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民主党「脱原発を考える会」が「脱原発ロードマップ」第一次提言を発表(脱原発を考える会)

2012-06-28 15:04:32

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民主党「脱原発を考える会」は、2012年6月27日、「脱原発ロードマップ第一次提言」を発表した。本提言の政策目標(1) 私たちは、再稼働すべきでない原子炉の廃炉を進めるとともに、遅くとも2025年度までに原子炉の稼働をゼロとし「脱原発」を達成する。(2) 2025 年度までに、2010年度と比較して、省電力2割を実現する。(3) 2025 年度までに、総発電量に占める再生可能エネルギー電力の割合4割を実現する。

 

「脱原発を考える会」は、菅直人(衆院議員=顧問)、江田五月(衆院議員=顧問)、近藤昭一(衆院議員=代表)、平岡秀夫(衆院議員=事務局長)、岡崎トミ子(衆院議員)、辻元清美(参院議員)、福山哲郎(参院議員)を世話人とし、6月27日現在72名の民主党衆参国会議員が参加、賛同する任意団体。

 

専門家も交えて10回の会合を開き「脱原発ロードマップ第一次提言」をまとめた。「遅くとも2025年までの原発稼働の完全停止と、そのための省エネ2割、再生可能エネルギーの4割導入などを掲げる。一次提言の内容は以下の通り。http://www.renewable-e.jp/document/files/2012/06/1.pdf

 

1. 基本的考え方
2011年3月11日、東日本大震災において福島第一原発の事故が発生し、16万人の福島の人々は故郷を追われ、働く場を失い、あるいは家族を引き裂かれました。それに加え、周辺地域に甚大な被害をもたらし、食や健康の安心・安全への脅威も含めて国民全体に大きな不安と恐怖を与えるとともに、国民経済に大きな打撃を与えました。
原発は、リスクの巨大さでも、放射性廃棄物の問題でも、「倫理的」なエネルギーではありません。一旦事故が起これば無限大の被害が発生する可能性があるうえ、一度に大量の電源が失われることなど、エネルギー安全保障上、極めて脆弱なシステムです。また、未だに放射性廃棄物の最終処理が確立できておらず、仮に確立できたとしても、10万年以上の長い管理が必要とされるものです。

原発による被害を受けるのは、原発の利益を享受している現世代の人々にとどまりません。「未来の世代」の人々も、事故のリスクに晒され、放射性廃棄物を大量に抱え込むことになります。

今意思決定することのできない未来の世代に、膨大な付けを回すべきではありません。
他方で、エネルギー問題は深刻さを増す一方です。世界的な人口増、新興国の台頭などにより、今後、エネルギー需給はひっ迫し、価格は高騰していくと予想されます。しかも、エネルギー消費の拡大は、地球環境問題・気候変動問題にも深刻な影響を与えるでしょう。

エネルギー効率が悪く、エネルギーの大量消費を前提とした原発及び大規模集中型のエネルギーシステムでは、21 世紀最大とも言えるエネルギー問題に応えることはできません。いまこそ、省エネルギーと再生可能エネルギーを中心とする分散型エネルギーシステムを構築するとともに、そこで得られた知見、技術、経験等を世界各国に発信していくべきです。

2.遅くとも2025年度までの出来るだけ早い時期に脱原発

本会の議論の中では、現在我が国のすべての原子炉が停止していることを踏まえて、このまま脱原発を実現すべきとの意見がありました。一方、全ての原子炉について停止のまま廃炉にするためには、解決すべき課題や合意形成すべき論点があることも事実です。以上を踏まえ、本会は、遅くとも2025年度までの出来るだけ早い時期に原子炉の稼働をゼロとし「脱原発」を達成することを提言します。

これとともに、エネルギー政策の主軸を、エネルギー効率向上及び再生可能エネルギーへとシフトし、2025年度までに省電力2割(2010年度比)、再生可能エネルギー電力の総発電量に占めるシェアーを4割程度にまで高めることも併せて提言します。

なお、「脱原発」実現までの間の廃炉基準や再稼働基準については、別途適切な判断が行われるべきことは言うまでもありません。
3.新しいエネルギーシステムへの転換による経済成長・エネルギー安全保障・温暖化対策

新しいエネルギー政策を進める具体策は、コージェネの推進、石炭からガスコンバインドサイクルへの転換、商業化された省エネ技術の普及促進、再生可能エネルギーの熱・電力総合利用の推進、需要•供給両面でのエネルギーマネジメントの推進等です。

そのため、電力系統強化や発送電分離などの電力市場改革や、規制緩和・強化、税制改正など、総合的な政策パッケージを打ち出し、中央集中型エネルギーシステムから分散型の新しいエネルギーシステムへと転換していきます。また、需要サイドにおいて電力をはじめ熱や運輸燃料などエネルギー消費削減余地は非常に大きいことから、省エネルギー推進のための税制改正など、政策措置を積極的に推し進めます。

そして、以上のような省エネルギーと再生可能エネルギーに関する具体的な政策を力強く展開することによって新たな成長産業を創出し、国内投資・雇用拡大を促進すると同時に、環境負荷・温暖化リスクやエネルギー安全保障リスクを最小化します。

このように、原発に依存しない新しいエネルギーシステムの構築は、エネルギー領域の抜本的な改革にとどまらず文明の転換であり、エネルギー消費削減・温室効果ガス削減を達成しながら経済成長する、21 世紀型の新たな経済社会システムへのパラダイムシフトを実現することでもあるのです。

4.解決すべき課題や合意形成すべき論点
 

本提言を実現するために次のような課題があります。これらについて、本会でも引き続き検討をすすめ、提言していきます。

(1)発送電分離、電力系統強化等、電力システム改革によるエネルギー産業の競争力強化
(2)再生可能エネルギーの拡大及びエネルギー効率向上による成長戦略・地球温暖化対策
(3)新たな分散型エネルギーシステムに関する国際的な協力体制の構築
(4)電力の安定供給を維持し電力料金の高騰を防ぐ対策(特に化石燃料調達対応)
(5)電力会社の経営問題に対する対策
(6)ピーク時電力供給の確保及びピークカットのための施策(節電を含む)
(7)核燃サイクルの抜本的な見直しを前提とした使用済み核燃料の管理•処理の進め方
(8)原発関係施設立地及び周辺地域において雇用を確保し、また地域自立型経済に転換するための積極的な支援
(9)核廃棄物の処理及び廃炉、汚染対策、核セキュリティ、医療等における原子力関連の技術の研究レベルの向上並びにそれらのための人材の確保

 

「脱原発ロードマップ第1次提言」の説明
1、 本提言の政策目標
(1) 私たちは、再稼働すべきでない原子炉の廃炉を進めるとともに、遅くとも2025年度までに原子炉の稼働をゼロとし「脱原発」を達成する。
(2) 2025 年度までに、2010年度と比較して、省電力2割を実現する。
(3) 2025 年度までに、総発電量に占める再生可能エネルギー電力の割合4割を実現する。

2、 原発廃炉の前提条件
(1) 福島第一(5、6)、第二(1~4)、女川(1~3)、浜岡(3~5)は、直ちに廃炉とする。
(2) その他は「40 年廃炉」基準で廃炉とし、原発の新増設は行わない。
(3) 「脱原発」までの間の廃炉基準や再稼働基準は、新組織で別途適切に判断。

 

3、 省電力目標・再エネ電力目標の比較
本提言では、ドイツにおける脱原発ロードマップ、欧州での再生可能エネルギー本格導入への取り組み状況、環境省委託事業「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」等を参考にして積上げを行うことによってその実現可能性を検証しつつ、下表の通り、「省電力目標」と「再エネ電力目標」を定め、その目標に向かって必要な政策手段(FIT 制度の適切な推進、規制緩和、政策金融の創設等)を講ずべきとしている。
(注:下表における2030 年度の数値は、政府見通しとの比較のために計上)
http://n-kan.jp/news/?p=94