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政府原発事故調/「人災」の総括では済まない(河北新報)

2012-07-24 08:45:24

ひとたび悪化すると、もはや押しとどめることが不可能になる恐ろしさ。それが原子力の本質ではないか。
 「福島第1原発事故は人災だ」と結論付けた国会の事故調査委員会に続いて、政府の事故調査・検証委員会が23日、最終報告書をまとめた。


 報告書を読むと、いったん過酷な事故が起きてしまったら、手に負えないほどの状況になることがよく分かる。そして被災を防ぐのが至難の業になることにも、がくぜんとさせられる。

 政府事故調は測定データを使って事故状況を説明したが、最初に危機に陥った1号機は早ければ東日本大震災当日の午後8時すぎに、原子炉かまたは周辺部が破損して放射性物質が漏れていた可能性があるという。

 格納容器も午後10時前には破損していた可能性が指摘された。地震の影響は取りあえず否定しているが、原子炉の破損や放射性物質の漏出が急激に進んだとすれば、揺れとの関わりはさらに詳しく解明すべきだ。

 1号機に消防ポンプによって水が入れられたのは、12日の午前4時。既に相当に破損が進んでからだった。緊急冷却装置が稼働していると誤認したのが、遅れにつながった。

 遅くとも昨年3月12日未明の時点でメルトダウンも放射性物質の外部放出も確実であり、原子炉の冷却と住民の避難が最優先課題になっていた。

 しかし、海水注入でまた手間取る。菅直人前首相が海水による再臨界の可能性を聞いた際、原子力安全委員長と経済産業省原子力安全・保安院次長、東電の専門家のいずれも的確には答えられなかったという。

 「司令部」がこのありさまでは、最善の事故対応ができるわけがない。せめて「多少の問題はあっても、何が何でも冷やさなければならない」くらいは助言してしかるべきだった。

 避難に必要な情報提供も問題だらけだ。保安院は12日にメルトダウンの可能性を説明しながら、14日になって否定した。報告書によると「否定しがたい事実を積極的に否定」したのだから、罪は重い。福島県内ではこのころ、多くの人が放射能の恐怖に右往左往していたのだ。

 政府と国会の報告書から読み取れるのは、事故を防ぐ可能性があったとするなら、事前にあらゆる努力を注ぎ安全対策を取るしかなかったということだ。

 ところが「意図的な先送りや不作為」(国会事故調)の末に震災を迎えた。その意味ではまさに人災だった。今回の報告書も原因を「『長時間の全電源喪失は起こらない』との前提の下に全てが構築・運営されていたことに尽きる」(委員長所感)と、人の問題に求めている。
 二つの報告書は多くの判断ミスや能力の欠如など、人間の問題に触れている。責められるべき行為は多いが、それと同時に原子力に内在する膨大な危険性もまざまざと感じ取れる。

 その技術を採用していくべきかどうかこそ、最も問われていることではないだろうか。

http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2012/07/20120724s01.htm