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立ちはだかる東電下請け400社の原発利権(カレイドスコープ)

2012-08-30 22:29:28

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「福島原発行動隊」。若い作業員の被曝量を減らすため、高齢者たち自らが志願し、収束作業に従事したいと、昨年(2011年)結成された。プラント建造などの経験を持つベテラン技術者たち、およそ700人が作業開始に向けて準備を進めている。しかし、結成から1年、作業への協力は実現していない。政府・東電との交渉は遅々として進まず、時だけが過ぎた。

立ちはだかっているのは「原発利権」。

 

作業員の被曝偽装に気づかないぬフリをしてきた政府

今後の脱原発運動の方向性は、どうあるべか。私たちは、次のステップを踏もうとしています。そのために、国民は理論構築する必要が出てきたのです。原発反対を叫んでいるだけではダメなのです。


脱原発運動を、しっかりした基盤の上に乗せて、政府を動かしていかなくてはならなくなったのです。政府、政治家には、もうその力がないことが分かったからです。山田恭暉氏が率いる福島原発行動隊は、私たちに、その糸口を与えてくれました。


山田氏が目指しているのは、原発利権を壊すまでいかなくとも、「どうにかする」ということと、その過程で必然的に生じる国の産業構造の転換です。これは、壮大なテーマで、いまだかつて、どの政治家も成し遂げられなかったことです。


これを、国民の手で行わなければならない、ということが分かったのです。まったく、次から次へと、やれやれです。原発の利権構造を解き明かし、国民が脱原発に向けて、今後、何を目標にしていけばいいのか、そのフレームワークを固めるべきです。


  

脱原発を最終目標にしてしまうと、そこには市民から論客が出てこなくなります。「ただの国民のわがまま」で終ってしまうことを恐れます。

最初は、一気に結論まで書くつもりでしたが、断念しました。利権と原発事故収束については、あまりにも多岐わたり、範囲も広いため、1回で結論らしきところまで到達することは不可能だと分かったからです。ということで、ここでは前の記事の続編として、山田氏の主張を借りて、原発利権が作り出す弊害の本質に触れるまでにしたいと思います。

先月、東電の下請け企業による作業員の被曝偽装問題が明るみに出ました。少しでも作業員が現場で長く働けるように、厚さ数mmの鉛のカバーで放射線の線量計を覆うよう指示して被曝線量を偽装していた事件ですが、こんなことは、もはや公然の秘密で、むしろ、そうした事実があることをとっくに知っていながら、厚生労働省がまったく動かなかったことのほうが異常なのです。

テレビは、相変わらずほとんど報じないし、活字メディアのほうも、特定の新聞以外は報じないのです。また、報じたとしても、人権や・労働・安全確保の問題として捉えています。

高い専門技能を持った原発作業員は、今後、今まで以上に貴重な存在となります。彼らは、福島第一原発事故収束作業で、一定の被曝をした後、しばらくインターバルを取って、再び他の原発の定期点検などに赴くのです。

これは、彼らの生活や将来に直結した重大な問題なのです。非常に深い意味があります。私たちにとっては、原発作業員の人たちの被曝量のコントロールこそが、脱原発が成功するかの鍵になります。個人個人の被曝量の完全なる管理。これこそが、今後10年、20年と廃炉作業に向けた全事業の基本です。

どうも、国や東電には、こうした経営概念が欠如しているように見受けられます。結局、東電には事故収束が不可能であることを思い知らされるときが、すぐにやってくるでしょう。原発事故収束作業と廃炉作業は、完全に国営化して国の監督下に置くか、国の直轄事業とする以外になくなるはずです。
でなければ、国家戦略室の「2030年代(当初は『2030年の時点』ということだったが)に原発ゼロ」は達成できないでしょう。おそらく国が来月出してくる「2030年代の原発依存度」については、私たちが想像していたものと、ややかけ離れたものとなるでしょう。理由は、廃炉にかかるコストと、原発作業従事者の確保ができないからです。

そのときこそ、この原発に入ることを許されない福島原発発動隊の存在意義が再認識されるはずです。このエキスパート集団は、国を動かす強力なオピニオン・リーダーとして発言力を増していくに違いありません。

実は、東電がやっている仕事は非常に少ない

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=ZVdP6WhI3l0#t=0s

この動画は、今年1月、山田さんがテレビに出演したときのものです。

以下に重要ポイントを抜粋しておきます。

1)2011年7月12日、福島第一原発の視察を許可されて敷地内に入った分かったことは、「工程の第一ステップ、第二ステップが応急処置的なもので、10年も持つようなものではない」ということ。

2)汚染水の漏出がひんぱんに起きるのはホースの問題。事故から今まで、塩化ビニールのホースが使われており、今はポリエチレル製のものに交換されたが、これは簡単に破れる。こんな恐ろしいことを平気でまだやり続けている。(山田氏は、高い線量を浴びながら危険な作業に従事している原発の作業員に敬意を表しながらも、プロの目から見たら、こんな恐ろしいことを、よくできるものだと思っているのです)

3)東電自体がやっている収束作業は、ほんの一部にすぎず、大部分は、東芝、日立、大成、鹿島といった原発メーカーやゼネコンに委託しており、原発作業員の手配も、こうした東電の協力企業に任せ切り。東電がやっている仕事は、現実にはほとんどない。

4)こうした協力企業を束ね、コントロールしているのが、東電の社内組織である「安定化センター」。これは本来的にはナショナル・プロジェクトとしてやるべきもので、世界中から頭脳を集め、1兆円を超えるプロジェクトになるわけだから、しっかりしたマネジメントのできる組織体制をつくるべきだ。

5)東電に「福島原発行動隊」が福島第一原発に入って収束作業をやらせて欲しいと交渉したところで、一向に埒が明かないのは、こうした協力企業が力を持っており、労働力の調達において独占しているから。

6)廃炉に持っていくまでに、いずれにしても建屋内を除染し、格納容器の修理等々で大変な被曝がまだまだありうる。一律に被曝限度量を守れ、というのではダメで、年齢にあわせて被曝限度量を設定し、作業内容も細かく振り分けることによって、「被曝の最適化」を図ることが重要。

7)「福島第一原子力発電所1~4号機の 廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(2011年12月21日)」の要員計画(24ページ)によれば、2011年11月までの事故現場での作業員数は、14,100人。これから必要な人数は2012年で1,2000人程度と推定している。

このロードマップには、6年先まで必要人員計画が出ていて、徐々に必要人員の数は少なくなっていく、と東電側は見ている。ただし、スリーマイル原発事故のときの実績データを見ると、事故から7、8年後から、急激に作業員の被曝量が増えている。

この数字が意味するところは、人件費を抑制するために作業員の数を減らしたため、一人当たりの被曝時間や、線量の高い場所での集中作業が増えたことなどが考えられるが、あるいは、廃炉作業で原子炉近くでの作業が増えたからかも知れない。いずれにしても、もっと細かく分析する必要がある。

福島第一原発事故においても、いよいよ廃炉作業に取り掛かる工程に入ったところで、本格的に被曝量が増える、ということも考えられる。これは、世界の誰も経験したことがないことなので、東電のような甘い見通しでいいのだろうか。そうした観点から、今後6年程度の必要要員のシミュレーションではなく、10年、20年の長いスパンで要員計画を練っておく必要がある。

8)被曝管理をきちんとやろうとしたら、(雇用・請負)契約の体制から仕事の汲み上げ方に至るま、全部変えていかないといけない。社会の在り方、コミュニティの在り方まで変わっていかないと本当のものはできてこない。そうだとすると、この仕事は原発事故をきっかけとして日本の社会をつくり変えていくという最初の動きになのかも知れない。

9)東電がまとめた現在のロードマップのステップⅠ、ステップⅡに示されているのは、基本的に応急対策で、あくまで仮設の設備でしかない。事故の収束には、ステップⅡ以降の中期的な課題の達成から本格的な廃炉作業に向かうことが必要。

さらに長期にわたる汚染廃棄物の完了化。これらが不可欠。政府の「ステップⅡ完了で事故の収束に至った」というのは、まったく意味が不明。「ステップⅡの完了が事故収束である」という定義は、野田総理が宣言するまで、どの文書にも書かれていない言葉だった。今までの、どんなロードマップにも、「事故の収束に向けた道筋」と書かれてあるだけで、「ステップⅡの完了が、即、事故の収束である」とする文言はどこを探しても出てこない。

ただし、このことを議論しても意味がない。現実は事故の収束はされていないので、ここで言う「収束」という意味は、「事故の処理の終り」を意味する言葉ではない、と判断するしかない。

10)今後の廃炉に向けての実際の仕事は、日本原子力研究開発機構が中心になって膨大な件数の開発事項リストを作成している。その中にも、福島原発行動隊が関与したほうがいいと思われる分野がいくつもある。

11モニタリングについても、資源エネルギー庁主宰の研修(東電がJビレッジで実施)に福島原発行動隊のメンバー25名が参加していて、終了証が発行されている。福島原発行動隊内部でも、独自に研修会を行っている。

12)福島原発行動隊が、下請けの多重構造の中に入っていくためには、社会体制にメスを入れざるを得ない、と考え出している。実際に、下請け企業に接触して実状を調べてみると、このまま福島原発行動隊が入っても、意味のある活動はできないだろう。今のままの体制では、福島原発行動隊が入るわけにはいかないと考えている。

日本原子力研究開発機構は、いつの間にか、除染・廃炉作業の国からの元請けになったようです。
同機構による「ピンハネ除染」は国会でも取り上げられました。この「政・官・業」による原発利権の構図こそ、原子力ムラの宿痾といえます。彼らには羞恥心というものがないのです。

山田氏は、ここを突き崩さなければ、本当の意味での事故収束は達成されないだろう、と考えているのです。

東電、下請けの400社。立ちはだかるのは、それぞれの利権の構造


福島原発行動隊の山田理事長と岡本達思氏は、7月28日に成田を発ち、3週間にわたって米国各地で講演・説明会などをこなし、予定したすべての日程を終え、現地時間の8月20日(月)にロサンジェルスから帰国の途につきました。日本時間の21日帰国しました。

今回の訪米は、福島第一原発の事故収束に関する福島原発行動隊の主張をアメリカ合衆国の議会や世論に広く訴える目的で行われました。ロン・ワイデン上院議員のオフィスも訪ねて、福島原発の実状を説明ました。

山田理事長と岡本氏は、7月28日に成田国際空港を発ち、サンフランシスコ、シカゴ、ワシントンD.C.、デラウェア、ペンシルバニア、ニュージャージー、ニューヨーク、ロサンジェルスとアメリカの西海岸、東海岸の主要都市を訪問し、講演活動、政治家との会談、メディアの取材を精力的にくりひろ げ、多くの共感を得ました。

これらの活動の中で山田理事長は、
(1) 福島第一原発の事故収束作業を東電から切り離し、国家プロジェクトとして進めること、
(2) 世界の経験と知識を事故収束の現場作業に生かすこと、
(3) 日本の伝統的な多層下請け構造を排し、全体を貫いたプロジェクト・マネジメントを実現すること、
(4) 透明性をもった国際評価委員会を設立することを中心に、福島原発行動隊の主張を説明しました。

(以上、福島原発行動隊ホームページ・活動報告より)

下の動画は、8月19日、ロサンゼルスの市民の集会で講義したときの模様です。「日本の原発利権の多重下請け構造」について解説しています。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=filaqcBCJk8

山田氏:「日本で、今、やっている体制というのは、きわめて閉鎖的な、東電が一人で仕事をして、政府は東電に命令するという形だけしかなくて、それ以外何もない。

そのために、東電は出来ないことも、『できる』と言わざるを得ない。政府に対して何も言えないで、実態はもう行き詰まりかなと。こういう状態を壊すのは東電の力でもできない。

政府のほうも-今の担当者が、具体的には細野さんが中心になっているんですけれども-そこで何かをやろうという意志は、全くない。そういう状態。

この閉塞状態を変えようとしたら、インターナショナルな力を使う以外に手がない。われわれが、この1年間かてけていろいろ活動してみて、残念ながらたどり着いた結論です」。

山田さんが講演の中で強く主張するのは、収束作業に関わる「多重下請け構造」の実態。

400社以上が利益を分け合う構造が問題だと指摘する。7重だ、8重だと言われている下請けの構造。
その末端の人をかき集めるのに、一部とは言え、暴力団が絡んでいる。その暴力団は、根強くコミュニティに入り込んでいる。そういう状況を壊していかなければならない。

山田氏:「その間に入っている、それぞの会社は、それぞれのレベルで利権を持っているたわけですから、その人たち、その会社から、全部抵抗がある。福島第一だけでも400社、絡んでいると言われていますから。それを考えただけでも、ぞっとする抵抗がある。

もしかしたら、日本の経済界自身から大きな抵抗が出る、という可能性もなきにしもあらず」。

山田さんは、会場からの質問に、「収束作業に関わる構造的な問題と、エネルギー産業の問題は別のテーマだ」と、回答した。さらに会場からは、「事故の影響は、世界的な安全に関わる問題だ」として、国連議会に訴えるべきだ、という意見も出された。山田さんは、国連への接触へも試みたいと語った。

山田氏:「来てくださった方の手ごたえは、かなりあったけれども、それがアメリカ全土で起こるわけではないんです。
そういう意味で、まだまだほんの出だしだと思う。さらに、世界に広げる必要があるし、やはり大変な仕事が、まだまだ残っているし、やらなければならないなと思っています。

日本を動かすのは難しい、と改めて思う。政府や関係者を、どう動かすかということろまで踏み込めるか、ということでますます難しいことであると実感しています。これからですね」。

 http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-1522.html