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東電に集団賠償請求 15個人らが総額2億1600万円(河北新報)

2012-06-28 21:10:09

福島第1原発事故の損害賠償を請求した宮城県内の事業者と弁護士ら=仙台市青葉区の仙台弁護士会館
福島第1原発事故の損害賠償を請求した宮城県内の事業者と弁護士ら=仙台市青葉区の仙台弁護士会館


福島第1原発事故で事業に多大な損害を受けたとして、宮城県内の10個人と5法人が27日、東京電力に計2億1635万円の損害賠償を請求した。宮城県の事業者らによる集団請求は初めて。
 それぞれの請求額は356万~3177万円。登米市の畜産業男性(38)は、牛のふんや牛舎の暖房の焼却灰から放射性物質が検出され、新たな設備導入を迫られたなどとして、賠償を求めた。

 蔵王町の旅館経営の男性(63)と仙台市の輸出業者は、それぞれ旅館の宿泊客数や海産物の輸出額が激減したと訴えた。福島県内の取引先が営業を休止せざるを得なくなったり、福島第1原発近くの顧客が避難したりしたため、売り上げが激減した事業者らも請求に加わった。

 多くの請求者は今回の集団請求に先立ち、個別に賠償を求めたが、東電は国の賠償中間指針で、宮城県内の損害の大半が対象外とされていることを理由に拒否した。

 請求者代理人の「宮城県原発被害弁護団」によると、弁護団は今月、国に対し、宮城県内の損害も中間指針の賠償対象とするよう要請したが、担当者は「宮城の損害のデータはなく、指針を変える必要はない」と答えたという。

 弁護団長の菊地修弁護士は「中間指針では(地域にかかわらず)事故との因果関係が認められれば、賠償することも定めている。個別の請求で断られても泣き寝入りせず、相談してほしい」と訴えている。

 弁護団は月、水、金曜の午前10時~午後4時、無料電話相談を実施している。連絡先は022(399)6907。

<「被害に県境ない」代表者ら怒り>

 「隣県の宮城の損害が補償されないのは、差別だ」。東京電力に損害賠償を求めた宮城県内の事業者らは27日、仙台市青葉区の仙台弁護士会館で、東電の賠償担当者に直接怒りをぶつけた。

 塩釜市の清掃業者は、原発事故の影響で顧客だった宿泊施設(蔵王町)の経営が悪化し、契約を解除された。東電に賠償請求しても「宮城は中間指針に入っていない」と断られたという。

 代表者の男性は「最大の事故原因は東電の安全対策の不備にある。賠償してほしい」と訴えた。

 村田町のピアノ調律師男性(54)は、南相馬市の楽器店が主な顧客だった。賠償を求めると、東電は「宮城県内に住んでいる人は難しい」と答えたという。

 男性は「福島と宮城の線引きは意味がない。福島第1原発の近くに住民票を移せと言うのか」と詰め寄った。
 弁護団の佐藤靖祥弁護士は「個別の事情を全く顧みない対応が繰り返された」と批判。宮城県丸森町の農業男性(55)は「事故がどれだけ多くの人に被害を与えたのか。それを分かってもらうため請求した」と語った。

 東電東北補償相談センターの宮下康近副所長は「請求内容を確認して適切に対応したい」と答えた。

http://www.kahoku.co.jp/news/2012/06/20120628t13004.htm