ネットゼロ保険同盟（NZIA）。SOMPOホールディングスのほか、新たに3社が離脱。離脱メンバーは全体の約3分の1に相当する9社に。中核的企業が離脱の中心で、壊滅的状況に（RIEF）
2023-05-26 22:20:58
国連主導のネットゼロキャンペーンに賛同する形で組織した金融業態別ネットゼロ同盟のうち、ネットゼロ保険同盟（NZIA）が壊滅的状態になりつつある。同盟の中核的役割を担ってきた独Allianz、仏AXAに続いて、日本のSOMPOホールディングスも離脱が確定した。さらに、スイス再保険やオーストラリアのQBE等も離脱し、離脱メンバー数は現時点で9社になった。NZIA最大時のメンバーの約3分の1が去った。残留企業からは、NZIAの目的の見直しも必要、との声もあがっている。NZIA自体の存在が問われる状況になってきた。
SOMPOホールディングスは、メディアの取材に対して、25日付で離脱したことを認めている。そのうえで、「NZIAからは離脱するが、SOMPOホールディングスとしてのネットゼロへのコミットメントは強固であり、変化はない」とコメントしたという。ただ、離脱の理由については語っていない。https://rief-jp.org/ct6/135812
同社は公式のニュースリリース等ではNZIAからの離脱について公表していない。NZIA加盟時には、プレスリリースで「『SOMPO気候アクション』への取組みを加速させるべく、2050年までに保険引受ポ ートフォリオのGHG排出量のネットゼロを目指すNZIAに加盟し、グループのGHG排出量の実質ゼロに向けた取組みを加速させるとともに、金融機能を活かして社会のトランスフォーメーションに貢献していく」と力強く発表した （2022年6月28日）ことを踏まえると、同社の情報開示の一貫性に疑問が残る形でもある。
NZIAからの離脱は、SOMPOのほか、再保険引き受けで世界2位のスイス再保険、ブラジルの再保険大手SCORが今週に入って離脱を表明した。オーストラリアの保険・再保険を手掛けるQBEも26日に離脱を発表した。再保険業務を手掛ける会社が多いのは、米国市場での再保険引き受けビジネスが大きいことが影響していることを示唆する。
先行して離脱した企業を含めて、NZIAからの離脱組は9社になった。今後も追加的な離脱が出る可能性はある。こうした環境の中で、残留組の英再保険大手のLloyd’sのCEO、John Neal氏はメディアに対して、Lloyd’s自体の離脱は考えていないとしたうえで、「 NZIAのルールが規範性が強いことと、メンバーが実施すべき要件も厳しい点を緩めることも検討すべきではないか」と述べている。
金融業態別ネットゼロ同盟の構築を主導した国連環境計画（UNEP）の戦略の甘さを指摘する向きもいる。離脱の発端となっているのが、米共和党系自治体が金融取引契約を巡って、ESG重視の企業を排除する動きをとっていることが影響したのは間違いないだろう。だが、UNEPが業態の違いを超えて画一的な「ネットゼロ戦略」を示し過ぎた懸念もある。
NZIA自体は各国の独禁法との関係を一つの課題として取り扱ってきた。しかしNZIAの主要メンバーが気候変動対応を重視するEU中心の欧州系ということもあって、同問題への対応を各国の独禁当局との調整に委ね、自治体ベースでの動きを結果として軽視してきた可能性もある。
https://www.sompo-hd.com/-/media/hd/files/news/2022/20220628_1.pdf?la=ja-JP
Research Institute for Environmental Finance