HOME10.電力・エネルギー |中部電力、電力小売り会社の送配電ID不正使用者44人、不正閲覧件数2万6000件超。10電力全体の新電力顧客情報への不正閲覧数15万件強に。電力業界の構造的不正行為が明確化(RIEF) |

中部電力、電力小売り会社の送配電ID不正使用者44人、不正閲覧件数2万6000件超。10電力全体の新電力顧客情報への不正閲覧数15万件強に。電力業界の構造的不正行為が明確化(RIEF)

2023-02-22 00:51:53

Chubumiraizuキャプチャ

 

 中部電力は21日、電力小売り会社の従業員が送配電子会社を通じて、ライバルの新電力の顧客情報に不正アクセスしていた問題での最新調査として、2018年8月以降の4年半の間に、社員ら44人が2万6593件の情報を不正閲覧していたと発表した。すでに全10電力で同様の不正行為が発覚している。各社の公表だけでも不正行為をした従業員数は合計2229人、不正閲覧件数は15万6000件を上回った。各社の調査はまだ途中段階で、今後さらに増加が見込まれる。電力業界全体の「構造的不正行為」といえる。

 

 中部電力の公表は、小売り部門を担当する中部電力ミライズが行った。それによると、2018年8月〜23年2月にかけて、社員ら44人が2万6593件の情報を不正に閲覧していた。その方法は、これまで各社が公表してきたいくつかの方法をすべて含んでいる。

 

 まず、不正アクセスの「舞台」となった経済産業省の「再エネ業務管理システム」へのアクセス権は、2018年8月以降は、機能分離された送配電事業者(中部電力パワーグリッド)に限定されて付与された。小売事業者のミライズ社は制度的にアクセスできなくなったにもかかわらず、同社の社員らは、それ以前の段階で使用可能だったIDをそのまま維持し、発電者との契約等の確認用等と称して活用、直近まで閲覧していた。

 

 また、ミライズ社員がパワーグリッドの社員から「業務に使用する」としてIDなどを個別に聞き取ったケースもあったと認めている。さらには、別のケースでは、パワーグリッド在籍時に把握していたIDなどを、当該社員がミライズに異動後も継続して使用していた事案も確認されたとしている。子会社間の「ファイアウォール(情報遮断)」が全く機能していなかったことになる。

 

 これらのケースはいずれも、経産省のシステムへのアクセスIDの取り扱いが、極めて杜撰な管理の下に置かれていたことを示すだけでなく、システムの管理責任を負う経産省自体、IDの取り扱いを電力会社に丸投げしていたことを証明する内容だ。電力小売り自由化のため、送配電会社を分離(経産省は「法的分離」と説明)していながら、当該社員が送配電会社と小売会社を人事異動で行き来していることも判明、電力自由化の趣旨が完全に形骸化されていることを浮き彫りにするものだ。

 

 10電力全てで、同様の送配電子会社(沖縄電力は託送部門)のアクセス権限を、新電力会社と競合している同じ電力持株会社傘下の電力小売り会社の社員に、不正提供していたことが発覚したことで、各社は五月雨的に内部調査結果を公表している。これまでに公表された調査結果だけでも、不正アクセスを認めた各社の社員・従業員は2229人、彼らが不正に閲覧した新電力の顧客情報件数は15万6000件を上回る。https://rief-jp.org/ct5/132649?ctid=72

 

 しかも、これらの内部調査は基本的に社内アンケート等による自主申告をベースとしており、電力会社によっても現時点で「閲覧者は1人」(北陸電力)、北海道電力(7人)とするところと、関西電力(1013人)、中国電力(385人)、九州電力(335人)等と「公表データ」に大きな差がある。閲覧件数も関西電力が40806件と最も多く、次いで、中国電力が32306件、東北電力(26885件)と中部電力(26593件)となっている。これに対して東京電力は4029件と一桁少ない。独立機関による厳正な調査が不可欠だ。

 

 21日に記者会見を開いた中部電力グループでは、中部電力、中部電力ミライズ、中部電力パワーグリッドの3社で再発防止策を検討する会議を24日に立ち上げると表明。報道によると、中部電力の林欣吾社長は会見で「公平な競争の土台をないがしろにするものであり、大変重く受け止めている。同様の事案が二度と発生することがないよう、再発防止の徹底に取り組む」と述べたという。

 

 もっとも効果的な再発防止策は、送配電会社を完全に法的に分離する所有権分離の実施だろう。分離した送配電会社の経営体制を安定的にするため、現在の10送配電会社(沖縄の託送部門を含む)を再編し、全国で2~3社の送配電会社でカバーする体制に切り替える案も検討すべきだ。

                           (藤井良広)

https://miraiz.chuden.co.jp/info/press/1210225_1938.html