 

 (写真は、プリウスの部品=㊨=を組み込んだ小水力発電設備)

 

 東北小水力発電は、コンピューターで水の流れをシュミレーションする「流体解析技術(CFD)」を使った水車発電機の設計・開発で知られる。小水力は水車と発電機から構成されるが、これまでは発電機や制御機器がコストダウンのネックとなっていた。

 

 今回、豊田通商、早稲田大学と共同で、廃車のプリウスから取り出したHVユニット(モーターやインバーターなど)を発電機として再活用することに成功した。開発したのは定格出力10kWクラスで、一般家庭なら20数世帯分の電力をまかなうことができるという。広いスペースがあれば、複数つないで出力アップも可能。1台のプリウスの部品を1基の小水力発電に充当できる。

 

ハイブリッド車のモーターを再利用
ハイブリッド車のモーターを再利用

 

 廃プリウスのモーター等を再利用することで、コスト面では、電気機器を従来の10分の1に抑制、小水力発電全体でも、従来の3分の1の1基約600万円に抑えることできるという。すでに試作品は早稲田大学で完成させており、現在、実証実験を重ねている。また、先に千葉・幕張メッセで開いた「地方創生EXPO」でも展示された。

 

 廃プリウスの再利用効果はコスト削減面だけでない。可変速運転制御によって、水車の発電効率も大幅に向上するという。東北小水力では、実用化段階では秋田県内の企業と連携して、地元での生産を進める方針だ。


 プリウスは1997年の発売からすでに20年以上が経過しており、国内市場では年間2万~3万台が廃車になっている。海外でも人気だが、リサイクルの整備されていない国では、一部で不法投棄もされているとの話もあるという。今回の取り組みは、廃プリウスのリサイクルと利活用という資源循環(サーキュラーエコノミー)のモデルになる期待もある。

 

右から、北林・秋田県信用組合理事長、和久・東北小水力発電社長、トヨタ自動車技術担当、豊田通商部長
右から、北林貞男・秋田県信用組合理事長、和久礼次郎・東北小水力発電社長、中江公一・トヨタ自動車パワートレーンカンパニー・パワートレーン事業戦略グループ主査、山岸直人・豊田通商金属資源第一部長

 

 東北小水力の和久礼次郎社長は「小水力発電は規模が小さいと採算が取れないため、これまで50kW未満では導入が進まなかった。今回の低コスト化で、導入範囲が広がる。農業用水路だけでなく、上下水道などでも利用可能で、海外での展開も拡大する可能性がある」と述べている。

 

 小水力発電の適地は国内に約3000カ所あるほか、海外での市場調査では、東南アジアや中東のイランなどだけで、5000カ所~7000カ所あるとされる。地域循環型の発電システムとしての発展が期待される。

 

 豊田通商の山岸直人金属資源第一部長も「車として寿命を終えたプリウスの部品が、小水力発電の発電機として地域社会で蘇る。まさに資源循環として期待している」と語っている。

 

 東北小水力発電を金融面から支援している秋田県信用組合(秋田市)の北林貞男理事長は「廃プリウス部品の再利用でコストダウンすることで、これまで採算性が見込めないと諦めていた県内の多くの適地をはじめ、日本中に新市場が広がる」と評価している。

 

http://www.tohoku-hydropower.jp/

https://www.akita-kenshin.jp/