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GPIFの前最高投資責任者、水野弘道氏、「ジャンク債の帝王」マイケル・ミルケン氏のシンクタンク入り。「ESG投資の『次のレベル』」を目指す議論に参加。仏ダノンの特別委員にも(RIEF)

2020-07-07 00:24:11

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 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の前最高投資責任者(CIO)を務めた水野弘道氏は、1980年代に米ウォールストリートでジャンク債市場の「帝王」と呼ばれたマイケル・ミルケン氏が創設したシンクタンクの特別アドバイザーに就任する。また、仏食品大手のダノンにもポストを得た。水野氏はすでに米電気自動車(EV)大手テスラの社外取締役に就任しており、GPIFでESG投資を推進してきた経歴を「買う」動きはまだ出てきそうだ。

 

 水野氏は、今年3月末でGPIFを任期満了で退任した。同時に高橋則広理事長、三石博之理事も退任した。GPIFは今年1~3月期の運用は4半期ベースで過去最悪の17兆7072億円の損失を出したほか、年度でも8兆2831億円の赤字を計上した。CIOの水野氏は本来はこうした運用成績の責任を問われる立場にあるが、すでに退任しているため、釈明は後任に委ねた形だ。

 

 逆に、「ESG推進者」としての現役時代の評判で、次々「ポスト」が転がり込んでくる幸運に恵まれている。水野氏はGPIF退任直後の4月23日付で、米テスラの社外取締役に就任している。そのほか、非営利の団体、経産省の名誉職等の肩書も得ている。http://rief-jp.org/ct4/101763

 

 影響度の強い公的機関の重要ポストを退任後、その名声を活用しようと、企業等がポストを用意するのは、洋の東西を問わない。ただ、今回の水野氏の新ポストのうち、ミルケン研究機関(Milken Institute)の特別アドバイザーポストは、市場関係者の目をちょっと引く。

 

マイケル・ミルケン氏
マイケル・ミルケン氏

 

 ミルケン研究機関は、1980年代にドレクセル・バーナム・ランバートで、ジャンクボンドを仕組んだミューチュアルファンドで名をはせたマイケル・ミルケン氏が立ち上げたシンクタンクだからだ。ミルケン氏は、ジャンクボンドで時代の寵児として活躍後、インサイダー取引や詐欺罪等で有罪判決を受け、1年10カ月の服役を経験している。

 

 ミルケン氏は出所後、ウォールストリートに復帰する一方で、社会的活動として研究機関を設立、人材育成(ヒューマンキャピタル)等に力を入れる活動をしている。同研究機関のサイトによると、水野氏は特別アドバイザーとして、研究機関が開催する各種イベント等に出席し、産業界のトップやビジネスリーダーたちと、サステナブルで社会的責任ある長期投資を推進するための議論を主導する役割を担うという。

 

 水野氏に期待される議論の中身は、ESG投資を「次のレベル」に前進させるための主要戦略という。元ジャンクボンドの帝王が目指す社会改革と、ESG投資で評価を得て、GPIFのグリーンボンド投資路線の土台を整備した水野氏が、どうコラボし、「ESGの次のレベル」を描くのか、興味深い点だ。

 

 まさか、ミルケン氏得意のジャンク債の経験を生かし、グリーンボンドもどきの「グリーンウオッシュボンド」を再生するESGジャンクボンド市場を育てるわけではないだろうが。石炭火力等の化石燃料中心のブラウン事業をグリーン化する移行ファイナンスの世界に、人材供給や仕組みづくり等で貢献する議論を展開してもらえるかもしれない。

 

 水野氏は、 研究機関が開催するイベント等で「多様な識者たちと、投資や金融市場の発展等についての議論を展開することを楽しみにしている」とコメントしている。

 

 もう一つのダノンでは、同社が発足させた独立ミッション委員会の委員の一人として就任した。同委員会は、ダノンがSDGs・ESG経営を計画し実践するため、外部識者を集めたもので、水野氏を含め、元WTO事務局長のパスカル・ラミー氏、パタゴニアのCEOローズ・マーカリオ氏ら10人が名を連ねている。(RIEF)

 

https://milkeninstitute.org/articles/milken-institute-taps-hiromichi-mizuno-special-advisor

https://www.danone.com/content/dam/danone-corp/danone-com/medias/medias-en/2020/corporatepressreleases/danone-general-assembly-20200626-pr.pdf