HOME10.電力・エネルギー |戸田建設。長崎・五島市沖での浮体式洋上風力発電事業の運転開始時期を、来年1月の予定から2年延期に。浮体構造部に発生した不具合の検証作業で。減損損失95億円を計上(RIEF) |

戸田建設。長崎・五島市沖での浮体式洋上風力発電事業の運転開始時期を、来年1月の予定から2年延期に。浮体構造部に発生した不具合の検証作業で。減損損失95億円を計上(RIEF)

2023-09-23 00:22:11

Todawind001キャプチャ

 

 戸田建設は22日、長崎県五島市で開発を進めている浮体式洋上風力発電事業の運転開始時期を、当初予定の2024年1月から2年延期し26年とすると発表した。今年5月に同事業の根幹部分を構成する浮体式構造部の製造中に不具合が発生したことから、すでに海上に設置している浮体式設備3基のうち1基についても陸揚げして検証することとした。すでに5月に発表した2023年3月期の連結決算で、95億円の減損損失を計上している。不具合が構造的な問題である場合、同事業全体の見直しが必要になる可能性もある。

 

 同社の浮体式洋上風力発電事業は、日本の浮体式事業の先駆けとして取り組まれてきた。同社の連結子会社「五島フローティングウィンドファーム合同会社」(SPC)を事業主体として、再エネ海域利用法に基づいて五島市沖の海域に設置した促進区域で、浮体式の洋上風車8基の開発を手がけている。風車製造の資金調達にはグリーンボンドを発行するなど、グリーンビジネスの先頭を走ってきた。https://rief-jp.org/ct4/76862?ctid=

 

 同社の洋上風力発電設備は、「ハイブリッド・スパー型」と呼ばれる形式の細長い円筒形状の浮体構造の上に、風車とタワーを海上に突出する形で固定する設備。同設備を3本のチェーンで海底に係留する。九州大学と戸田建設グループの共同開発による。コンクリートは水圧や海水に強く、これを浮体下部に用いることでコストダウンを図るとともに、重心を下げて安定性を向上させることができるとしている。

 

 発電設備は、海中の一番深いところから風車翼(ブレード)の先端までの全長が176.5m、海面からの高さが100.5m、喫水部分が76m、ローター径80mという巨大な「円筒」のような形状をしている。発電量は1基当たり2.1MWで、8基全体では16.8MWとなる予定だ。日立製作所製。

 

 本格稼働として設定していた24年1月まで、秒読み段階に近い9月になって、2年の延期を決断したのは、2023年5月9日に、地上ヤードで製作中の2基の浮体構造部に不具合が見つかったためだ。同社の発表によると、「2基の不具合については、既に事象の確認と原因究明および対策工法の検討を実施し、不具合の是正措置および建設工事の再開を実施している」としている。

 

 ただ、すでに、先行する形で五島市崎山沖の海上に設置している3基の浮体についても、同様の不具合の有無を確かめるために、今回、検査を実施することにしたと説明している。今後、3基のうち1基を福江港岸壁に陸揚げし、浮体構造部の健全性を検証する。同基の検査次第で、残りの浮体2基も陸揚げするか、あるいはしなくても済むかを判断するとしている。

 

 同社は製作中に発見された浮体構造部に不具合については、検査、改修、再製作費用の見積もりをはじいているが、どのような不具合だったかについては公表していない。いずれにしても、不具合発覚によって、浮体部分の製作費用が大幅に増加する見込みとなり、95億円の減損損失を計上した。同社の業績予想では、すでに約32億円の減損損失を見込んでいたことから、業績修正への影響は63億円の減損損失の増加になるとしている。

 

https://www.toda.co.jp/assets/pdf/20230922_goto02.pdf

https://www.toda.co.jp/assets/pdf/tokusonkeijou.pdf