HOME |滋賀銀行、日本郵船にドル建てサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)提供。外貨建てSLLは国内初。総額5000万㌦(約52億7500万円)。改善目標のSPTはCDPの高評価維持(RIEF) |

滋賀銀行、日本郵船にドル建てサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)提供。外貨建てSLLは国内初。総額5000万㌦(約52億7500万円)。改善目標のSPTはCDPの高評価維持(RIEF)

2021-02-08 12:48:59

Shigaginキャプチャ

 滋賀銀行は、日本郵船に対して、ドル建てのサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を5000万㌦(約52億7500万円)を実施した。外貨建てのSLLは国内で初めてという。サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)は英NPOのCDP評価で高水準を維持することとしている。日本郵船は昨年11月末に円建てで500億円のSLLの融資枠を設定しており、今回の外貨建ても同様のスキームを踏襲している。

 地方銀行が海運業界で国内首位の日本郵船のような大手企業に単独でローンを提供するのは珍しい。日本郵船が昨年11月末に、契約した円建てSLL500億円の融資枠では、三菱UFJ銀行がアレンジャーで、農林中央金庫、みずほ銀行、三井住友銀行がシンジケートに参加した。期間5年。

 滋賀銀の外貨建てSLLは、期間が4年と、大手銀行による円建てSLLより1年短いものの、軸になるSPTは円建ての際と同様に、CDPの評価をKPI(重要業績指標)とする。CDPは英国のNPOで、企業の温室効果ガス排出量や気候変動への取り組み等をアンケートで調査し、横比較が可能なように格付している。対象は気候変動だけでなく、水セキュリティ、森林の3種類の環境分野への企業活動の影響もスコア化している。

 日本郵船が設定したSPTは、このCDPの評価で最高レベルの格付取得を維持するというもの。同社は2020年の気候変動分野の評価でAリスト入りした。Aリスト入りは、対象企業約5800社のうち、273社で、うち日本企業は53社、海運会社は同社を含め2社という。高水準である。

 SPTではこの水準維持ができれば、貸付金利の変動はない。しかし、CDP格付が下がると金利変更(上昇)するという。ただし、何%の上昇かは開示されていない。国際ローン協会(LMA)が公表するSLL原則では、選定したKPIの「改善」をSPTとして設定する構成になっている。そのため郵船が設定した「高水準維持」というSPTは、原則に適合するのかという疑問もある。

 これに対して、郵船等は、CDP自体がネットゼロに向けて、評価の項目を随時、引き上げているので、A評価を維持するための改善努力は大きい等として、事実上の改善効果が毎年求められるとのスタンスだ。いずれにしても、CDPもSLLも民間の自主的な活動なので、SPTの設定に厳格性を求める必要もあまりないのかもしれない。

 セカンドオピニオンは滋賀銀の外貨建てSLLが日本格付投資情報センター(R&I)、三菱UFJ銀等の円建てシンジケート方式のコミットメントラインが日本格付研究所(JCR)。

https://www.shigagin.com/news/topix/2338

https://www.nyk.com/news/2021/20210205_01.html

https://www.nyk.com/news/2021/20210115_01.html