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三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)。自動車、鉄鋼向けポートフォリオGHG(financed emissions)の中間目標。既存の石油・ガス等と合わせ、対象GHGの7割カバー(RIEF)

2024-03-31 00:22:46

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 三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は29日、自動車と鉄鋼両産業向け投融資ポートフォリオの2030年の中間削減目標を公表した。これまで電力と石炭、石油・ガスの3セクターの分野別削減目標を設定しており、新たに2セクターを追加する形だ。温室効果ガス(GHG)の削減は、現状比で自動車は21.5%~41.5%減、鉄鋼は10%~40%減と設定した。SMBCは今回の自動車、鉄鋼の目標設定で国連のネットゼロ金融イニシアティブの「Net Zero Banking Alliance(NZBA)」が示す高炭素排出9セクターのGHG排出量の約7割に中期目標を設定したことになる。

 

 NZBAが設定を求める高炭素排出9セクターは、電力、石油・ガス、石炭、自動車、鉄鋼、農業・食料・林産物、アルミ、セメント、不動産(+その他)。SMBCはこれまで、これらのうちGHG排出量の多い、電力と石油・ガス、石炭の3セクターの中間目標を設定している。今回の自動車と鉄鋼を加え、9セクターのうち5セクターで中間目標を設定した。

 

  SMBCはGHG排出量のうち、自社の事業活動からのScope1~2について2030年にネットゼロとし、中間目標を25年に40%削減(21年度比)を設定している。投融資ファイナンスを通じてのポートフォリオGHG排出量(Scope3=financed emissions)についても、50年ネットゼロへのコミットに加えて、2030年の中間目標としてNZABが示すセクターごとに設定作業を進めている。

 

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 ポートフォリオGHG排出量のうち、セクター別ではすでに中間目標を設定している石油・ガス部門が40.8%と最も多く、次いで電力(25.6%)、石炭(0.1%)と続く。新たに設定した自動車は1.2%、鉄鋼3.2%。残りは、農業・食料・林産物(2.6%)、アルミ(0.2%)、セメント(0,1%)、不動産(0.3%)、その他(26%)となっている。

 

 今回設定した自動車セクターの現行の排出量は205g-CO2e/vkm(21年度実績)。これを30年に「2℃未満シナリオ」参照値として「161g-CO2e/vkm」に、「1.5℃シナリオ」参照値を「120g-CO2e/vkm」と設定した。削減率は、前者が現行比21.5%減、後者が41.5%減となる。段階的に「2℃未満シナリオ」目標から「1.5℃シナリオ」目標を目指していく、としたうえで、「トランジションにはエネルギー資源をはじめとした地域特性を踏まえた取組が必要」とし、 日本の顧客企業の脱炭素化取り組みの状況に沿って、目標の考え方・水準等の引き上げを図っていくとしている。

 

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 もう一つの鉄鋼セクターについては、現行の「20t-CO2e/t-Steel」(21年度実績)を、「2050年カーボンニュートラルを目指す顧客企業」については「1.8t-CO2e/t-Steel」とし、「1.5℃シナリオ」 参照値としては、「1.2t-CO2e/t-Steel」に設定した。前者は10%減、後者は40%減となる。このうち前者の企業は大手の鉄鋼各社を想定。「先ずは2050年カーボンニュートラルを目指す顧客企業の目標と整合的な水準を達成する」として、10%減が軸となる。

 

 自動車セクターに比べても鉄鋼セクターの中間目標水準は明らかに低い。SMBCでは「アジアは脱炭素化に時間を要する高炉が多く、 地域特性を踏まえた目標設定が必要」と説明し、鉄鋼会社側の事情を重視する考えを示している。そのうえで、自動車と同様に「地域特性を踏まえた脱炭素シナリオの研究並びに顧客企業との対話を続け、目標の 考え方・水準について引き上げを図っていく」としている。

 

 また、石炭火力や一般炭採掘、バイオマス等の環境・社会へ大きな影響を与える可能性が高いと考えられるセクター・事業横断的支援の禁止方針と、人権尊重、気候変動への対応強化、自然資本の保全・回復等への取組強化の項目を「サステナブルポリシー」に新設・改定した。主な内容は、児童労働、強制労働、人身取引を引き起こしている事業に対する支援を禁止する方針の新設のほか、木質バイオマス発電の新設・拡張案件に対しては持続可能な燃料材が使用されていることを確認する方針の新設等。

 

 さらにグループの三井住友銀行では、2024年度から「環境社会審査」を導入する。これまでも顧客企業の環境社会リスクへの対応状況を把握する取組を進めてきたが、今後は同取り組みを 「環境社会審査」と位置付け、より高度なデューデリジェンスの枠組みに発展させる、としている。審査はグローバルに統一的な目線に基づき、顧客企業の環境・社会課題(気候変動、生物多様性、人権侵害等) に関する取組や、そのリスク緩和策を把握・評価し、同行の与信判断の高度化を通じたリスク管理の強化や、社会課題の解決に向けた顧客企業へのエンゲージメント等に活用するとしている。

https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20240329_02.pdf

https://www.smfg.co.jp/sustainability/materiality/environment/climate/pdf/tcfd_report_j_2023.pdf

https://www.smfg.co.jp/sustainability/materiality/environment/business/pdf/tfp_j.pdf