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中国の巨大発電量(1基16MW)の洋上風力発電所、台風下で24時間発電。1日当たり発電量で世界記録更新。巨大かつ台風対応の技術水準の高さを強調(RIEF)

2023-09-09 23:17:38

Chinawind001キャプチャ

写真は、巨大風車が並ぶ中国・福建エリアの洋上風力発電群=CGTNより)

 

  中国の風力発電事業者が相次いで開発を進めている世界最大級の出力16MW級の洋上風力発電所が、台風の強風を利用して、一日当たりの発電量で世界記録を樹立した、と中国メディアが報じた。洋上風力発電所は台風の強風時には安全のため発電を停止するケースが多いが、今回、中国の発電大手の長江三峡集団(CTGC)が運営する福建エリアの世界最大の洋上風力発電所(16MG)は、台風9号と11号の襲来時にも24時間フルに稼働した。その結果、1日当たりの発電量は38万4100kWhに達し、世界記録を更新したとしている。

 

 中国国営テレビ系のCGTNによると、二つの台風が中国大陸に上陸したことで、中国南東部、福建省の沿海地域では大きな被害が発生した。だが、CTGCが台風のコースに当たったエリアで運営する世界最大規模の16MW級の風力発電は、直径252mという巨大なブレードの設計に際して、台風対策として、強度、形状、抗力の三方面を独自にカスタマイズし、最大で瞬間風速75mに耐えられる構造になっているという。

 

 さらに、台風に備えて、メンテナンス担当チームは台風接近前に、遠隔台風対策シミュレーションやユニットの停電による予備電源への切り替えなどのテストを行い、準備を整えたとしている。両台風の通過時に、洋上風力発電所に吹き付けた強風は1日時点で、最大風速が秒速23.56mを記録した。実際の台風の通過の際には、中国の北斗通信技術を利用して運行モードを機敏に切り替え、発電ユニットの給電方式と風車の向きを調整して、やり過ごしたという。

 

 世界最大の風力発電は、風車の高さが146mで、50階建てのビルに相当する。ブレード全体の直径は252m。1基当たりの年間発電量は6600万kWhで、3万6000世帯(3人家族)の年間消費電力をまかなうことができる。風力発電事業で世界市場を持つ中国企業のGoldwindが開発主体だ。https://rief-jp.org/ct10/136961?ctid=72

 

 台風通過時に記録された1日当たりの発電量38万4100kWhは、住民17万人が一日消費する電力量に相当するとしている。同発電所は今年6月に系統連系が完了し、7月19日から発電を開始している。発電量16MWの大規模風力発電は、CTGCだけでない。民間の風力発電会社の「MingYang Smart Energy(明陽智慧能源集団股分有限公司:明陽智能)」も、同じ16MW級(MySE 16.0-242)のタービン設備の開発を公表しており、2024年上半期には商業化するとしている。同社も台風への対応力を強調している。https://rief-jp.org/ct10/122115?ctid=

 

 同じく民間企業CSSC(中国海装)は16MW級を上回る18MW級の「H260-18MW」の開発を進めている。同風車のブレードは260mで風車の一回転当たり44.8kWhの発電が可能という。同社は「『H260-18MW』のタービンは、風力発電の効率性の向上に貢献するとともに、洋上風力発電全体の均等化発電コスト(LCOE)の削減につながる」と、タービン巨大化のメリットを強調している。

 

 中国メディアグループ(CMG)によると、中国は世界中の風力発電機器の6割近くを製造している。2022年末時点で、グローバルな洋上風力発電設備の導入規模は発電量で57.6GWとされ、このうち中国のシェアは53%を占めるとしている。風力発電の基数では3000万基を超えている。国内での建設数が多いだけでなく、世界49カ国・地域に輸出しており、輸出量は全体で1193万kWに達するという。

 

台風の強風の程度。「Eyewall」は強すぎるが、「Rainbands」は風力発電にプラスの風
台風の強風の程度。「Eyewall」は強すぎるが、「Rainbands」は風力発電に「快適な風」となる(CCTNより)

 

 CGTNによると、中国の「PowerChina Huadong Engineering」の再エネエンジニアリング機関のチーフエンジニアのLi Wei氏によると、洋上風力発電は、気候変動により多くの影響を受ける。たとえば、北極圏の気温の上昇は、赤道との気温差を縮小し、中緯度地域の風の速度や風量等に変化をもたらす。異常寒波は風力発電設備に氷結をもたらし、潤滑油の流動性に影響を与え、ブレードの回転に影響する。海氷の増大は、発電設備自体の安定に影響する。

 

 同氏は「これらすべては機器の寿命、効率性、安全性、安定的な発電に悪影響となる」と指摘する。その中で台風の影響は「良い面と悪い面の両方がある。台風の目を取り巻く積乱雲の『カベ周辺(Eyewall)』は最も風が強力で、風力発電には逆効果だが、帯状の降雨帯(Rainbands)に風力発電が入ると、安定した風が大きなメリットになる」。同氏は、風力発電の建設の安全性と発電の安定性を高めるためにデジタル化の必要性を強調している。

https://news.cgtn.com/news/2023-09-03/World-s-largest-16MW-offshore-wind-turbine-sets-new-global-record-1mN75XnHZzq/index.html

https://news.cgtn.com/news/2023-08-15/Tech-Talk-How-to-ensure-wind-power-supply-under-extreme-weather–1mhmGXbpBmg/index.html