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産学共同による電気自動車(EV)への「走行中給電実証実験」、千葉・柏市で始まる。信号待ちのEVに、道路に設置した送電コイルから充電。10秒で1km走行可能(RIEF)

2023-10-04 15:07:57

EVkoirキャプチャ
写真は、EVに設置した受電コイルを説明する開発者の藤本東大教授=東京新聞から)

 産学協同の研究グループによる電気自動車(EV)へ「公道における走行中給電実証実験」が千葉・柏市で始まった。道路の交差点の信号付近に、送電コイルを設置、EVが信号で減速や停止する際にEVで自動的に受電し、充電できるようにする仕組みだ。現状では10秒の充電で一般的なEVが1km走行できるという。同設備が有効化すると、EVのバッテリーの小型化につながるほか、普及の課題であるチャージングステーションの整備等を最小化でき、EV普及を後押しすることが可能になると期待される。

  実証実験に参加したのは、東京大学大学院新領域創成科学研究科藤本・清水研究室、ブリヂストン、日本精工、ローム、東洋電機製造、小野測器、デンソー、三井不動産、SWCC、カーメイト、千葉大学宮城研究室で構成する共同研究グループ。実験は2025年3月末まで続ける予定という。同グループは2018年から走行中給電システムの研究を実施している。

道路上の送電コイルと、EVの受電コイルの対応状況
道路上の送電コイルと、EVの受電コイルの対応状況

 

 実証実験に踏み切ったのは、柏市の柏の葉キャンパス駅を中心とした地域。「柏ITS推進協議会」の枠組みによる「電気自動車への走行中給電技術開発の取り組み」として実施した。同地域では、産官連携に柏市も加えた公・民・学連携によって「柏の葉国際キャンパスタウン構想」に基づく先進的な街づくりが進められているほか、「国土交通省スマートシティモデル事業(先行モデルプロジェクト)」にも選定されている。

 今回の実証実験は、柏の葉キャンパス駅西口至近の市道で、日本初の公道上で、走行中給電技術の実証と社会的受容性の確認を目的として始まった。実験では公道の道路に埋め込んだ送電用コイルからEVに送電された電力を、EVに搭載された受電コイルが非接触で受け取る仕組みを実験した。

 実験では送電コイルの待機電力の省力化を目指している。送電コイルに常に通電をしていると、車両がコイル上に来ていない場合は、無駄なエネルギーを使うことになるためだ。そこで、コイルを稼働させるための待機電力を極力小さくしながら、道路上で停止したEVの車両検知を短時間で行うための、新たな車両検知システムの開発を目指している。

 

 もう一つは、「高耐久性プレキャストコイル」の検証だ。公道上で、安全にEVへの送電を実現するためには、道路の路面として十分な耐久性を持ちながら、送電が可能な送電コイルを開発する必要がある。そのため、同研究グループでは、送電コイルと路面を一体化したプレキャストコイルを開発し、今回の実証実験でその耐久性を検証するとしている。

 

 開発中のシステムでは、電力を適切にコントロールすることができることから、EVだけでなくプラグインハイブリッド車(PHV)にも使用できるという。