HOME12.その他 |地球上の「公海」保全のための国際条約「国連公海条約」締結で各国が合意。公海の30%を海洋保護区に、海底資源開発等に環境アセスメントや漁業乱獲防止等で国際ルール化(RIEF) |

地球上の「公海」保全のための国際条約「国連公海条約」締結で各国が合意。公海の30%を海洋保護区に、海底資源開発等に環境アセスメントや漁業乱獲防止等で国際ルール化(RIEF)

2023-03-06 23:26:40

UNHighSeaTreaty

 

 国連の政府間会合は4日、地球上の海洋の過半を占める「公海」の生物多様性の保全と持続可能な利用を目指す「国連公海条約(UN High Seas Treaty)」の締結で合意した。どこの国にも属さない公海で現在、海洋生保護等が図られているのはわずか1%以下。違法な乱獲漁業や、膨大な廃棄物の流入、気候変動の影響等を受け、海洋生態系は危機的状況に直面している。新条約では2030年までに、公海の約30%を保護区に設定するほか、海底の鉱物資源開発等での新たな規制を設けることを目指す。

 

 「各国領海を超えた海域での海洋生物多様性に関する政府間会合(BBNJ)」は2004年に公海の海洋保全の議論を始めた。19年目でようやくスタートラインに立ったことになる。今後、公式の合意をし、採択された条約案に調印する国が一定数を超えた段階で、正式に条約として成立する。

 

 締結を目指す国際条約は、「各国領海を超えた海域での生物多様性の保全と持続可能な利用に関する海洋法国連条約(United Nations Convention on the Law of the Sea on the conservation and sustainable use of marine biological diversity of areas beyond national jurisdiction)」が正式名称。ドラフト案の採択で今回、合意に達した。

 

 公海条約は、国連が推進する持続可能な開発目標(SDGs)のほか、昨年末に開いた国連生物多様性条約締約国会議「COP15」では、2030年までに各国は自らの国土と海洋の少なくとも30%を自然保全の対象とする「30-by-30」目標等で合意した「昆明・モントリオール目標」等と連動する形で海洋生態系保護の国際的フレームワークとなる。これまでの各国領域での保全確約を、公海に拡大することになる。https://rief-jp.org/ct12/131095?ctid=65

 

 条約の詳細はこれから詰められるが、海洋保護区の設定に加え、海洋資源の開発等の商業活動に関する環境アセスメントのルール化や、海底資源開発の制限、プラスチックごみを含む膨大な廃棄物への対応、違法な乱獲漁業の制限等が課題となる。海洋性の遺伝子資源等から医薬品などを開発した場合、その利益の一部を新たに設置する基金に拠出させ、海洋保全に取り組む発展途上国等を支援する仕組みも盛り込む予定だ。

 

国連政府間会合をまとめ上げたシンガポールのLee大使
国連政府間会合をまとめ上げたシンガポールのLee大使

 

 政府間会合の議長を務めたシンガポールの国連大使Rena Lee氏は、会合が合意に達した際、「みなさん、『船』はついに岸にたどり着きました」とのコメントを出した。グテレス国連事務総長も「この条約は、気候変動、生物多様性損失、それに汚染という3つの地球的危機に対処するうえで極めて重要だ」との声明を出した。

 

 条約に基づき新設する基金をはじめ、現時点で341件に上る海洋保全等のための総額180億㌦におよぶ新規コミットメントが提案されている。米国からも50億㌦規模の提案が示されているという。EUは条約の締結促進のために4000万ユーロの拠出を、さらに今年中に海洋保全のために8億ユーロの拠出を発表した。日本からのコミットはまだ発表されていない。草案に対しては約40カ国が関与し、ロシアも関心を表明した国の一つに加わった。

 

https://news.un.org/en/story/2023/03/1134157

UN agrees ‘once-in-a-generation’ treaty to protect biodiversity in oceans | Euronews

https://www.un.org/bbnj/sites/www.un.org.bbnj/files/draft_agreement_advanced_unedited_for_posting_v1.pdf