トヨタ自動車、電気自動車(EV)の2030年の世界販売目標を350万台に。従来より1.75倍増。30車種を供給へ。全方位路線は捨てず(各紙)
2021-12-14 23:05:10
トヨタ自動車は14日、電気自動車(EV)戦略に関する説明会を開き、2030年のEVの世界販売目標を350万台に引き上げた。今春には燃料電池車(FCV)とEVを合わせて200万台の目標を掲げていたが、一気に、1.75倍に拡大する。同社の国内での年間販売台数の2.3倍超になる。EVの車種もこれまでは「25年までに15車種」としていたのを「30年までに30車種」に拡大する。
EV350万台の目標は、独ダイムラーに匹敵する。欧米でEV化が進展する中、これまでトヨタは主力のハイブリッド車を中心に据え、EVには「消極的」との批判も受けていた。今回の発表はそうした外部の声を一掃するかのように、EV化にギアチェンジした格好だ。高級車ブランドのレクサスは北米と欧州、中国での新車販売のすべてをEVにする。
説明会に登壇した豊田章男社長は「(11月に閉幕した)COP26で各国のエネルギー政策が見えてきて、このくらいなら実現可能だと考えてEVの目標を上方修正した。未来を予測することより変化にすぐ対応できることが大切だと考えているので、脱炭素の正解への道筋がはっきりするまで利用者がどのような車を選ぶか選択肢を残し続けたいと考えている」と述べ、引き続き、ハイブリッドもFCVもラインナップにそろえる姿勢を強調した。
今春公表の見通しでは、世界での年間の販売台数1000万台のうち800万台をHVやEV等の「電動車」とし、うちEVは、FCVと合わせて200万台としていた。今回EVだけで350万台とする一方、全体の台数等には言及がなかったことから、HV等の目標を削減することになるようだ。
EV増大に伴い2030年までにEVの製造等に約4兆円を投じ、そのうち、EVの軸になる車載電池への投資額を2兆円とする。春の説明よりも5000億円増強する。HVやFCVの、ともに電池を必要とする車種への投資を含めると、30年までの電動化分野への投資は8兆円に達する。
市場では、今回、トヨタがEV戦略を強化した背景には、新型コロナウイルス感染拡大で自動車全体の売り上げが伸び悩む中で、欧州や中国等ではEVの新車販売が大きく伸びるなど、自動車市場の急速な変化があるとされる。特に欧州では、ドイツやフランスのように、政府と自動車メーカーが一体となってEVや電池の開発、充電インフラの整備に力を入れている。
現地メーカーの中には、将来、ガソリン車やディーゼル車の販売を完全に止めて、「EV専業」を宣言するメーカーも出ている。また、モーターと電池があれば、比較的に容易にEV生産ができることから、新たにEV車市場に参入する他業態の動きも高まっている。
トヨタは、こうした中でも、主力のHVを軸に、EV、FCV、さらには水素燃料車もアピールするなど、多様な電動車の生産・開発を手がける全方位的な戦略を変えてこなかった。今回の発表でも豊田氏は「(われわれは)多様化した世界で、何が正解か分からない時代を生きている。1つの選択肢だけですべての人を幸せにすることは難しい」と指摘した。
しかし、特に欧米メディア中心に、トヨタは「EVに消極的」との批判が出ていた。豊田氏は「EVに前向きではないという評価に対して、350万台を目指すとか、30車種を投入するなどの目標を立てても前向きではない会社と言われるのなら、どうすればご評価頂けるのか。どの選択肢に対しても本当に一生懸命やらせていただいている」と述べた。
全方位路線と、EV強化の二つのベクトルを示した形だが、実際の販売戦略では、国内、欧米、中国、東南アジアなど、地域ごとに需要が高い車を投入することで、次第にEV化の度合いを広げ、強めていくことになりそうだ。