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川俣の遺族、東電提訴「心的負担でうつに」 原発避難者自殺(河北新報)

2012-05-20 05:28:59

提訴で裁判所に入る渡辺さん(先頭右)と弁護団=18日午後4時、福島地裁
提訴で裁判所に入る渡辺さん(先頭右)と弁護団=18日午後4時、福島地裁


福島第1原発事故で避難し、自殺した福島県川俣町山木屋の養鶏場従業員渡辺はま子さん=当時(58)=の夫で無職幹夫さん(62)ら遺族4人が18日、東京電力に約9100万円の損害賠償を求める訴えを福島地裁に起こした。福島原発被害弁護団によると、原発事故の自殺をめぐる訴訟は初めて。  訴えによると、はま子さんは昨年7月1日早朝、自宅近くのごみ焼き場でガソリンをかぶり、火を付けて自殺した。  はま子さんは原発事故で福島市や福島県磐梯町に避難。その後、自宅に戻ったが、山木屋地区が計画的避難区域に指定され、昨年6月12日に新たな避難先として福島市のアパートに引っ越した。

避難生活は気詰まりがして心的負担が増した。2人の息子と別居せざるを得ず、養鶏場も閉鎖されて職も失った。睡眠障害に陥り、うつの症状がみられた。原発事故に伴う避難生活が自殺を招き、相当因果関係があるとしている。東電は「訴状を受け取っておらず、回答を差し控えたい」との談話を出した。

<夫「悔しさを晴らす」>

渡辺幹夫さんは提訴後、福島県庁で記者会見し、妻のはま子さんを自殺で失った悔しさをにじませながら、提訴に踏み切った心境を語った。  「女房は避難生活で苦しんだ末に死を選んだのに、ただの自殺者で終わってはかわいそうだ」  社交的で明るく、自殺と無縁と思った妻が自ら命を絶った無念に思いが至り、声を詰まらせた。

「何もかも失った悔しさを晴らすために、裁判が長引いても最後まで闘う」と断言。「私のように苦しんでいる自死遺族も泣き寝入りしないで闘ってほしい」と語気を強めた。

同席した福島原発被害弁護団の広田次男弁護士(いわき市)は「原発事故と自殺の因果関係は明らか。法廷の場で東京電力に責任があることを明確にする」と話した。

http://www.kahoku.co.jp/news/2012/05/20120519t63029.htm