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東北電力、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」公表。「再エネと原発」を同列扱い、「火力発電維持」も主要施策に。各分野・各施策の脱炭素の寄与度も公表せず(RIEF)

2021-03-26 23:51:43

tohoku002キャプチャ

 

 東北電力は、「2050年ネットゼロ」に向けた「東北電力グループ“カーボンニュートラルチャレンジ2050”」を公表した。①再エネと原子力の最大活用②火力の脱炭素化③電化とスマート社会実現ーを3本柱とする。再エネでは風力発電を軸に200万kWの早期達成を目指すとしている。ただ、3本柱に組み込んだ「火力の脱炭素化」の具体策のCCUSやアンモニア発電等は、技術面とコスト面の両面で課題を抱えているほか、各分野、各施策の脱炭素への寄与度等の説明は一切ない。

 

  3本柱の①では、再エネと原子力を並列している。だが、これでは、どちらに力を入れるのかが不明だ。再エネと原子力では発電時のCO2フリーという点では一応、共通するが、ライフサイクル全体ではCO2排出量に違いがあるほか、事故リスク、廃棄物リスク等も異なる。両者を同列視する東北電力の視点は、消費者や市場の視線を無視する姿勢ともいえる。

 

touhoku001キャプチャ

 

    ②の「火力の脱炭素化」を柱の一つに据えることで、同社の火力への拘りを示している。その具体策として、a)バイオマス混焼率向上b)バイオマス発電の導入c)CCUSの検討d)アンモニア発電の導入e)水素発電の導入等を列挙した。ただ、いずれの施策も現時点では、技術的にもコスト的にも課題を抱えている。バイオマスは生態系破壊につながる指摘が高まっている。唯一、具体策で確実なのは「非効率電源のフェードアウト」だけだ。

 

 ③の需要面の「電化とスマート社会実現」については、低炭素電力の供給体制が不十分な中で、需要面で電化を促す策を推進する姿勢は、電力会社として合理性を欠き、持続可能な経営目的はならない。運輸部門での電気自動車の普及等の策は、①の再エネ電力の普及と連動してこそ、実現可能性が増すが、そうしたつながりの説明はない。

 

 また、3つの柱それぞれの脱炭素化への寄与度が開示されておらず、従来と同様の「どんぶり勘定」と言わざるを得ない。カーボンニュートラルへの挑戦が、経営にとっても、影響を受ける社会にとっても、合理的に達成できるかどうかを示すためには、供給・需要両面での施策の寄与度を推計・試算して説明してこそ、消費者や投資家の納得が得られる。シナリオ分析に沿った温室効果ガス排出量の動向も示されていない。

 

 ネットゼロに欠かせないそうした情報が盛り込まれておらず、言葉だけ「カーボンニュートラル宣言」「実現に向けて目指す姿」「実現に向けたアプローチ」等を並べ立てるだけでは、同社が目指す「脱炭素」の姿は見えないままだ。誰に向けて、この情報を発信しているのかも不明だ。

https://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/__icsFiles/afieldfile/2021/03/24/b1_1219392.pdf