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固定価格買い取り制度(FIT)でのベトナム産バイオマス燃料の偽装輸入問題。「情報開示」請求を林野庁と総務省の情報公開審査会がともに拒否。認証団体はすでに調査結果を公表済み(RIFE)

2024-09-17 18:26:29

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写真は、「クリーンエネルギー」として偽装木質ペレットをアピールしていたAVP社。同社の取引先には、日本の主要商社が軒並み名を連ねていた)

 

 経済産業省が運営する再生可能エネルギー発電の固定化価格買取制度(FIT)のバイオマス発電事業で、認証偽装のベトナム産木質ペレット燃料が大量に日本に輸入されていた問題で、林野庁が関連情報の開示請求を非公開とし、政府の情報公開・個人情報保護審査会もその判断を追認していたことが分かった。同問題では、国際的に森林認証を付与するFSC(森林管理協議会)が認証偽装を認め、当該事業者に対し認証停止措置等を実施済みで、その経緯も公表している。同問題では、消費者が負担する再エネ賦課金が不当に高く支払わされた可能性が濃厚だが、日本政府が何を「知られたくないのか」という疑問が浮上している。

 

 「認証偽装」が発覚したのは、ベトナムの大手バイオマス燃料会社のAn Viet Phat Energy(AVP)社。同社は日本のバイオマス燃料発電所向けに同国産の木質ペレットの輸出最大手として、大手商社等を経由して供給してきた。だが、2020年前後から、同社の製品に不純物が混合している疑いが指摘され、同社製品の原料となる森林の健全性・信頼性を保証するFSC認証の妥当性が問われていた。https://rief-jp.org/ct4/102720?ctid=

 

 このためFSCは2021年3月にAVPを含め、ベトナム、タイなどで同団体の認証を取得している木質ペレット製造事業者の取引情報の調査を実施。その結果、2022年10月、AVPが2020年に販売した大量の木質ペレットで、故意に虚偽表示を行っていたとして、同社の認証を停止、3年半の取引停止措置をとった。FSCは、同社が非FSC原材料に「FSC100%表示」を伴う購買伝票を偽造して使用していた、と処分理由を説明している。https://rief-jp.org/ct10/129368?ctid=

 

ペレット状になると、元の燃料の材質等はわからなくなる
ペレット状になると、元の燃料の材質等はわからなくなる

 

 AVP社は当時、日本のFIT制度向けの大量供給者で、同社の燃料は伊藤忠をはじめ、複数の日本の大手商社が輸入してきた。AVP等が日本のFIT制度に基づいて商社に販売した木質ペレットの場合、日本のバイオマス発電向けに相対的に高い売電価格で売ることが出来る。だが、実際には低価格の非FSC原材料(建設廃材など)が混じっていたとすれば、政府が発電会社に支払う買い上げ額は「過払い」だったことになる。その額は、年間100億~160億円前後との試算もある。https://rief-jp.org/ct5/129862?ctid=

 

 今回の情報開示請求は、そうした実態を国民に明らかにするよう求める内容だった。関係者は23年9月にまず林野庁に対し、「輸入木質ペレットに関する認証偽装問題について作成された資料」の開示請求をした。これに対して同庁は1カ月後に「不開示」との決定を通知した。その理由は「認証偽装問題として想定される事案は、行政機関として意思決定前の状況である。検討中の情報を公にすると、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせる恐れ、または特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼす恐れがある」とした。

 

 これを受け請求者は、「本件の請求は国民負担のもとでバイオマス発電が適正に運営されていることを確認するためのもので(不開示の)原処分の取消しを求める」との審査請求を、行政機関の情報公開法に基づいて総務省に行った。

 

 同請求では、経産省の資源エネルギー庁が2019年2月に公表した 「『発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライ ン』に基づく木質バイオマスを使用するバイオマス発電設備につい て(注意喚起)」の文書に、「由来の証明書の不備など、木質バイオマス証明ガイドラインの不適切な運用による燃料区分の適用が確認された場合は、FIT法に基づく指導、改善命令 の対象となり、また改善されない場合には、認定を取り消す可能性がある」の記載があることを踏まえ、林野庁の法解釈・運用は誤りとした。

 

 審査請求を受けた総務省の情報公開・個人情報保護審査会は、ほぼ半年の審査の後、6月に林野庁の対応を支持する決定を示した。その理由として、「請求人が示した資源エネルギー庁の文書は、同庁が発出したもので、処分庁(林野庁)が発出したものではない」「その内容も木質バイオマス証明の不備などの不適切な状況が確認された場合に、FIT法基づき経済産業大臣による指導や改善命令、FIT認定の取消等の可能性があることを一般論として示したもの。林野庁の意思決定について示したものではない」として、開示の必要性には当たらないとした。

 

 要するに、同じ政府機関が出した文書でも、他省庁の文書は、処分庁の判断には適用されない、との解釈だ。審査会は、そう指摘したうえで、「審査請求は原処分の正当性を覆すものではなく,不開示とした原処分を維持することが適当」との判断を示した。

 

 審査会は現状認識として、「資源エネルギー庁と林野庁において、FSC認証停止措置がされたベトナムの木質ペレット事業者の取り扱う木質ペレットの持続可能性について情報の収集及び内容の精査等を行い、協議が行われている状況にある」とした。「協議途中の段階であることから、本件対象文書に記載されている情報は未確定の情報を含む」とした。

 

 「現在、両庁で協議中なので、関連情報を公開すると混乱が起きる可能性があるので、見送る」というわけだ。なぜか。「当該木質ペレットの持続可能性についての検討中の未成熟な情報を公にすれば、当該木質ペレットの流通を担う事業者やこれを取り扱う発電事業者に対する国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれや、特定の流通を担う事業者、 発電事業者等に対して不当に利益若しくは不利益を及ぼすおそれがある」、「ベトナム産木質ペレットの持続可能性に関して憶測を生み、当該木質ペレットの持続可能性についての協議に当たって、 輸入禁止にすべきとの外部からの圧力や干渉等を懸念し、率直な意見の交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある」等との懸念を列挙した。

 

 しかし、AVPの偽装認証を調査したFSCは、AVPに対する処分を行った後、AVPが2020年に認証取得者からFSC認証原材料を購入したことを示す書類を提出していた一方で、同社のサプライヤーの一部に対して実施した評価では、対象となる認証林で伐採が行われた形跡はなく、AVPに認証材が販売された事実もないことが裏付けられたとの調査結果を公表。こうした調査結果に基づき、「意図的な虚偽の主張」があったとして、同社を取引からブロック(FSCシステムからの追放、と説明)したとしている。https://rief-jp.org/ct10/121993?ctid=

 

 その後、FSCは2023年12月、AVPがFSCの枠組みで規定した必要な是正措置を完了したことを検証済みとする情報が示されたとして、同社と間で覚書(MoU)を結んだうえで取引停止措置を解除した。MoUでは、解除後も、同社は「今後数年にわたって認証機関等による追加の検査や情報開示の要請に応じる」ことなどを確約し、FSCが定める是正措置、予防措置、改善措置を履行することが条件となっている。要するに「仮釈放」の感じだ。

 

 一方で、同社から認証偽装の木質ペレットを大量に買い込み、FIT制度で「過払い」をした日本では、担当の林野庁と資源エネルギー庁が、FSCの処分停止後も「いまだ協議中」という。両庁で担当者がアタマを寄せ合って、ひたすら協議を続けているよりも、AVPに対して入念な調査を実施したFSCの協力を得て、調査結果を把握し、同社からどれくらいの「不正燃料」をFITで買い上げたかを知ることは、さほど難しいことではないはずだ。

 

 実際にはAVP以外のベトナムから輸入した木質ペレットが原因となって、日本各地のバイオマス発電所で火災・爆発事故が頻発している。燃料のペレットにAVP同様の低品質の燃料が混じっている懸念も指摘されている。「偽装」が続いている可能性があるのだ。https://rief-jp.org/ct5/148079?ctid=

 

 早急に事実関係を把握し、それを踏まえて、偽装木質ペレットの輸入の全体像と、FITでの過払いの実態を把握し、解明、処理することが、政府の本来の役割だろう。問題解決を先送りするばかりでは、政府機能を果たせていないことになり、そうした官庁は「政府機能の偽装」ではないのか、との疑いも生じてくる。

                    (藤井良広)

https://www.soumu.go.jp/main_content/000954565.pdf

https://www.soumu.go.jp/main_content/000955411.pdf

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/jyouhou/meibo_bukai.html

https://jp.fsc.org/jp-ja/newsfeed/fsc-blocks-an-viet-phat-energy-for-making-false-claims-on-large-volumes-of-wood-pellets

https://fsc.org/en/newscentre/integrity-and-disputes/fsc-lifts-the-blockage-on-an-viet-phat-energy