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年間4000㌧のCO2を大気中から吸収、地下で石に転換し永久保存。スイスのベンチャー企業による、CO2直接吸収技術(DAC)の世界最大プラント、アイスランドで稼働(RIEF)

2021-09-09 18:38:18

Climatework001キャプチャ

 大気中のCO2を直接吸収する技術(DAC)を開発しているスイスのベンチャー企業、Climateworks社は8日、アイスランドで世界最大のDACプラントを稼働させた。年間4000㌧のCO2を大気中から吸収する。自動車790台分が年間排出するCO2量に匹敵する。プラントは地熱発電の電力を使用することからカーボンフリーでもある。吸収したCO2は地中深くに埋めて石化させ、永久に封じ込めるという。

 稼働したプラントはシャチを意味する「Orca」と命名された。Climateworksはチューリッヒ工科大学出身のChristoph Gebald氏とJan Wurzbacher氏が、2007年にDAC技術の開発を始め、2010年に立ち上げた。

  今回のアイスランドでのプロジェクトは2020年5月からプラントの建設を進めてきた。15カ月間の実証実験となる。大気中のCO2を吸収するユニットは、コンテナ型で、積み重ねて操業できる。世界中どこにでも運んで、その地域のニーズに応じて、つなぎ合わせるコンテナを増減できるという。

 Climateworks003キャプチャ

 大気中のCO2は地熱エネルギーを使って吸収する一方で、吸収したCO2の貯留方法も、化石燃料処理で活用するCCSとは異なる。CCSの場合、地下の帯水層に貯留するが、DACの場合、パートナー企業のCarbfixの技術を使って、地下の玄武岩の岩盤層内に貯蔵する。貯蔵されたCO2は岩盤内で炭酸塩鉱物等に変容し永久に封じ込められる仕組みだ。

 「世界最大のDAC」ではあるが、吸収量の4000㌧は、世界全体のCO2排出量315億㌧に比べると、微々たるものだ。国際エネルギー機構(IEA)によると、現在、世界中で稼働しているDAC事業は15件あり、これらの全体吸収量は9000㌧という。いずれも実験的な事業にとどまっている。

 最大の課題はコストだ。Climateworksは現時点では明確なコストを公表していないが、CCSよりもかなり高いのは間違いない。しかし、Climateworksの活動に対しては、先にスイス再保険(Swiss Re)が今後10年間で、1000万㌦以上のCO2の直接回収・貯留を実施する長期契約を結ぶなど、支援企業等も増えつつある。今回のOracの稼働に際しては、アイスランドの地熱発電企業のON PowerがCO2フリー電力を供給している。

 Orcaとは別に、米大手石油会社のOccidentalが現在、テキサス州で年間100万㌧規模のCO2吸収が可能な世界最大のDACの開発中とされる。日本でも再エネ拡大だけでは、2030年46%削減(2013年比)は容易ではないとされる。低コスト、効率的なDACプラントを日本の技術で開発できないか。

https://climeworks.com/news/climeworks-launches-orca