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川崎重工、大気中のCO2を直接回収・貯留する「DAC」技術の実証化に取り組み。2025年には実用化目指す。日本企業のDAC本格取り組みは初めて(各紙)

2021-12-04 12:44:22

kawsakiキャプチャ

 

 各紙の報道によると、川崎重工は2025年にも大気中のCO2を直接回収する直接大気回収(DAC)技術を実用化することを目指す取り組みを進めているという。回収後のCO2はCCSを使って地中に貯留する。DAC技術は欧米のベンチャー等が取り組んでいるが、日本で具体的な取り組みを明らかにしたのは同社が初めて。実用化されれば、「2050年ネットゼロ」に向けて、温室効果ガス排出削減策の一つとして活用されそうだ。

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、同社は兵庫県の拠点で自社開発したDAC技術の実証実験に乗り出したという。現状では、1日5kgのCO2を回収できる規模だが、2025年には回収能力を500~1000kgに高めて、ビルや商業施設などでの設置を想定しているという。実証化の見込みが得られれば、温室効果ガス排出対策の一環として企業向けの事業として展開する考えだ。

 

 DACのCO2回収技術には、 CO2を液体に吸収させる化学吸収法と物理吸収法、固 体表面上につけたアミン化合物に吸収させる固体吸収法、固体表面上に吸着させる物理吸着法、膜分離法、 極低温下で液化し沸点の違いを用いて分離する深冷分離法等、多様な手法がある。

 

 報道では、川崎重工が採用する方式は明確に記載されていない。だが、「凹凸が多く表面積が広い粒状の物質の表面にCO2を吸着する特殊な溶液を塗って、装置内に取り込んだ大気と触れさせる」としている。その後に、CO2を吸着した物質を、蒸気で加熱してCO2を分離・回収する。

 

 吸着剤に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使う場合、吸着したCO2を分離・回収する際に、800℃以上の高温熱での蒸気が必要となる。川崎重工の場合、「自家発電装置の排熱などでまかなえる60度の蒸気で分離できる」としているため、吸着剤は乾式吸着材のアミンを使うとみられる。

 

 アミンを使用したDACシステムはすでに、スイスのベンチャーClimeworks社が実証実験段階に入っている。乾式システムのメリットは、CO2の脱着に100℃未満の熱で済むため、加熱機器が不要となり、回収装置を小型化できるメリットがある。回収したCO2はCCSで地中に埋める計画のようだ。

 

 Climateworksの場合、回収したCO2をより永久的に安全貯留するため、地下の玄武岩の岩盤層内に注入・貯蔵する方式をとる。岩に注入されたCO2は岩盤内で2年ほどで炭酸塩鉱物等に変容し永久に封じ込められる。同社は現在、アイスランドでDACの実証プラントを建設し、これら新技術の検証を進めている。https://rief-jp.org/ct10/117849

 

 国際エネルギー機関(IEA)によると、DAC技術導入のプロジェクトは現在、世界全体でClimateworksを含め15カ所で推進中(2020年時点)。米国では、グローバル・サーモスタット社がエクソンモービルの支援で開発を進めている。現在のDACによる回収量は年9000㌧超にとどまるが、IEAは2050年には年1億㌧、70年に7億㌧に増大すると推測している。

https://r.nikkei.com/article/DGKKZO78158820T01C21A2TB0000/?type=my#AAAUAgAAMA