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日銀、金融機関の気候変動対応投融資を支援する「気候バックファイナンス制度」創設へ。既存の「成長基盤強化資金供給制度」を衣替え。「無利子融資」も(RIEF)

2021-06-21 16:26:10

BOJ001キャプチャ

 

 日本銀行は、金融機関の気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給制度を導入する。日銀は自ら気候ファイナンスに乗り出す理由について「中央銀行が民間における気候変動への対応 を支援することは、長い目でみたマクロ経済の安定に資する」と位置付けた。既存の成長基盤強化を支援する資金供給制度後継制度を年内に実施する、という。同制度では日銀による無利子融資も含めており、金融界は気候ファイナンスにも同様に無利子融資を求めそうだ。

 

 18日に開いた政策委員会・金融政策決定会合で決定した。日銀が公表した「当面の金融政策運営」によると、「気候変動問題は、中長期的に、経済・物価・金融情勢に極めて大きな影響を及ぼし得る」として、日銀が取り組む金融政策とした。

 

 そのうえで、「気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するため、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給の仕組みを導入する」とした。

 

 日銀が実施する気候ファイナンスは、現在、新型コロナウイルス対策での資金供給としても活用している「成長基盤強化支援資金供給制度」を引き継ぐ形で制度化する。同制度は2010年に導入され、デフレ下での企業成長を支援するのが目的。同制度による新規貸付は2022年6月で終了する予定だが、気候ファイナンスは 同制度の終了を待たずに、年内を目途に実施するとしている。

 

 一方、欧米では気候変動に伴う金融機関の投融資リスクを評価する情報開示の義務化の実施や検討が進むが、中央銀行が直接、銀行に気候ファイナンスとして低利資金を供給する制度はとっていない。例えば欧州中央銀行(ECB)等は、金融市場操作に際して実施する適格担保等に気候リスクを反映させたり、量的緩和策の一環となる社債購入プログラム(CSPP)等にも気候リスクを考慮する等の検討、対応に取り組んでいる。https://rief-jp.org/ct8/114876?ctid=71

 

 日銀の気候ファイナンスに似た対応をとっていると思われるのは、国営銀行等に命令を下せる中国の中国人民銀行(PBoCで)等の社会主義圏の中央銀行ぐらいかもしれない。

 

 気候ファイナンスに熱心な欧州等の中央銀行が、中央銀行による直接の低利融資で銀行の気候関連融資を後押しするという策をとらないのは、気候リスク評価のフレームワーク自体がEUにおいても、まだ十分に整備されていない点と、銀行のリスク評価手段である貸出金利を「当局の支援」で緩めると、リスク管理が甘くなり、金融システムへの影響が懸念される点への配慮もあるとみられる。

 

 日銀が本来取り組むべきことは、銀行等が気候リスク管理をしっかりできるように、気候リスクを融資等の金融活動に際して的確に判断できるような情報開示の整備と、気候リスクの分析力の向上に資する「支援策」が中心になるべきだろう。同時に、そうした市場基盤の整備に基づいて、中央銀行としての金融市場操作においても気候リスクを自ら評価したオペ等を実践することだと思われる。

 

 企業が抱える気候リスクについては、現在、TCFD提言による自主的開示への取り組みがある。だが、評価手法や分析手法自体、現在開発途上で、銀行は投融資先を横並び評価ができないのが実態だ。

 

 日銀が気候ファイナンスの取り組みに活用する「成長基盤強化支援資金供給制度」は2010年に設けられている。長期デフレ下での対策手段の一つだ。資金供給先に応じてカテゴリー1~3に分かれ、このうちカテゴリー3の金利はゼロ。今年6月の新規融資状況では38件2兆6498億円、貸付残高は54兆4915億円、貸付先数104件。このうちどれくらいが不良債権化したかは公表されていない。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k210618a.pdf

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210616a.pdf