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国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)。先進国から途上国への気候資金2035年までに少なくとも年3000億㌦(約46兆4000億円)で合意。民間資金含め年1兆3000億㌦。途上国には不満残る。米国含め実行性がカギ(RIEF)

2024-11-24 11:44:57

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  アゼルバイジャン・バクーで開いていた国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)は24日未明、先進国が途上国に拠出する気候資金の新たな枠組み「新集団的数値目標(NCQG=バクー資金目標)」を、2035年までに少なくとも年間3000億㌦(約46兆4000億円)とすることで合意、閉幕した。気候災害の増大に対応する「損失と被害基金(Fund for Loss & Damage)」を2025年中に稼働させ、資金配分を始めることでも合意した。議長を務めたアゼルバイジャンのムフタル・ババエフ(Mukhtar Babayev))氏は、「『バクー資金目標』はわれわれが達成し得る最善の合意内容。われわれは世界の金融構造を永遠に変え、1.5℃への道筋を実現するための手段を提供する重要な一歩を踏み出した」と成果を強調した。

 

 COP29の閉幕は22日の予定だったが、NCQGの扱いをめぐって先進国と途上国の対立が続き、結果的に24日未明になってようやく合意に達した。先進国側は当初、NCQGの総額を2500憶㌦とする議長草案を示したが、途上国側は年平均5500億~2兆5000億㌦の必要資金を根拠に増額を求めていた。先進国内では増額に対して日本、スイス、ニュージーランド等が強硬に反対したとされるが、交渉の結果、3000億㌦に引き上げるとともに、民間の投融資資金の誘導を進め、総額1兆3000億㌦の資金供給につなげることで、合意に達した。

 

 途上国側にはなお不満が少なくない。このため「年3000億㌦」には「少なくとも」の表現がつけられ、下限値であることを強調したうえで、民間資金の誘導を強調した。

 

2日延長で閉幕したCOP29
2日延長で閉幕したCOP29

 

 ババエフ議長は「地政学的に分断された1年において、アゼルバイジャンが成果を上げられるのか、誰もが合意できるのか、疑いの目で見られていた。しかし、両方とも間違いだった」と指摘し自賛した。

 

  歴史的に温室効果ガス(GHG)の排出責任を負う先進国から途上国への気候資金の供給「NCQG」は、途上国の適応と緩和のための気候対策資金の総合的な供給目標となるもので、2009年にデンマークのコペンハーゲンで開いたCOP21で合意した際は、年1000億㌦としていた。しかし、先進国はグリーン気候ファンド(GCF)の創設には実現したが、「グリーン気候基金(GCF)」への出資配分にとどまっている。https://rief-jp.org/ct8/150442

 

 今回の合意では、先進国側は当初の議長案を年500億㌦引き上げる「決断」をしたが、コペンハーゲン合意が結果的に十分に機能しなかったのは、合意に伴う先進各国内での資金配分の負担で、米国を中心にGCFへの出資を遅らせるなどの負担回避の動きが広がったことが大きい。今回も、トランプ次期米大統領は、パリ協定自体からの離脱を宣言しており、議会承認が前提となるNCQGへの米出資が実現するかは不確かだ。

 

多くの環境NGOには不満が残った(国連サイトから)
多くの環境NGOには不満が残った(国連サイトから)

 

 米国だけではない。日本も2500億㌦からの引き上げに強く反対したと報道されている。日本政府は国内でGX政策を推進、GX国債での資金調達をする方針だが、その対象には途上国向け資金は明確には示されていない。少数与党の石破政権が日本の負担分をどう確保するかは極めて流動的だ。

 

 議長国が発表した「COP29」の成果として示した「行動アジェンダ」は次の通り。

▼バクー気候ファイナンス、投資、貿易イニシアティブ(BICFIT) 対話:国連機関、国際機関、多国間開発銀行、多国間気候基金、民間セクター、市民社会、主要連合、その他の利害関係者をCOP議長および締約国とともに一堂に集め、気候アジェンダの中心に資金、投資、貿易が据え置かれるよう確保。中小企業向けグリーン移行のための新たなバクー気候連合を発表。

▼エネルギーに関する誓約および宣言:エネルギー貯蔵、送電網、ゾーン、回廊、水素に関する誓約および宣言を発表し、150の締約国が承認。

▼COP29グリーンデジタルアクション宣言:75以上の政府および1100以上のデジタル技術コミュニティのメンバーが、デジタルツールを使用して排出量を削減し、気候変動への耐性を強化するとの宣言を承認。

▼気候変動への適応に向けた人間開発に関するバクー・イニシアティブ:国連8機関、3つの多国間開発銀行、3つの気候基金による共同声明として「気候変動への適応に向けた人間開発に関するバクー指針原則」の採択を確認。「気候と健康に関するバクーCOP議長職継続連合」を設立。

▼気候と健康の継続連合:5つのCOP議長国(COP26からCOP30)は、世界保健機関(WHO)事務局長とともに、気候アジェンダに健康を組み込み、健康を今後のCOP会議の中心的な特徴とするよう提唱。

▼有機廃棄物からのメタン削減宣言:世界で有機廃棄物から排出されるメタンガスの10大排出国のうち8カ国を含む50カ国以上が、有機廃棄物からのメタンガス排出量を将来のNDC(国が決める温暖化貢献)内で削減するという部門別目標を掲げた宣言を支持。グローバル・メタン・プレッジの実施に貢献。

▼バクー・ハーモニー気候イニシアティブ:食糧および農業分野における既存の気候変動イニシアティブを統合し、農家への支援を容易にし、資金へのアクセスを促進するためのプラットフォーム設立。

▼COP29 MAP レジリエントで健康な都市のための宣言:都市気候資金に関するパートナーシップと協力を目指し、国連機関および政府間組織、多国間開発銀行、マルチ開発基金、慈善団体、二国間ドナー、実施機関をまとめ、40以上の締約国を含む160以上の支持者を集め、都市部での気候変動対策と計画への多部門的アプローチに取り組むことを目指す。都市気候行動のためのバクー継続連合を発足。COP、UNFCCC、国連ハビタットの都市プロセス間の継続性と一貫性を確保するために、多部門的かつ多層的なアプローチを採用する。

▼COP29 観光における強化された行動に関する宣言:60以上の政府賛同者が、観光部門における排出削減と回復力の強化を通じ持続可能な観光慣行を推進し、最終的に観光を気候変動対策の主要な要素として位置付けることを約束。

▼COP29の「気候変動対策のための水」に関する宣言:50カ国以上が支持。気候変動が流域や水関連の生態系に及ぼす原因や影響に対処するための統合的なアプローチを採る。同宣言は、NDCsやNAPsを含む各国の気候政策における水関連の緩和策と適応策の統合を提唱する。

 

▽行動アジェンダ・イニシアティブに加え、野心的な気候行動の優先分野における進展について。議長職主導のイニシアティブに加え、締約国およびその他のステークホルダーも自らのコミットメントによりリーダーシップを発揮した。

▼透明性および隔年透明性報告書(BTR)の重要性の強調。バクー透明性プラットフォームを立ち上げ、締約国に早期提出を呼びかけた結果、12月31日の期限までに11の締約国とEUが提出した。 議長団も自国のBTRも提出した。

▼締約国は途上国に資源を投入し、各国の気候計画実施のコストを削減するパリ協定第6条の運用開始の目標に向け、引き続き前進した。 信頼性が高く透明性のある炭素市場の第6条4項基準で合意し、各国の気候計画実施での非市場アプローチを通じた国際協力を促進、持続可能な開発を推進する第6条8項の交渉を終結した。

▼各国首脳による気候行動サミットは、80人の国家元首、政府首脳、副大統領が、パリ協定の推進と気候変動対策への取り組みについて公式声明を発表緩和と適応への意欲を高める必要性を訴えた。

▼多国間開発銀行(MDB)は、気候変動対策への貢献として、2030年までに年間1700億㌦、うち1200億㌦を低・中所得国に拠出する見通しを発表。

▼「損失と被害基金」を、拠出国の合意と誓約を確保し、フィリピンとのホスト国合意と世界銀行との受託者合意に署名することで、2025年に資金の分配を開始できる態勢を整える。COP29で最大の貢献をしたのはオーストラリアとスウェーデンだった。基金への誓約総額はすでに7億3000万㌦を超えた。

▼米国、中国、EU、UAE、英国、ブラジル、カナダ、ナイジェリアなど、多くの国々が結集し、有機廃棄物からのメタン排出削減に焦点を当てた政策を発表。

▼会議全体を通して小島嶼開発途上国(SIDS)の参加を確保し、気候変動対策資金の利用可能性など、主要な優先事項や懸念事項を提起する機会を創出。

ビジネス投資および慈善活動気候プラットフォーム(BIPCP)に70カ国以上から1000人を超える民間および慈善活動のリーダーを集め、10兆㌦超の資産を有する投資家グループが結集し、民間資本を気候変動市場に投入。

気候金融プロジェクトおよびイニシアティブへの誓約は、「金融・投資・貿易デー」において総額73億㌦に達し、氷河融解の影響への対策、グリーン・タクソノミー、気候変動対策への投資において、アジア開発銀行(35億㌦)、アゼルバイジャン銀行(12億㌦)、スウェーデン(7億6000万㌦)、カナダ(カナダ政府から15億㌦、慈善団体から2億9000万㌦)が最大の支援を表明。

▼開発金融機関は、新興市場および開発途上国における再生可能水素プロジェクトのための10GWの「灯台イニシアティブ」を支援することを誓約。

▼50以上の海運業界関係者が、2030年までにゼロエミッション燃料およびニアゼロエミッション燃料を加速させることで合意し、少なくとも500万㌧のグリーン水素に変換する。

▼さまざまなクリーンエネルギーイニシアティブのための1億9300万㌦のパッケージの一部として、英国は、石炭や薪を使った調理を廃止し、サハラ以南のアフリカ、南アジア、インド太平洋地域で1000万人を対象にクリーンな調理を支援。

▼世界的な気候変動対策に協力と平和の役割が不可欠であることを示した。COP休戦アピールには132カ国と1200以上の組織から支持が集まり、平和、救済、復興のための気候変動対策に関するバクー声明を採択。気候変動、紛争、人道上のニーズの緊急性の高い関連性に対処するために、「バクー気候・平和行動ハブ」を立ち上げる。

▼ドイツの6510万㌦、アイルランドの1300万㌦の誓約により、適応基金への拠出金は1億3300万㌦に達した。

グリーン気候基金には、米国(3億2500万㌦)、ドイツ(2億2000万㌦)、英国(2億1100万㌦)から追加拠出金が集まる。

▼25カ国およびEUは、新たな石炭火力発電をエネルギーシステムに導入しないことを反映した各国の気候計画を提出する意向を示し、他の国々にも同様の行動を取るよう呼びかけた。

▼メキシコは、2050年までに排出量を実質ゼロにするという公約を発表。G20の全加盟国が排出量実質ゼロの目標を公約した。

地域社会および先住民:地域社会および先住民プラットフォームのバクー作業計画を策定。

英政府は、森林破壊に対処するため、2億9900万㌦以上を誓約。高信頼性森林炭素市場の開発支援、持続可能な森林企業への混合金融、各国による森林保護を支援するUNFCCCへの資金援助を含む。

https://cop29.az/en/media-hub/news/breakthrough-in-baku-delivers-13tn-baku-finance-goal