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福島 腰据えぬ保安院 常駐せず出張重ねる(東京新聞)

2012-08-03 07:29:33

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東京電力福島第一原発の事故後、経済産業省原子力安全・保安院が福島県内に派遣した三百人近い職員のうち、一年以上の長期出張が五人おり、半年以上も四人いることが、本紙の取材で分かった。現地勤務に近いが、東京から福島への比較的短期の出張を繰り返す事例が多い。現地に住まない臨時の形では、現地の信頼は得にくいのが実情。職員からは腰掛けと受け取られる状況が続くことに、疑問の声も出ている。

 本紙が入手した資料によると、保安院は、昨年三月十一日の事故発生から今年五月二十九日までに、計二百九十四人を福島に出張させた。

 出張は一回あたり一週間~一カ月ほどで、出張期間が終わるといったん東京に戻って休み、数日後にまた福島に戻るパターンを繰り返す例が多い。実態としては現地勤務とほぼ同じだ。

 旅費総額は九千九百八十七万円。本院とは別枠の予算で出張している職員もおり、総額は一億円を超える。一人当たりの最高額は約五百八十万円だった。

 福島の現地対策本部で、保安院は、原発の状態把握▽地元自治体との調整▽住民の警戒区域内への一時立ち入りの対応-など現地との信頼関係、長期的な取り組みが重要な役割を担っている。

 保安院の説明では、対策本部は原子力災害対策特別措置法に基づく臨時組織のため、「職員は出張という形を取らざるを得ない」という。

 出張では、職位に応じた日当や宿泊代が一日あたり計九千五百~一万六千三百円が支給される。宿泊代は定額のため、実費との差額は職員のものになるが、職員の身体的・精神的な負担は重い。

 同じ政府内でも、環境省は一月に福島市に除染の拠点として「福島環境再生事務所」を設置。現在、二百七人が赴任しており、担当者は「現地に事務所がないと業務がうまくまわらない。職員が常駐しないと、きめ細かい対応もできない」と話す。

 福島第一原発は廃炉まで三十年以上といわれる。保安院の長期出張者の一人は「対応が一年以上と想定していなかったのだろうが、いつまで暫定組織でいくのか」と話した。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012080390070608.html