HOME |川崎重工、オーストラリアで製造した液化水素を、日本に運ぶ世界初の「液化水素運搬船」を完成、進水。発電用や燃料電池車への利用に期待(RIEF) |

川崎重工、オーストラリアで製造した液化水素を、日本に運ぶ世界初の「液化水素運搬船」を完成、進水。発電用や燃料電池車への利用に期待(RIEF)

2019-12-12 00:14:45

Kawajyu1キャプチャ

 

 川崎重工は11日、世界初の液化水素運搬船を進水させた。マイナス253℃に冷却した液化水素を長距離海上輸送するために開発された。2022年秋に竣工し、オーストラリアで製造した液化水素を日本へ輸送する航路に就航する予定。

 

 (写真は、11日に進水式を行った「すいそ ふろんてぃあ」号)

 

 船は「すいそ ふろんてぃあ」と命名された。同日神戸市の川重工場で開いた進水式には、リチャード・コート駐日オーストラリア大使、トヨタの内山田竹志会長、ホンダの神子柴寿昭会長など企業関係者や一般の参加者も含め約4000人が出席した。

 

Kkiasen1キャプチャ

 

 船は全長116m。総トン数8000㌧、25人乗り、ディーゼル発電で推進し、速力13.0ノットで運航する。船主は、「技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)。2020年度に実施される国際水素エネルギーサプライチェーン構築に向けた技術実証試験に活用される予定だ。

 

 HySTRAは、同社と岩谷産業、シェルジャパン、電源開発(Jパワー)が2016年に設立した技術研究組合。現在は、丸紅、JXTGエネルギーも加わっている。同事業は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて進めている。

 

 船は、体積が気体の800分の1となった液化水素を、安全かつ大量に長距離海上輸送するのが主目的。今後、川重の播磨工場で製造中の1250m3の真空断熱二重殻構造の液化水素貯蔵タンクを搭載する。同社は、この液化水素運搬船のほか、液化水素の受入基地を神戸市に、水素を製造する褐炭ガス化設備をオーストラリアに建設している。


 オーストラリアでの水素製造事業は、岩谷産業、Jパワー、丸紅、AGL Loy Yang Pty Ltdでコンソーシアムを組み、同国政府およびビクトリア州政府から補助を受けて、ガス精製設備、水素液化・積荷基地などを建設している。

 

 水素は、地球温暖化対策のカギとなる次世代のエネルギーの一つとされる。液化水素はこれまでロケットの推進燃料等に使われてきた。だが、大量輸送する手段がなく、用途は限られていた。今回の大型運搬船の開発によって、発電向けや燃料電池車への水素供給網の構築につながるとの期待がある。日本の水素関連市場は、2030年度には4000億円規模になるとみられている。

 

https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20191211_1.html