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米・EUの「グローバル・メタン・プレッジ(誓約:GMP)」に、英、イタリア、インドネシア等7カ国が賛同。日本は韓国等とともに「様子見」の状況。農業分野からの排出抑制が課題(RIEF)

2021-09-22 17:34:01

Methan001キャプチャ

 

  バイデン米大統領が、米EUの共同行動として提唱した「グローバルメタンプレッジ(誓約:GMP)」に、英国、イタリア等の7カ国が参加を表明した。産油国でもインドネシア、メキシコ、イラク等が率先して参加の意向をアピールした一方で、日本、韓国、オーストラリア等の天然ガスの生産・消費量国は「静観」の立場をとっている。

 

 バイデン大統領が提唱した「GMP」は、温暖化係数がCO2より高い一方で、大気中の残留期間の短いメタンを2030年までに現状から30%削減することで、パリ協定の「1.5℃目標」の達成を後押しする計画だ。EUとの共同提案の形をとることで、COP26に向けて、米欧の共同歩調をアピールする狙いもある。https://rief-jp.org/ct8/118166?ctid=71

 

 メタンは温暖化係数が100年間ではCO2の28倍、20年間では約84倍と影響が大きいことで知られる。現状の大気中のメタンは地球の温暖化に及ぼす影響の23%分を担うとされる。温暖化係数がCO2より高い一方で、大気中の残存期間は約10年とCO2よりも短い。したがって、早期の対策をとれば温暖化の進行を抑制する効果が期待される。https://rief-jp.org/ct8/118041?ctid=71

 

 メタンの発生源には湿原、湖沼等からの自然起源と、化石燃料(生産と消費)、農業活動や廃棄物部門からの人為起源がある。人為起源の割合は総排出量の約60%と半分以上だ。GMPの対象はこの人為起源の排出量の増加を抑制することにある。

 

 GMPに賛同を表明した国は、英国、イタリア、メキシコ、インドネシア、イラク、ガーナ、アルゼンチンの7カ国。賛同国は、米、EUを含め、世界のメタン排出量上位15カ国中6か国が含まれており、世界のメタン排出量の5分の1を占める。

 

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が先月公表した作業部会報告書(AR6:第6次評価報告書)は、温暖化の進行によって、世界の気温は2021~40年に、産業革命前から1.5℃の上昇になるとの予測を示した。2013~4年に公表したAR5の想定より約10年早い。報告書は温暖化対策として、CO2の排出削減の強化とともに、メタン削減で達成可能な排出削減目標を設定することを求めている。

 

 環境NGOのEDF Europeの代表、Jill Duggan氏は「世界のリーダーたちは、メタンの削減が気候変動に対して迅速な勝利をもたらす可能性にやっと気づいたようだ。気候変動に対する人々の要求がかつてなく高まる中で、GMPはメタン削減の達成可能な明確な目標を設定することになる」と評価している。

 

 ただ、石油・ガス事業にとって、掘削時やパイプライン輸送等からのメタン漏洩対策を展開するには、厳格な法的インセンティブがないと十分な取り組みが期待できないとの指摘もある。日本の場合、化石燃料掘削からの排出よりも、天然ガス等の使用時の排出負担をどう受け持つかという点と、農業部門では稲作等での水田から発生するメタン削減が課題となる。

 

 実際のメタン排出の状況と抑制の効果を把握するには、グローバルベースでのモニタリングシステムの構築が求められる。石油・ガス事業の場合、メタン漏洩削減の技術的な対応は可能だが、問題は正確なデータの把握とモニタリングにあるとされる。農業の場合、化石燃料産業全体からの漏洩よりも多いとされ、抑制のための技術的課題も大きい。

 

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/09/18/joint-us-eu-press-release-on-the-global-methane-pledge/