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東電・下河辺新会長、原発事故を語る「テレビ会議映像のボカシとピー音は必要だ」  (日経ビジネス) 確かに再生屋弁護士で、人権派ではないね

2012-08-08 22:37:44

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東京電力の下河辺和彦会長は8月7日、日経ビジネスのインタビューに応じ、福島第1原子力発電所事故の原因や今後の経営方針について明らかにした。また、前日に公開した事故直後の本店や現場をつないだテレビ会議映像にも言及した。

原発事故から1年5カ月、8月6日になって、ようやく事故対応にあたった幹部のやり取りを収めた約150時間のテレビ会議映像がマスコミに公開されました。(要約版は東電のホームページで閲覧可能)。しかし、閲覧できるのはマスコミに限られており、映像には約1600カ所にボカシや「ピー」という音が入っている。こうした公開の方法に、批判の声が寄せられています。

映像公開、法的リスクも考慮した


下河辺:もともと、テレビ会議映像の公開は、私が就任後に「公開すべきだ」と口火を切った話です。枝野幸男・経済産業相が「(公開するように)事実上の行政指導をした」と発言したこともあり、「公開」に至りました。

 ただ、「公開」とはなんぞやということです。最初に朝日新聞、次に日本新聞協会から「閲覧はマスコミに限定せず、広く一般に公開すべきだ」という申し入れを受け取りました。一部の弁護士は、事故直後の東電内のテレビ会議の映像を「公共財」だと言います。公共財という認識に立てば、事故原因の究明のためには、なんら制約を加えずフルオープンすべきだ、と。

 そういう考え方もあるかもしれません。しかし、東京電力の(経営)執行の立場としては、外部の弁護士の意見を聞いたうえで、公開にあたってのいくつかの法的なリスクを踏まえたうえで、取りうる手段を考えました。日本新聞協会などからの申し出も踏まえたうえで、今の段階でギリギリの結論として取りまとめたのが、昨日から実施している(ビデオ会議の限定公開という)対応です。

以前、「映像を加工して公開するのは新生・東電にはそぐわない」と発言されていますが。

下河辺:映像に写っている福島の地元社員の人権など、もろもろの権利を侵害する可能性を無視できません。今回実施した、ボカシや「ピー音」は必要な措置であるという弁護士の意見も踏まえて実施している。もちろん、私もそう思っています。

テレビ会議映像が刑事告訴の証拠になることを避けるために、限定的な公開にとどめているのではないかという指摘もあります。

下河辺:そんなことはありえません。報道によれば、検察当局が事故に関して当社に刑事責任があるという告訴・告発状を受理したようです。もし、検察から当社に協力要請があれば、東京電力としては全面的に協力させていただくつもりです。

東電カルチャー原因説」は生産的でない

国会事故調査委員会や政府事故調査委員会など、4つの事故調査報告書が出揃いました。原発事故の真因はどこにあったと考えていますか。特に、国会事故調は「人災であった」と断定しています。

下河辺:私の立場からすれば、国会事故調の黒川(清)委員長の「(東電の)カルチャーが原発事故を引き起こした」という結論は、若干生産的ではないという印象を正直なところ持っています。国会事故調が報告書をまとめた後、複数の専門家から、「今回の事故の原因がそのレベルにあるとするのは、厳密な意味での原因究明にはならない」という意見もありました。それには私も同感というところがある。

 基本的には、あれだけの津波が極めて残念なことに福島第1原発を襲ったのが事故の原因です。大きな津波が起きる可能性は事故以前から指摘されていましたが、津波の危険性への認識が「可能性」の域を出ず、1つの試算値としてしか受け止められないうちに3・11が来てしまった。

 事故原因は、端的に(言えば)そこに尽きる。東京電力はこれまで、社内で積み重ねてきたモノの考え方や想定のなかに閉じこもっていて、外部の新たな状況や刺激を柔軟に取り込んでいくという姿勢や体質に欠けていた。それがゆえに、こうした残念な結果が起きてしまった面があると感じています。

それが人災ということではないのですか。

下河辺:あえてカギ括弧付きで言いますが、これを「人災」という人もいます。ただ、もともと私は弁護士であり、法律家というベースがあるので、「人災」というと帰責事由としての故意・過失に結びつくものにおいて成り立つもの(用語)という認識がある。

 「天災」の反対のカテゴリーとして「人災」を位置づけることには違和感があるのです。天災というのは、全くの不可抗力という意味ですよね。原発事故の究明に際して、天災と人災の二項対立で決めつけても、しっくり受け止められるものではない。

では、会長のいう「生産的な事故原因の究明」とは、どのようなものですか。

下河辺:それぞれの調査報告書の結論で、いくつかの考えさせられる切り口が提示されました。東電の調査報告書で述べられているファクトと、他の調査報告書の事実関係で相違点もあるので、追加的な検討体制を作って作業を進めていきたい。それを具体的にどういうものにするのかは、鋭意、具体化していきたいと思っています。

 いつまでに検討を終えるのか、そのスケジュールについては、コメントを控えます。ただ、検討の過程でも適宜、情報を公開していくつもりです。