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東京電力グループでも、傘下の送電子会社が他の再エネ事業者の情報を、グループの電力小売り事業者に不正漏洩の事実が発覚。大手電力の発送電分離政策の不十分さを改めて露呈(RIEF)

2023-02-12 14:43:01

Tepco001キャプチャ

 

 経済産業省は10日、東京電力ホールディングス傘下の送配電子会社に同省が付与していた「再エネ業務管理システム」のアカウントを、同社が同じ東電系の電力販売事業者に不正に付与し、ライバルの他の再エネ事業者の情報を閲覧させていた可能性があるとして、両社に報告を求めたと発表した。既存電力大手が傘下の送電子会社が他社の情報を傘下の営業子会社に「漏洩」させてきた事件は、昨年末以来、関西、東北、九州、四国等の各電力会社でも判明している。同省が実施した送電会社の限定的な法的分離政策が競争阻害要因になっていることが改め確認された形だ。

 

 経産省の再エネシステムにアクセスするためのアカウントを、不正に使用していたのは、東電子会社で電力販売を担当する東京電力エナジーパートナー(東電EP)。同システムは、同省が再エネ法に基づき再エネ事業計画認定情報を管理するための業務用システムで、アクセスできるのは、送配電事業者に限定されている。東電の送電子会社の東京電力パワーグリッド(東電G)は、同省から付与されたアカウントを、グループ内の東電EPの一部の社員に付与し、東電PGが持つ管内の認定事業者約135万件の情報の不正閲覧を可能にしていた。

 

 既存電力大手が、傘下の送電子会社が保有する再エネ認定事業者の情報を、同じ傘下の電力販売子会社が不正に閲覧する事件は、昨年末に関西電力で判明、その後、東北、九州、四国等の各電力会社でも相次いで発覚。今回の東電での発覚で、問題が指摘されていないのは北海道電力だけとなっている。今回、もっとも影響力の大きい東電でも同様の不正閲覧が起きていたことがわかったことで、2015年の電気事業法改正で成立し、20年4月から実施された既存電力会社の送配電分離政策の「欠陥」が露呈したといえる。https://rief-jp.org/ct10/131896?ctid=72

 

 経産省によると、2月3日、東電PGから、「同省から付与された再エネシステムのアカウントを、東電EPの一部社員が利用し、認定事業者の情報の一部を閲覧していたおそれがある」との連絡があったという。同省は同月6日に関係者から事実関係を聴取した結果、「個人情報漏えいの恐れがあることが判明した」として、東電PGのほか、他の電力会社系の一般送配電事業者に対して、全てのアカウントの利用を停止する措置を指示した、としている。

 

 当事者の東京電力ホールディングスの説明によると、再エネ電力を他の発電事業者から買い取る業務を展開する電力販売営業事業者(東電EPを含む)は、従来、再エネ電力固定価格買取制度(FIT)に基づいて、買い上げ対象とする電力を発電した再エネ発電事業者が地方税法上の非課税事業者に該当するかどうかを確認するため、経産省の当該サイトにアクセスしていた。しかし、2017年4月のFIT制度の変更により、FITの買取義務者が一般送配電事業者(東電PGを含む)に変更になり、サイトへのアクセスも東電PG所属社員に限定された。

 

 このため、東電EPは本来は、事業者名義の確認等により買取先の再エネ事業者が非課税事業者かどうかを確認する運用に変更する必要があった。だが、2022年7月、東電EP社員は、当該サイトへのアクセスを試みて東電PG社員にコンタクトし、同社から専用のIDおよびパスワードを取得したとしている。その後、東電EPからのアクセスに気付いた他のPG社員が上司に報告、2月2日に事態が判明したと説明している。

 

 東電の説明は、あくまでも東電EPの個別社員の「不正」であり、EPとPGの組織的な情報漏洩ではないとの主張だ。しかし、同様のことが、関西電力、東北電力、九州電力等の他の電力大手でも、同時期に、同様に発覚したことを考えると、組織的、構造的な問題が露呈したとみるのが自然なように思える。

 

 経産省は「さらなる実態把握のため、再エネ法の規定に基づき、東電PG及び東電EPに対して報告を求めるとともに、他の一般送配電事業者に対しても、同様の事案がないか、報告を求めている。当省としては、報告を踏まえた実態把握を進めるとともに、今後、このような事態が生じないよう、再発防止を徹底する」としている。不正を誘発している電力会社の発送電分離政策の不十分さについては、一言も反省の弁はない。

 

 公正取引委員会は昨年末、大手電力会社と新電力や再エネ電力等の取引関係が、公正な競争条件に基づいているかを調べる実態調査に乗り出すと発表した。2016年に電力小売りは全面自由化され、新電力や再エネ事業者が多数、電力小売市場に参入した。だが、大手電力の発送電分離については、経産省が完全な所有権分離をとらず、ホールディング傘下での法的分離に留めた。このため、新電力、再エネ電力等は、ライバルである大手電力グループの送電子会社の送電網を利用することとなり、実質的に不利な扱いを受けていると、これまでも指摘されてきた。https://rief-jp.org/ct5/130960

 

https://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2023/1664804_8668.html

https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2023/1664803_8618.html

https://www.meti.go.jp/press/2022/02/20230210003/20230210003.html