HOME |国連「緑の気候基金(GCF)」、次期事務局長にポルトガル出身のMafalda Duarte氏。途上国向け公的気候ファイナンスの専門家。アフリカでの実務経験も。先進国と途上国の調整役を担う(RIEF) |

国連「緑の気候基金(GCF)」、次期事務局長にポルトガル出身のMafalda Duarte氏。途上国向け公的気候ファイナンスの専門家。アフリカでの実務経験も。先進国と途上国の調整役を担う(RIEF)

2023-03-15 23:35:16

Mafladeキャプチャ

 

  国連の緑の気候基金(GCF : 本部韓国・仁川ソンド)は14日、次期事務局長にポルトガル出身のMafalda Duarte氏が4月に就任すると発表した。同氏は、発展途上国での気候事業に資金供給をする多国間ファンド「Climate Investment Funds (CIF)」のCEOとして8年にわたってリードしてきた実績を持つ。公的気候ファイナンスの専門家といえる。GCFの代表に女性が就任するのは初代のHela Cheikhrouhou氏以来。

 

 現在の事務局長のフランス出身のYannick Glemarec氏は4月2日に退任する。今回の事務局長選挙には、3人の応募者があった。Duarte氏のほかに、韓国出身でアジア開発銀行シニアディレクターのWoochong Um氏、アフリカ開発銀行のアダプテーション・グローバルセンターのシニア・ディレクターのAnthony Nyong氏。これら2人の男性候補者を退ける形で、Duarte氏がGCFで2人目の女性代表となった。

 

 同氏は事務局長への選任が決まったことを受け、「任命を光栄に受け止める。緊急に必要とされている気候投資の途上国への配分を加速させる任務を果たしたい。途上国は『気候危機』の最前線に立たされている。すべての人にとってより良い気候の未来を追求するため、途上国の気候改善にかける私の決意に期待してもらいたい」とのコメントを発表、強い意欲を見せている。

 

 GCFは、先進国と途上国を合わせて43カ国が拠出し、総額103億㌦の資金(公約ベース)を元にして、途上国の気候対策事業に資金供給(贈与、融資、保証、出資)を行う。対象事業の申請主体は、GCFから認証を受けた認証機関(AE)が行う仕組みで、AEには日本から三菱UFJ銀行と三井住友銀行が認証されている。

 

 事業へのファイナンスの認証をめぐっては、途上国間でも競合することから、事業の決定を行う理事会での事務局長の采配は重要な意味を持つ。これまでも、途上国と先進国間の調整がうまくいかず、前々任のオーストラリア出身のHoward Bamsey氏は任期途中で辞任するという事態も起きている。https://rief-jp.org/ct8/80684?ctid=

 

 2020年には、GCFの内部で性差別やハラスメント等が横行しているとの不祥事が明るみに出た。英フィナンシャルタイムズ(FT)がGCFの内部資料を報じたもので、同基金内の組織「独立規範ユニット」への不祥事の内部通報が19年は40件に達し、前年の21件から倍増。GCFの本部職員とOBの合計17人がFTの取材に応じ、上司による権限の乱用や人種差別、性差別、ハラスメント、不適切な関係等の問題行為を目撃または経験したと暴露した。https://rief-jp.org/ct12/106046

 

 Duarte氏は、これまでCIFで途上国向け気候事業へのファイナンス事業に長年携わってきた専門家でもあり、途上国関係者の信頼も厚い。前回、2019年の事務局長選出時にも同氏は候補の一人となるなど、自他ともに認めるこの分野のリーダーの一人でもある。

 

 気候対策を巡っては、先進国と途上国の政治的・感情的な対立が絡み合うとともに、先進国側の拠出資金の増額も政治的イシューとなる。これらの諸課題をさばいて、途上国の気候対策を円滑に推進するためのGCFの資金の流れを円滑に進めることができるかが、期待される。Duarte氏の手腕に期待したい。

 

 同氏はCIFの以前には、アフリカ開発銀行や世界銀行等に所属、一貫して気候ファイナンスを担当してきた。アフリカのモザンピークでの教育改革等の実践活動の経験もある。ポルトガル・ブラガのMinho大学、英Bradfold大学を経て、米Columbia大学で博士号。

https://www.greenclimate.fund/news/green-climate-fund-names-mafalda-duarte-new-executive-director