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日立造船と東京ガス等、九州大学と共同で、洋上風力発電の効率最大化のため「風車ウエイク」の再現研究で合意。スパコンやAI等を使って最適化計測(RIEF)

2021-04-19 13:10:22

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 日立造船と東京ガス等は九州大学と連携し、洋上風力の風況予測の技術開発で共同研究を開始した。洋上風力は今後の日本での再生可能エネルギーでの開発可能性が期待されるが、風車ブレードの回転に伴い、その下流に「風車ウエイク」と呼ばれる風速の減衰域が生じることが知られている。同現象が起きると発電効率が低下するほか、風車同士の事故につながりかねないという。今回の研究ではスーパーコンピューターやAI等を使い、同現象を再現し、最適な洋上風力発電の配置設計に生かすとしている。

 

 共同研究に参画するのは、日立造船、東ガスのほか、東芝エネルギーシステムズ、ジャパン・リニューアブル・エナジーの各社と、九大の応用力学研究所の内田孝紀准教授。コア技術は、内田准教授が開発した「数値風況予測モデル・リアムコンパクト 」。数値流体力学に基づいたコンピューターシュミレーショ技術で、「風車ウエイク」の再現が可能という。

 

 同モデルによって、風向変化や大気安定度などを踏まえた、風車ブレードの回転による風車ウエイク現象の風速減衰効果と、それにともなう風車同士の相互干渉等を時間の変化とともに忠実に再現できる。これら風況の分析によって、発電効率や耐久性などを向上させ、風力発電の能力を最大限生かすための最適な配置を計算できるようになる。

 

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 共同研究では、各社の実証事業などによるデータを活用して、シミュレーションの誤差を従来の5~10%まで低減させる技術開発を目指す。風車模型を用いた室内風洞実験、スーパ ーコンピュータによる大規模数値シミュレーション、ライダー等のリモートセンシング技術やドローン (UAV)による商用大型風車を対象とした野外計測等を総合的に実施する計画だ。

 

  1年間にわたってデータを収集し、得られたビッグデータは AI等のデータサイエンスのアプローチでデータ解析の精度を高める。開発したソフトウエア技術は九大発のベンチャー企業のリアムコンパクト(福岡県宗像市)を通じて、21年度内にも風力発電事業に取り組む企業向けに販売するという。

 

 「風車ウエイク」は、風力発電特有の現象で、前方から吹いてきた風が風車の後ろに流れる際に、風速の弱い乱れた風になることをいう。「風車ウエイク」が生じると、後方にある風車は風力をとらえきれず、発電効率が低下してしまう。欧州等では洋上での平均風力が8m以上あり、多少、減速しても発電効率への影響はカバーできるが、日本の洋上は全体的に風力が弱く、大規模な洋上風力発電ファームの形成が難しくなる。

 

 風車ウエイクを事前に計測できると、風車の配置を最適化することが容易になり、発電効率を高め、洋上風力発電事業全体のバンカビリティ融資資適格性)を高めることができるとされる。

https://www.kyushu-u.ac.jp/f/43404/21_04_19_01.pdf