韓国憲法裁判所。韓国政府の気候政策は国民の基本的権利を守っていない、として一部違憲判断。アジアで気候政策の不備を認める司法判断は初。韓国政府は来年2月末までに法改正へ(各紙)
2024-08-30 11:38:43
(写真は、韓国の憲法裁判所の法廷の模様=KBSニュースから)
各紙の報道によると、韓国の憲法裁判所は、同国政府が設定している2030年に向けた「温室効果ガス(GHG)の削減に関する法律」について、2031年以降の対策を定めておらず、国民の基本的権利が守られていないとして、一部の条文が憲法に違反するという判断を示した。国の気候対策の不備を指摘する司法判断は、オランダ、アイルランド等で示されているが、アジアで、「国民の権利の侵害」との司法判断を示したのは初めて。
日本では今月初めに、若者たちが原告になり、国内最大のCO2排出企業のJERA等を相手取って、「気候変動による悪影響は若者世代の人権を侵害している」とする気候訴訟が提起されている。だが、政府の気候政策の指摘した訴訟の提起はまだない。日本政府が掲げるグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策は、石炭火力発電等をアンモニア混焼等で「延命」させる産業優先の政策を柱としており、市民の人権配慮を後回しにしていることから、韓国の法廷ならば「違憲」の判断が下りそうだ。https://rief-jp.org/ct12/147711
内外の報道によると、韓国では2021年に、当時のムン・ジェイン(文在寅)政権が2030年に向けたGHG削減計画として、2018年比で40%の削減を目指すことを決めた。同政策の根拠法「炭素中立基本法」は2022年に施行されたが、韓国では同法制定を踏まえる形で、2020年から2022年にかけ、青少年や市民団体などが、「政府の削減目標は憲法で保障された健康に生きる権利や環境権などを保障しておらず、違憲だ」として4件の訴訟を起こしていた。
韓国の炭素中立基本法では、大統領令に定める削減率を削減目標とするとし、2030年までのGHG削減目標を2018年比で35%以上、削減すると明記している。同法を受けて、当時の政府は、「2030年までには2018年と比べて40%削減」とする削減目標を掲げ、国連気候変動枠組み条約(FCCC)での国が決める削減対策(NDC)としてきた。しかし、同法では、2030年以降についての削減目標は盛り込んでいない。
29日の憲法裁判所の判断は、裁判官9人全員一致の意見として、現行の炭素中立基本法の第8条第1項は、2031年以降のGHG削減対策が法的に定めていない点を重視。「2031年から2049年までの詳細な削減目標を設定していないのは、国民の基本権を保護するための最低限の措置をとっていない」と指摘し、憲法違反とする判断を示した。
また現行法では、2030年の削減目標を18年比で40%削減とするとしており、原告はこの点についても、不十分で違憲だと主張した。ただ、憲法裁はこの点については「違憲と判断するのは難しい」として退けた。
今回の憲法裁判所の判断について、韓国環境省は「決定を尊重し、誠実に措置をとる」とするコメントを出した。同国政府は今後、最高裁判断に従って、2026年2月28日までに関連法を改正することになる、と伝えられている。
政府の気候変動政策の不十分さについては、欧州のオランダ、アイルランド、ドイツなどで「政府敗訴」の判決が相次いでいるほか、米国でも訴訟が提起されている。アジアでは、台湾の若者らが24年1月に政府を相手取り、気候政策の不十分さの是正を求める訴訟を起こしている。
https://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=88451
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240829/k10014564481000.html