HOME5. 政策関連 |JERAの電力市場の価格操作問題。監視役の電力・ガス取引監視等委員会の3年前の報告は「相場操縦の行為は確認されなかった」としつつ、市場価格の変動で「異なる動き」を示唆(RIEF) |

JERAの電力市場の価格操作問題。監視役の電力・ガス取引監視等委員会の3年前の報告は「相場操縦の行為は確認されなかった」としつつ、市場価格の変動で「異なる動き」を示唆(RIEF)

2024-11-20 01:18:43

スクリーンショット 2024-11-20 010112

 

  2020 年末から2021年1月にかけての卸売電力価格の高騰が、日本最大の発電事業者「JERA」による余剰電力の「一律供出」が原因だったとして、経産省の電力・ガス取引監視等委員会から「相場操縦取引に相当する」として業務改善勧告を受けた問題で、同委員会の「監視機能」の甘さも浮上している。同委は価格高騰が発生後に専門委員会を設けて問題分析を行い、報告書も公表したが、「相場を変動させることを目的とした行為は確認されなかった」と結論づけていた。今回、一転して業務改善を勧告したのは内部通報に基づくとみられるが、当時の報告書を読むと、単なる市場需給による高騰ではない点に、委員会として気づいていたフシもみられる。

 

 同委は、政府からの独立委員会ではなく、経産省内に所属する同省の一部局に相当する委員会。報告等は経産相に意見・建議する。委員長は横山明彦(東京大学大学院工学系教授)で、ほかに、岩船由紀子同大生産技術研究所教授、武田邦宣大阪大法学部長、松村敏弘東大社会科学研究所教授、村松久美子PwC Japan有限責任監査法人ディレクターの4人の委員で構成する。

 

 委員会は、電力卸売価格の高騰が続いた2020~21年の価格上昇の原因の究明と今後の対策について検討するため、2021年1月末から4月末までの3カ月間で7回と集中して会合を開き、同年4月に「2020度冬期スポット市場価格の高騰について」と題する報告書を公表している。

 

 報告書は結論として、「これまでに入手した旧一電(既存電力各社)及びJERAからの提出データや公開ヒアリング結果を前提とした監視・分析によれば、同期間、旧一電及びJERAの取引に関して、相場を変動させることを目的とした売り惜しみ等の問題となる行為があったとの事実は確認されなかった」とした。

 

2020~21にかけての卸売電力のスポット価格の推移(報告書から)
2020年12月~21年1月にかけての卸売電力のスポット価格の推移(報告書から)

 

 そうした判断の理由として、「今回のスポット市場価格の高騰は、①売り切れが継続して発生し買い入札価格で価格が決定される状況において、②買い入札価格が徐々に上昇したことが直接的な原因であったといえる」としている。

 

 「売り切れが続いた理由」については、スポット市場での通常時の主な売り手である旧一電及びJERAの実質的な売入札量が通常より少ない量となったためであり、その理由は ①(価格高騰の)期間の前半では、主にLNG燃料制約等による発電機の出力制約の増加②後半は、主に自社需要(自社小売向け及び他社卸分)の増加③その他、石炭火力のトラブル等――と指摘。「燃料不足懸念及び需要増で系統全体の需給がタイトになったことの影響がスポット市場で売り切れが継続する形で現れた」と、もっぱら市場要因での価格高騰と判断している。

 

 また今回問題が発覚したJERAが「スポット市場への『一律供出不可』として入札量を設定」していたとされる点についても、21年公表の報告書では「各社の実質的な売入札量の合理性を分析したところ、各社の供給力や自社小売需要等から算出される入札可能量と、各社の売入札量には齟齬はない(すなわち、スポット市場入札時点の余剰電力の全量が市場に供出されている)ことが確認された」としている。

 

 ただ、当時の卸売価格の変動をトレースする中で、「他方で、この期間のスポット市場価格の動きを見ると、市場における売りと買いが約定した結果であるものの、調整力のコストや需給ひっ迫状況とは異なる動きをしていた面もあったと考えられる」として以下の点を指摘している。①売り切れ状態は12月下旬から始まり、(緊急時の調整電源である)「電源Ⅰ’」の稼働は1月上旬から本格化していたが、スポット市場価格は尻上がりに上昇していた②「 電源Ⅰ’」の稼働が少なくなった1月19日以降も、スポット市場価格は200円近い水準の日が1月22日まで続いていた。

 

 今から読み直してみると、電源への需給ひっ迫と卸売電力価格の変動が微妙に異なっていた可能性に気づいていたとも読める。調整電源による「調整」にもかかわらず、市場価格の動きがあまり手応えがない風だと言っているのだ。ただし、委員会が示したこうした「異なる動き」の要因の詳細な分析は示されていない。

 

 報告書は「(一部において調整力のコストや需給ひっ迫状況とは異なる動きをしていた面もあったが) 今後も需給がタイトになった場合には、スポット市場で売り切れ状態が発生することがあり得ることを考慮すると、こうした場合にもスポット市場価格が調整力のコストや需給ひっ迫状況を反映する仕組みが重要である」として、制度論に持ち込んでいる。

 

 JERAは、業務改善勧告を受けたことに対して、「本事象の直接の原因は、入札量算定に用いるツールの設定不備によるものであり、本事象が長期間にわたり継続したのは、当社の体制・ルール整備や教育・研修等に不備があったことに起因すると考える。利益を享受する目的で相場操縦を行う意図はなかったことを確認している」と説明し、社内制度の整備の遅れや、余剰電力の判断をする担当社員の技量の問題だったと言わんばかりの弁明をしている。https://rief-jp.org/ct4/150628

 

 このJERAの言い分も報告書を読み直すと、疑問が生じる。報告書は当時の各電力会社へのヒアリングの結果、余剰電力供出減少の理由を一覧(要約)で示している。それによると、JERAは理由として①12月上旬は、東京エリアにおける相対契約に基づく当社販売権利の減少により、売り入札量が減少②12月中旬は、中部エリアにおいて相対需要の増加に伴う余力の減少により、売り入札量が減少③12月下旬~1月下旬は、中部エリアにおいて、燃料制約に伴う余力の減少により、売り入札量が減少、と説明している。

 

売り入札減少の要因に関する各社の説明(一部抜粋=報告書より)
売り入札減少の要因に関する各社の説明。㊨がJERAの主張(一部抜粋=報告書より)

 

 いずれも電力供給契約の減少や、需要増、燃料制約などの「市場要因」を理由としている。ところが、今回のJERAの説明は、「入札量算定に用いるツールの設定不備」としており、市場要因ではなく、それらを元に余剰電力量を計算するツールに問題があったとしている。そうだとすると、3年前の委員会ヒアリングで、需給要因だとした説明は「その場を取り繕った」か、あるいは「ウソ」だったことになる。

 

 当時は「ツールの不備」に気づいていなかったと言うのかもしれない。だが、JERAの現場が、需給要因とツールの不備を何年も気づかず計算していたとは思えない。現に社員からは再三、問題の指摘があったとされるほか、今回の内部告発につながったようだ。JERAの経営層が問題を知りつつ「見つかったら改善すればいい」と安易に考えていた可能性を捨てきれない。監視委の勧告自体、公取委と同委による行政指針に基づくもので、法令による刑事罰を伴うものではない。電力取引市場の機能を回復させるためには、「機能しない監視委」「機能しない指針」も、同時に改正するべきだろう。

 

 卸売電力という市場価格で変動する取引も監視対象としているのに、委員長以下、委員の中に、市場の変動を読み解く専門家が不在という構成もどうか。いっそのこと、市場監視業務に限って、経産省から金融庁の証券取引監視委員会に業務を移管する手もある。日本の電力市場の信頼性を回復させるには、それが一番の改善策かもしれない。

 

 気候ネットワーク等の環境NGO4団体は、この問題で、抗議声明を出した。その中で、「こうした重大な問題が4年以上明らかにされず、今回、内部からの指摘によって明らかになったことは、特に注目されるべきだ。委員会は、JERAに対して業務改善勧告を行っているが、勧告にとどまらず、不正によって生じた収入の返還や罰金を科すべき」「今後、日本の電力市場において、公正な競争環境をつくり、大手電力会社が価格操作を行うような不当な状況が生まれないよう、徹底した調査と情報公開、さらに大手電力会社への規制強化、監視体制の強化を求める」としている。

                           (藤井良広)

https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_system/pdf/2021061401_haifu.pdf

https://foejapan.org/issue/20241115/21281/