HOME10.電力・エネルギー |全日空と日本航空、伊藤忠が輸入した「原料SAF」を国内で混合した「SAF」を調達。国内混合で海上輸送時のCO2排出量7割削減。でも「混ぜる」だけで、国内生産は出遅れ(RIEF) |

全日空と日本航空、伊藤忠が輸入した「原料SAF」を国内で混合した「SAF」を調達。国内混合で海上輸送時のCO2排出量7割削減。でも「混ぜる」だけで、国内生産は出遅れ(RIEF)

2023-03-31 00:19:05

ANAJALキャプチャ

 

 全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は30日、伊藤忠商事がフィンランドから輸入した「持続可能な航空燃料(SAF)」の原燃料(ニートSAF)をジェット燃料と国内で混合したSAFを初めて調達したと発表した。現在、SAFは欧州を中心に生産され量も限定的なことから、国土交通省の実証事業の一環として輸入し、国内で混合した。国内混合とすることで、従来のSAFそのものを海上輸送していた際のCO2排出量を7割程度削減できるとしている。でも、SAF技術も海外依存で、国内開発ができず、輸入して「混ぜるだけ」なんだ、の声があがりそうだ。

 

 (写真は、2021年10月にSAF開発で共同レポートを発表したANAの平子裕志社長㊧とJALの赤坂祐二社長㊨)

 

 伊藤忠等によると、ニートSAFはバイオマス原料等から製造されたジェット燃料。これを化石燃料由来のジェット燃料に一定割合を混合してSAFとして、航空機の燃料に供給する。ところが国内ではニートSAFを製造する技術が不十分で、これまで海外で混合したものを輸入していた。そのため海上輸送の費用や輸送時の追加的CO2排出増等の課題があった。

 

 今回は国土交通省の事業として官民が連携した。伊藤忠がフィンランドのNeste OYJ社からニートSAFを輸入し、国内で混合することで、SAFそのものの海上輸送負担を削減できる。NesteのニートSAFは、従来型の化石燃料由来のジェット燃料と50%まで混合が可能で、単純に計算すると輸送コストは半分減ることになる。

 

 伊藤忠は、富士石油(東京)と連携し、日本でのSAF混合サプライチェーンを構築する。同社として羽田空港、成田空港に次ぎ中部国際空港でもSAFの供給を行う。ANAとJALは、これら3空港で混合後のSAFを燃料とすることで、飛行時のCO2排出量を削減できる。ニートSAF及び混合後のSAFは、SAFの国際規格であるASTM D7566と、JET燃料の国際規格であるASTM D1655への適合を確認する必要がある。

 

 国際民間航空機関(ICAO)は、国際線の航空機が排出するCO2を2050年までに実質ゼロとする目標を掲げている。これを受けて、現在、2024年以降の飛行に際して、排出量15%削減(2019年比)が求められている。日本政府は30年に国内航空会社の航空燃料需要の1割(130万㎘)をSAFにする方針を掲げている。しかし、2050年の目標達成には日本の航空会社だけで、最大約2300万㎘が必要とされる。

 

  国土交通省等は国産SAFの開発を目指す開発プロジェクトを立ち上げており、民間でも三菱商事がENEOSホールディングスと、2027年をメドに、国内で年数十万㎘の供給網の完成を目指すとしている。また、丸紅はゴミ由来のSAF製造技術を持つ米フルクラム・バイオエナジーにJALなどと出資している。三菱地所と日揮ホールディングスは、JR東京駅周辺の飲食店などからの廃食油を材料に年3万㎘規模のSAFの生産を24年度にも始めると報道されている。

 「混ぜるだけ」からの脱却の実現を期待したい。

 

https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2023/230330.html

https://www.anahd.co.jp/group/pr/202303/20230330-3.html

https://press.jal.co.jp/ja/release/202303/007332.html