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山梨県、県内で太陽光発電電力を利用して開発中の「グリーン水素」を、バルブメーカー、キッツの工場内水素ステーションに供給。キッツは「ブルー水素」から転換(RIEF)

2022-04-15 22:52:33

yamanashiP2Gキャプチャ

 

 山梨県は14日、バルブメーカーのキッツの同県内の工場に対して、県の設備で再生可能エネルギー(太陽光発電)から製造した「グリーン水素」を供給する基本合意書を締結した。キッツは長坂工場(山梨県北杜市)内に設置している水素ステーションの水素として活用する。現在、同ステーションでは化石燃料製の水素を使っており、グリーン化が進むことになる。

 

 (写真は、基本合意書を交わした山梨県の長崎幸太郎知事㊧と、キッツの河野誠社長㊨)

 

 山梨県は、国のグリーンイノベーション基金事業としてNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受け、昨年、東レ、日立造船、シーメンス・エナジー等の企業と連携して、コンソーシアムを結成。大規模P2G(パワー・ツー・ガス)システムを山梨県甲府市にある米倉山電力貯蔵技術研究サイトに構築して、実証化を進めている。

 

 同県のP2Gシステムは、年間45万~50万N㎥の水素生産能力がある。これまで県内の日立パワーデバイスの山梨工場(山梨県中央市)やスーパーのオギノ(甲府市)の店舗に供給している。今回は、キッツの長坂工場(山梨県北杜市)で使用する燃料電池車と燃料電池フォークリフト計4台向けに燃料を供給する水素ステーションに提供する。

 

 キッツへの供給量は年間7200N㎥の予定。山梨県のグリーン水素システムの中核技術となるのが、シーメンスが開発する固体高分子膜(PEM)型水電解装置と、東レ開発の「炭化水素系電解質膜」。両社は戦略的パートナーシップを結んでおり、今回の山梨県でのプロジェクト等を軸として実証化を進め、国内最大級10MWクラスの電解装置の開発を目指している。https://rief-jp.org/ct10/117727

 

 水素エネルギーの製造法では、今回の山梨県のように、再エネ発電を水電解するグリーン水素方式のほか、天然ガス等の化石燃料発電から、発生するCO2をCCS技術で回収・貯留する「ブルー水素」方式、化石燃料からCCS無しで水素を製造する「グレー水素」等があり、技術面、価格面等で開発競争が起きている。

 

 最近、川崎重工業等がオーストラリアで褐炭から製造し、CCSでCO2を回収したブルー水素(液体水素)の日本への輸出時に、オーストラリアの港で火災を起こす事故が発生している。水素の場合、燃料の違いや、CO2の回収の有無だけでなく、事故リスクをどう抑えるかも課題となっている。https://rief-jp.org/ct10/124109 https://rief-jp.org/ct10/124063

 

 山梨県の長崎幸太郎知事は「水素エネルギー社会を構築するには製造から利用までの仲間づくりが重要。今回の取り組みを機にグリーン水素のサプライチェーンの構築を加速させる」と語っている。

https://www.kitz.co.jp/cms/wp-content/uploads/2022/04/20220414_greensuiso.pdf