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「GFANZのリーダー」マーク・カーニー氏、カナダの総選挙に出馬確定へ。次期首相候補に。国際レベルの気候政策の方向転換を目指すトランプ次期米大統領と、正面から対決へ(RIEF)

2025-01-18 02:08:17

Carney001キャプチャ

 

  カナダと英国の元中央銀行総裁で、金融機関の気候変動対策を推進する「グラスゴー金融同盟(GFANZ)」のリーダー役を務めてきたマーク・カーニー(Mark Carney)氏が、カナダの首相候補として同国の総選挙に打って出ることがほぼ決まった。17日付で、同氏はこれまで基盤としてきたGFANZの共同会長の座と、大手資産運用会社の責任者の座を降りたことがわかった。同氏の政界転出は、現首相のジャスティン・トルドー氏が年初に、自由党党首とカナダ首相の座から降りる意向を表明したことを受け、浮上していた。

 

 カナダの総選挙は、今年の秋までに予定されている。カーニー氏の出馬表明は、まだ正式には示されていない。だが、GFANZの「Our Leadership」の紹介欄では、従来はブルームバーグ社長のマイケル・ブルームバーグ(Michael Blomberg)との2人が「共同会長」として紹介されていたのが、カーニー氏だけが消え、ブルームバーグ氏が単独の「会長」として紹介されている。副会長のメアリー・シャピロ(Mary Schapiro)氏(元米証券取引委員会委員長)は変わりない。

 

 また、 カナダ・トロントに拠点を置く1兆㌦のオルタナティブ運用を持つ「ブルックフィールド・アセットマネジメント」の移行投資の責任者の座も辞した。

 

 カーニー氏は、トルドー氏が年初の6日に、自らが率いる自由党内での対立や世論調査の結果等を受けて、自由党党首とカナダ首相の座から降りる意向を表明したことを受け、カナダ政界では、同氏が後任の同党党首および次期首相候補として政界入りする観測が急浮上していた。https://rief-jp.org/ct12/152749

 

 同氏は59歳で、日本の石破首相(67歳)より8歳若い。同氏は、自らの名前がメディアで浮上した際、「今後数日をかけて家族とじっくりと検討するつもりだ」と述べた。また、「前向きな変化と勝利を収める経済計画を推進してほしい」という自由党の議員や国民からの支持に「勇気づけられた」とも語るなど、意欲を示していた。

 

 カナダで昨年末に実施された各政党支持率の各種世論調査の平均値では、野党・保守党(党首:ピエール・ポワリエーブル氏)が42.7%で、自由党(党首:トルドー首相)の21.8%を大きく上回った。新民主党(NDP、19.1%)、ブロック・ケベコワ(8.2%)、緑の党(4.8%)だった。

 

 カーニー氏自身は、トルドー首相が属した自由党の古くからのメンバー。トルドー氏の辞任表明を受けて、自由党内で候補者調整が図られたとみられる。カーニー氏はカナダ出身で、カナダ中央銀行総裁のほか、英国人以外で初の英イングランド銀行総裁を務めた経験を持つ。経済・金融政策に造詣が深いだけでなく、気候政策にも明るく、リーダーシップを発揮してきた。金融安定理事会(FSB)議長時代には、ブルームバーグ氏と連携して、TCFD勧告を打ち出し、今日の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の気候・サステナビリティ情報開示基準の制定につなげた経緯もある。

 

 カーニー氏はゴールドマンサックス勤務等を経て、2008年から2013年までカナダ銀行総裁を務めた。世界の金融システムが混乱状態に陥った08年のリーマンショック時には、中央銀行総裁としてカナダの金融システム安定を確保し、「カーニー」の名を広めた、その手腕を買われる形で、イングランド銀行総裁に就任した。英国、アイルランドの国籍も持つ。

 

 米国のトランプ氏が20日に大統領就任式を行う直前に、G7の一角を占めるカナダの首相に立候補することを鮮明にすることで、G7、G20の場等を通じて、同氏がこれまで推進してきた気候政策の国際協調路線を改めて主導する決意を示すことになりそうだ。

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