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財務省。今年度初のGX国債発行。「グリーニアム」どころか、逆に通常の新発債利回りを上回る「ネガティブ・グリーニアム」。資金使途に原発事業等を加えたことへの懸念か(RIEF)

2024-05-28 18:54:06

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 財務省は28日、今年度初となるGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債(GX国債)の10年債入札を実施した。発行額は3500億円。落札利回りは1.04%で、GX国債と同じ日に償還される新発10年国債の利回り(1.024%)を上回る結果だった。ESG債ではESG投資家の購入が増え、通常の債券より利回りが下回る「グリーニアム(グリーン性のプレミアム)」が期待されるが、GX国債は逆に、「ネガティブ・グリーニアム」がついた格好だ。

 

 財務省が23年度発行として2月に初めて発行したGX国債では、通常の国債に比べて、0.005%前後、利回りが下回り、グリーニアムが生じたと評価された。2月の発行は2回に分けて、10年債と5年債をそれぞれ約8000億円を発行した。今年度の発行も期間は同じく10年債、5年債だが、1回当たりの発行規模をそれぞれ3500億円程度ずつと半減させ、年4発行の予定だ。https://rief-jp.org/ct4/142731?ctid=71

 

 1回当たりの発行額を半減させて、発行回数を増やしたのは、生保等の機関投資家が毎回、応募しやすいようにするためとみられていた。ただ、今回の発行では、発行規模が小さくなったことで、流通市場で手軽に売却しにくいとの見方から買いが鈍った、とみられている。また、金利上昇観測が出ている中での発行だったことも投資家の意欲が後退したともみられている。

 

 発行直前の市場予想の利回りは1.035%だった。GX国債の入札は市場育成を目的として、すべての落札者が最高落札利回り(最低落札価格)で購入できる「イールド・ダッチ方式」を採用している。

 

 グリーンボンド等のESG債で、かつ国が発行するESG国債の場合、市場が定着している欧州等では一定のグリーニアムが毎回のように発生する。特に機関投資家が、ESG債を長期保有の対象債券として優先的に投資するためだ。しかし、日本のGX債の2月発行の場合、落札された債券の約3割が直後の日銀の国債オペに売りに出されるなど、長期保有対象とみなされていない状況にある。https://rief-jp.org/ct4/143360?ctid=69         https://rief-jp.org/ct4/143945?ctid=71

 

 GX国債の資金使途先としては、経済産業省が主導するGX戦略では、石炭火力発電等へのアンモニア混焼事業や、CCS事業、原発の操業延長などが柱になっている。このうちアンモニア混焼に対しては海外投資家の懸念が強いことから、財務省は前回の発行でも、資金使途先に同事業を加えなかった。今回もアンモニア混焼事業は使途先に入っていない。代わりに、次世代原発の一つとされる高速炉・高温ガス炉の両実証炉事業が入っている。https://rief-jp.org/ct4/145612?ctid=71

 

 「原発=グリーン、あるいはトランジション」と、政府はアピールしたいところだろうが、国内投資家の間では必ずしもそうした認識は共有されていないということが、今回の「ネガティブ・グリーニアム」の発生で示された格好でもある。

https://www.mof.go.jp/jgbs/topics/JapanClimateTransitionBonds/index.html