HOME10.電力・エネルギー |北海道電力も、送配電子会社のID等を不正使用してFITデータベースにアクセス継続。これで大手電力会社すべてが子会社の権限を「悪用」していたことが判明(RIEF) |

北海道電力も、送配電子会社のID等を不正使用してFITデータベースにアクセス継続。これで大手電力会社すべてが子会社の権限を「悪用」していたことが判明(RIEF)

2023-02-17 22:52:48

hokudenキャプチャ

 

 北海道電力は16日、同社社員が、送配電子会社の北海道電力ネットワーク社に付与されたIDおよびパスワードを用いて、経済産業省の「再エネ業務管理システム」に不正にアクセスしていたことを確認した、として経済産業省に報告した。これで大手電力(沖縄電力は託送部門)はすべて、傘下の送配電会社の権限を不正に利用して、ライバルである新電力等の他社の顧客情報にアクセスしていたことがわかった。現行の電力会社が他の新電力会社も利用する送配電子会社を抱えている構造自体の不合理性が一段と明瞭になったといえる。

 

 北電によると、同社の従業員7人が、経産省が運営する再エネ買取制度(FIT)の発電事業者のデータベース「再エネ業務管理システム」へのアクセスは、送配電会社に限定されているにもかかわらず、北電の従業員7人が、傘下の送配電事業者である北海道電力ネットワーク(札幌市)に与えられたIDとパスワードを活用して不正にアクセスしていた。データベースには再エネ発電所出力のほか、個人情報も含まれていた。北電ネットは17日、経産省に報告した。

 

 同社の説明では、FITでの交付金申請手続きにおいて、すでに連系済みの他の再エネ事業者の発電設備に対し、稼働率が高すぎる等の場合にFIT買取費用の調整業務を実施する国の機関(電力広域的運営推進機関)からエラーが出ている旨連絡を受けるケースがある。北電がそうしたエラー連絡を受けた場合、各事業所で保管している国認定の発電設備の情報と、北電が管理する発電設備情報との整合性を確認して国に報告する必要がある。

 

 こうした事態が生じた場合、本来ならば、エラーのたびに、各事業所に確認するべきだが、北電は「業務の効率性を優先し、(送配電子会社の)北電ネットに付与されているIDおよびパスワードを用いて経産省の『再エネ業務管理システム』を閲覧し、設備認定上の発電設備情報を確認していた」と説明した。

 

 北電によると、一部の従業員がこうしたエラー対応のために、事前に北電ネットから、IDとパスワードを提供してもらっていたという。問題は従業員7人が業務の効率化のために個人的にID等を入手したのか、組織的に子会社のIDを親会社が利用したのかだが、その点は説明していない。

 

 これまで経産省の再エネデータベース等への不正アクセスが発覚した他の大手電力会社の説明(言い訳)は様々だ(沖縄電力は沖縄の電力状況を考慮した特例として、送配電部門は分離せず、そのまま部門として残っているが、同社でも託送業務で新電力の顧客情報の閲覧が不正に行われていた)。https://rief-jp.org/ct5/132686  https://rief-jp.org/ct5/132392?ctid=72

 

「FITに関する交付金申請手続きで、対象の発電事業者の地方税法上の非課税事業者か否かの確認のため」(東京電力)

「非FIT非化石証書の受領手続き業務で、自社把握の顧客情報と、非IT非化石電源認定事務局が把握している情報が異なりエラーとなったことでの確認のため」(北陸電力)

「買取り分の交付金申請手続きで、FITに基づき国が認定した発電事業者の発電設備等の情報と、自社が認識する発電設備等の情報に乖離があり、申請が不受理となる場合の確認」(関西電力、中部電力)

「送配電子会社から非常災害時等の供給支障事故対応用に貸与されている託送コールセンターシステム端末の一部を、通常業務に使用し、それを通じて新電力の顧客情報等を閲覧していた」(九州電力)

 

 共通するのは、子会社の送配電会社のIDや端末に対して、電力大手にはアクセスの権限がないのに、親会社と子会社の関係を利用する形でアクセスし、大手電力のライバルとなる新電力各社の顧客情報を閲覧していた点だ。子会社の送配電会社は親会社の社員からID等の提供要請があると断りにくい。そうした関係を利用して、経常的に他社情報へのアクセスを続けていたとみられる。https://rief-jp.org/ct10/131896?ctid=72

 

 それでも電力各社はそろって、アクセスは「エラー対応」「事務的な対応」「確認のため」等で、自らの営業活動に利用はしていない、と主張している。しかし、それを証明する手立てはない。一時的なエラーや事務作業上の問題が理由ならば、本来は恒常化するはずはないと思われるが、実態は恒常的になっていた。

 

 不正なアクセスを継続化していた電力会社の従業員らが、ライバル企業の新電力の顧客情報を前にして、自らの営業活動には使わなかったと言い張っても、信じる人がどれだけいるだろうか。問題は、個々の電力会社の従業員の「盗み見」にとどまらず、電力会社自体による組織的な情報の不正アクセスの可能性があり、さらに個々の電力会社の不正にとどまらず、大手電力全体が同じような行動を、同じ時期にとっていたことを考えると、電力業界全体が不公正競争を展開していた疑いが濃厚だ。

 

 本来は、競争による電力市場の活性化を促すために実施されたはずの自由化であり、大手電力からの送配電業務の子会社化だった。だが、自由化の設計図を描いた経済産業省自体が、明確な法的分離(所有権分離)を回避して、ホールディングスの傘下に送電子会社を置くという中途半端な分離を「法的分離」と強弁した政策判断のお粗末さが、全電力会社共通の「不正アクセス」行動を引き起こした遠因になっているといえる。電力改革の見直しは急務だ。

https://www.hepco.co.jp/info/2022/1252046_1920.html

(更新:2023年2月18日12時51分)