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中国の風力発電メーカー、相次ぎ世界最大の1基16MWの風力発電タービン開発。18MW級も視野。グローバルサプライチェーン基盤で競争力強化。日本勢の「自前技術主義」と明確な差(RIEF)

2023-07-03 09:00:44

Chinawindキャプチャ

 

 中国で洋上風力発電設備の巨大化が進んでいる。従来の一基当たり最大のタービン発電量は、GEの「モンスター風車」と呼ばれた「Haliade-X」の12MWだったが、これを上回る16MW級の風車の建設が相次いで進んでいる。また中国では18MW級の開発も視野に入っている。いずれの巨大タービンも中国の風力発電メーカーのグローバル化が背景にあるとされる。日本もようやく洋上風力開発に焦点が合わさってきたが、実際の稼働は2030年以降で、一基当たりの発電量は現在の中国製の巨大タービンよりも、一回りも二回りも小さい。日本政府の再生可能エネルギー政策の稚拙さが、中国との競争力の格差を生み出したといえる。

 (写真は、CTGが開発した洋上風力発電設備=福建省平潭県)

 

 中国からの報道によると、6月末に、台湾海峡に面する福建省平潭県で、国営エネルギー開発企業の中国長江三峡集団(CTGC)が手掛ける洋上風力発電事業の一環として、発電量13MWの容量のタービンを設置する風車の建設が完了した。高さ130m、2万5000世帯分の電力を発電する。石炭火力発電比で年1万5000㌧の石炭燃焼を削減し、CO2排出削減は年3万8000㌧と見込んでいる。

 

 GEの「モンスター」を上回る13MW級の完成はCTGCのプロジェクトの一歩に過ぎない。同社は13MW級の完成に続いて、それよりも一回り大きい16MW級の建設プラットフォームの設置を始めたことも発表した。16MW級は風車の高さが146mと、13MW級より16m高く、50階建てのビルに相当する。ブレード全体の直径は252m。風力発電事業で世界市場を持つ中国企業のGoldwindが開発した。同事業全体での発電予定量は400MW。事業規模は60億人民元(約8億8500万㌦)。

 

明陽明智開発の16MG風力タービン
明陽智能が開発した16MG級の風力タービン

 

 CTGCだけではない。民間の風力発電会社の「MingYang Smart Energy(明陽智慧能源集団股分有限公司:明陽智能)」も、自社の技術を踏まえ、同じく16MW級(MySE 16.0-242)のタービン設備の開発を公表した。2024年上半期には商業化するとしている。同機は発電量の大きさに加えて、洋上風力で課題となる台風等への対応にも優れているとしている。

 

 同社の技術力の高さは、日本のウェンティ・ジャパン(秋田市:VJ)が富山県入善町沖で進めている洋上風力発電事業で、同社のタービン等が採用されたことで、一躍、日本でも知られた。入善町沖プロジェクトは、発電量3MW級の風力発電設備を3基導入する計画。発電した電力は全量「再エネ固定価格買取制度(FIT)」を活用して北陸電力に売電する。明陽智能への設備発注は事業のEPC(設計・調達・建設)を担当する清水建設が決めたとされる。https://rief-jp.org/ct10/122115?ctid=

 中国の民間企業CSSC(中国海装)はこれらの巨大発電タービンを上回る18MW級の「H260-18MW」の開発を進めている。同風車のブレードは260mで風車の一回転当たり44.8kWhの発電が可能という。同社は「『H260-18MW』のタービンは、風力発電の効率性の向上に貢献するとともに、洋上風力発電全体の均等化発電コスト(LCOE)の削減につながる」と、タービン巨大化のメリットを強調している。
CSSCキャプチャ

 中国の風力発電設備の建設で特徴的なのは、CTGCの事業を請け負うGoldwindや明陽智能のように、世界的競争力を持つ風力発電メーカーの技術力の高さだ。明陽智能の社長のQiying Zhang氏は中国企業の風力発電技術について「(中国だけの技術ではなく)グローバルサプライチェーン・パートナー企業との連携に加え、航空機や資源産業等の最新の技術の導入、ビッグデータの活用等によって高品質の製品をシステマティックに開発してきた成果」と強調している。https://rief-jp.org/ct5/109169?ctid=

 中国の風力大手自体が、グローバルプレイヤーとして各国で風力発電事業に参画していることから、各国のサプライチェーンと連携し、最先端技術を常に更新し続けているという。風力発電分野では、日本企業もかつては、三菱重工業や日立製作所、三井造船等がそれぞれ自前技術で覇を競っていた。だが、経産省が長年、再エネ政策に力を入れなかったことから、国内需要が盛り上がらず、結局、各社とも自前風車から撤退した。https://rief-jp.org/ct5/109169?ctid=

 現在は国内各社の中には、再び風力発電事業に力を入れるところも出ているが、活用する風力発電設備は海外企業の技術に頼る形だ。今になって経産省は、GX戦略の一環として洋上風力発電促進を打ち出しているが、長年の「再エネ冷遇・原発/石炭優先」のエネルギー政策を続けたことで、日本の再エネ事業は「輸入依存型」となり、国際競争力は全くない状態に陥っている。

 本来は、日本の各風力発電メーカーも、国内需要が高まらない中でも、事業撤退する前に、国際市場での展開を目指す「野心」があれば、中国企業のようにグローバルサプライチェーンを形成する機会はあったかもしれない。グローバル化に対応できない政策当局と、国内市場頼みの企業経営による再エネ出遅れの影響を挽回するのは、容易ではないようだ。

 

https://www.ctg.com.cn/sxjt/xwzx55/zhxw23/1433999/index.html

https://global.chinadaily.com.cn/a/202306/27/WS649a2c88a310bf8a75d6bc28.html

https://newatlas.com/energy/worlds-biggest-wind-turbine-mingyang/?itm_source=newatlas&itm_medium=article-body

https://electrek.co/2023/06/29/the-worlds-largest-wind-turbine-is-now-being-installed-in-china/