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日本とオーストラリアを結ぶ液化水素運搬船、オーストラリアの港で火災発生。現地当局が「重大事故」として調査中。当局発表まで火災を報告せず。現地で批判も(RIEF)

2022-04-06 13:52:50

Recharge001キャプチャ

 

 今年の初め、日本とオーストラリアを結ぶ水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」号が日本からオーストラリアに到着し、液化水素を積み込んで再び日本向けに出航する際に火災を起こしていたことがわかった。オーストラリアの運輸安全局(ATSB)によると、 火災は1月25日に同船のデッキ上のガス燃焼設備から発生し、すぐに自動的に消火された模様だが、ATSBは「重大事故(serious incident)」と認定し、調査に入っている。同国の環境NGOらは、火災時の周辺には住居もあるなど安全面で問題があったにもかかわらず、運搬会社らがATSBの調査公表まで事故を明らかにしなかったことを批判している。

 

 火災を起こした「すいそ ふろんてぃあ」号は川崎重工業が建造した液化水素運搬船。同船は21年12月末に神戸を出港し、1月20日にオーストラリア・ビクトリア州のヘイスティング港に入港した。同港入港時には「世界初の水素運搬」として日本でも華々しく報道された。同地で褐炭から製造した液化水素を積み込み、2月25日に日本に戻っている。https://rief-jp.org/ct8/110357

 

 同事業は、川崎重工や電源開発、岩谷産業、オーストラリアのAGLエナジーなどの7社で構成する企業体の「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」が世界で初めて取り組んだ液化水素の海上輸送試験として実施された。https://rief-jp.org/ct4/96975

 

 ところが、水素を積み込んで港に停泊中に、デッキから炎が発生したという。火災が発生したユニットは、直ちに閉鎖されたことから、乗組員が消火活動を実施する前に鎮火したとしている。ATSBは「それ以外の異常はなく、乗組員の被害や損傷、船外への汚染等は起きていない」としている。

 

 しかし、ATSBでは火災を「重大事故」と認定、甲板上に設置されているガス圧力コントロール装置が故障した原因を調べていると公表した。調査は今年の第三四半期中には完了する見通しとしている。火災発生した機器の調査のほか、担当者等への事情聴取も行っている模様だ。

 

 ATSBは「調査で安全上の重大な問題が判明したら、直ちに運航事業者と規制当局に通知し、適切な措置を講じるよう要求する。調査結果を踏まえ、事故原因についての最終報告書を公表する」としている。

 

 船が停泊していたヘイスティング港には水素運搬船専用の停泊設備が設置されており、他の船への影響はなかった。ただ、同港周辺には住宅地が近接しており、住民グループ等は「水素が爆発したら大変な惨事になった。火災についてこれまで住民には一切知らされていないのは問題」と批判している。

https://www.atsb.gov.au/publications/investigation_reports/2022/mair/mo-2022-001/

https://www.atsb.gov.au/publications/safety-investigation-reports/?Mode=Marine

https://www.rechargenews.com/energy-transition/serious-incident-fire-aboard-worlds-first-hydrogen-carrier-vessel-investigated-by-australian-authorities/2-1-1195848

https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/202202/0015091769.shtml