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黒川清・国会福島原発事故調査委員会委員長の「原発技術の世界発信」発言(FGW)

2012-06-11 09:03:53

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東京電力福島第一原子力発電所事故を調査している国会の福島原発事故事故調査委員会が事故当時の官邸の行動を「過剰介入」とした報告内容が話題を呼んでいる。当時の菅直人首相がブログで反論しているが、そもそもこの国会事故調査委は自民党の提唱で編成された経緯があり、司法機関のような中立性があるのかが焦点になっている。委員長の黒川清氏の原発発言を振り返ると、原発技術の輸出促進を強調する論点が多いことが目に付く。

 まず、日本原子力学会誌「アトモス」の2008年2月1日号の巻頭言として、「地球温暖化時代の原子力」とのタイトルの主張をしている。その中では、「核廃棄物にしても、『巨大』島国の米国でさえ、埋蔵場所がまだ決められないでいることをどれだけの人が知っているのだろうか。地震大国の日本ではどうなのか」と、核廃棄物問題が未解決であることを指摘する一方で、「低炭素社会に向けて日本以外の先進国の動きは加速する様相を示しはじめている」「米国での原子力発電も日本の貢献が必要である」と、原発技術の輸出促進を提唱しているhttp://www.kiyoshikurokawa.com/articles/files/atomos.pdf

また原子力産業新聞の2008年6月19日号で掲載された「原子力と向き合う」というインタビューシリーズにも登場し、「原子力ビジネスは、日本は臆することなく、海外でしのぎを削るべきであり。そのぐらいの気概を示してほしい」と述べている。いずれも同氏が自身のブログで紹介している。

総じて同氏の発言は、日本の技術を積極的に海外移転することで日本企業の競争力と成長性を高めようという視点が多い。原発技術の海外移転もそうした技術移転論の一環といえる。同時に、福島事故以前の我が国のエネルギー政策が、原子力をクリーンエネルギーとしてとらえ、温暖化対策を促進すると位置づけしたうえで、海外にも途上国中心に日本の原発技術とプラントを二国間ベースで輸出促進しようとしていた経済産業省の既存戦略に沿った考え方でもある。そうした戦略は福島原発事故で宙に浮きかけている。経産省、経済界は何とか、原発輸出戦略の継続を図っているとみられる。

黒川氏は、医学者で日本学術会議会長、内閣特別顧問などを歴任した学会の「大物」だが、原子力、事故対策の専門家ではない。原発事故調査委員会の他のメンバーには、放射線医学の専門家は入っているが、原子力・事故対策の専門家は含まれていない。(FGW)

 

 黒川氏のブログ: http://www.kiyoshikurokawa.com/