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損害保険ジャパン、新規の石炭火力事業等の保険引き受けを停止。12月から。国内大手損保初。ESG評価を保険引き受けに加味(各紙)

2020-09-16 11:43:46

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 各紙の報道によると、損害保険ジャパンは石炭火力発電の新設事業に関する保険の引き受けを12月から停止する方針を固めた。欧米等の保険会社では石炭火力事業の比率の高い企業の保険を引き受けない動きが広がっているが、日本の大手損保では同社が初めてになる。また石炭以外のESGリスクについても基準を明確化し、保険引き受けの評価に加える。

 

 日本経済新聞が報じた。日本の大手損保で「脱石炭」の姿勢を明確にしたのは初めて。石炭火力事業を含むESGリスク評価は、同社のCSR室が担当する。すでに今月から評価を始めているという。事故や災害発生等の評価は従来通り審査部門が担当し、ESG評価はCSR室が担う連携体制をとる。

 

 ドイツの環境NGO「The Unfriend Coal」によると、温暖化の元凶である石炭関連事業への保険会社の保険引き受け、投融資状況では、石炭事業への保険引き受けをゼロまたは限定する保険会社は2017年の3社から19年は17社に増えている。保険引き受け市場の9.5%、再保険市場の46.6%に達しているという。https://rief-jp.org/ct2/96654

 

 2017年に、欧州の保険3社が、保険引き受けの対象から石炭関連事業の除外を宣言して以来、こうした対応をとる欧米保険会社が増えている。保険会社にとって、温暖化の影響で自然災害が増大、保険支払いが増えるなど、本業に影響が及んでいることも温暖化を加速する元凶である石炭事業への保険制限・停止の根拠となっている。

 

 欧州の保険会社に続いて、19年になってから米国の保険会社にも同様の動きが広がっている。しかし、日本の3損保はこれまで、国内の大手電力会社等の反発を懸念してか、動きがなかった。

 

 今回の損保ジャパンが保険付与を停止をするのは、国内でプラントを新設する際などに電力会社や商社が加入する「建設工事保険」。同保険の対象となる新規の石炭火力事業は原則引き受けないことを社内規定に盛り込み、12月1日から適用する、としている。保険契約を結べないと、工事中にプラントが災害や事故で損害を受けた場合の補償がなく、事実上、事業は継続できなくなる。

 

 ただ、一律に保険の引き受け停止とするのではなく、CO2排出量が相対的に少ない超々臨界圧石炭火力発電(USC)などは制限の対象から外す。またすでに引き受けを決定済みの案件や、既存の石炭火力発電所の保険はも対象とはしないとしている。

 

 欧米の保険会社では、新規、既存と分けずに、石炭関連事業が収入の一定の割合を占める企業向けの保険引き受けを停止するという方式をとるところが多い。たとえば、世界最大の保険会社であるドイツのアリアンツ(Allianz)は、今年5月、石炭関連事業からの収入が25%以上の企業の保険引き受けを2022年末ですべて停止、その後15%に引下げ2025年末の達成を目指す方針を打ち出した。それまでは収入比率の目標は2040年に30%以上としていた。http://rief-jp.org/ct6/102113

 

 現在、CO2を大量に排出している既存石炭火力発電の影響を抑えることも目指しているためだ。こうした動きを踏まえると、今回の損保ジャパンの対応は、「第一歩」に過ぎないとの見方もできる。

 

 日本の金融機関では、3メガバンクが石炭火力発電所向けの新規の融資を原則行わない方針を打ち出している。また生保でも、日本生命などが新規の投融資は原則行わない方針を示している。今回、損保ジャパンが欧米に追随したことを受け、東京海上ホールディングスやMS&ADホールディングスの対応が注目される。

 

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO63805810U0A910C2EE9000?type=my#AAAUAgAAMA