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経団連、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準化への意見表明を目的に、官民連携の「サステナビリティ基準委員会」設立を提言。先行するISSBの作業に間に合う(?)(RIEF)

2021-11-22 17:44:29

keidanrenキャプチャ

 

 経団連は、国際会計基準(IFRS)財団が設立した国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に伴い、同機関が来年6月をめどに開発を進めるサステナビリティ関連情報開示のフレームワークに、わが国産業界の意見を反映させるため、国内の財務会計基準作成の主体である企業回帰基準委員会(ASBJ)の母体である公益財団の公益財務会計基準機構(FASF)の傘下に、「サステナビリティ基準委員会(仮称)」を立ち上げることを求める提言を公表した。

 

 経団連は、「健全な市場機能の発揮や投資家との建設的な対話の実現には、企業によるサステナビリティ情報開示を充実させることが不可欠の要素」と位置付けた。そのうえで、すでに欧米各国を中心にサステナビリティ情報開示の充実に向けた取組みが急速に進んでいることを認め、「日本企業及び日本の金融・資本市場の競争力維持・強化に向けて、国際的な意見発信や国内基準の開発に係る日本国内の体制を、早急に整備する必要がある」として、国内版の「サステナビリティ基準委」設置の必要性を強調した。

 

 11月のCOP26で正式に設立が宣言されたISSBは、IFRSが証券監督者国際機構(IOSCO)と連携する形で、立ち上げられた。すでにEUは金融機関向けのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)に加え、独自のサステナビリティ企業開示指令(CSRD)案を打ち出し、ISSBが制定する国際基準を域内に取り込む法整備を進めている。https://rief-jp.org/ct4/119673?ctid=

 

 今回の経団連の提言はこうしたEUの動き等を踏まえ、わが国でも、ISSBに準拠する国内開示制度の整備を目指すものといえる。さらに「各国ごとに異なる産業構造やエネルギー政策等を適切に踏まえた基準開発を促すためには、ISSBに対して、わが国からも、基準開発への積極的な貢献と強力な意見発信を行う必要がある」として、ISSBに対して日本産業への配慮を求める考えを強調している。

 

 ただ、すでに域内での独自のサステナビリティ情報開示の開発・展開を進めているEUとは異なり、日本の場合、どのような開示を日本の産業界、企業が求めるのかという「対案」は、これから「基準委」で作成することになる。ISSB設立の動きはすでに昨年来、明確だった。だが、金融庁はサステナビリティ情報開示をコーポレートガバナンスコードの改訂という「一歩手前」の対応にとどめて、「様子見」をする形をとった。

 

 ISSB設立が決定的になった段階で、遅まきながらIFRSに準拠する有価証券報告書でのサステナビリティ情報の法的開示の取扱いの検討に入ったが、すでに「一周遅れ」の状態にある。今回の経団連提唱の委員会が「拙速」で対応案をまとめるにしても、先行するISSBの作業に、これまで日本の官民は、ほとんど参画してこなかっただけに、提案が受け入れられるかどうかは微妙だ。

 

 すでにIFRSは、民間の自主的情報開示団体のCDSB、SASB、GRI、IIRC等と連携して情報開示の「プロトタイプ案」を開発している。またSASBとIIRCが統合したValue Reporting Foundation(VRF)とCDSBをIFRSに統合することで、サステナビリティ分野の情報開示を開発する人材と体制も整えている。https://rief-jp.org/ct4/119688?ctid=

 

 ISSBの拠点も、ドイツ・フランクフルトを軸に、カナダ・モントリオール、英・ロンドン、米・サンフランシスコでの展開が決まっている。本来ならば、アジア・太平洋地域では、東京が拠点となるはずだが、日本政府の動きの鈍さも影響して、中国・北京と東京が「天秤」にかけられている。日中間でのIFRSへの拠出金の積み上げ競争次第という状況のようだ。https://rief-jp.org/ct4/119675?ctid=

 

 経団連は「わが国の市場関係者の意見を聴取して、オールジャパンとしての意見集約、発信を担う体制整備が急務である」とする。官民の「スピード感」の欠如を、取り戻せるかどうか。

https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/106.html