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市町村の専門職員不足深刻 全国からの派遣低調、復旧遅れ懸念(福島民報) 他県の善意の派遣に頼るのではなく、国の責任で職員を雇用すべき

2012-09-03 11:06:11

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東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から1年6カ月を迎える中、福島県内の市町村で職員不足が深刻さを増している。総務省を通じて他の都道府県の自治体に職員派遣を求めているが、派遣が決まったのは要望の半数にも満たないのが現状だ。津波被災地では、住民の集団移転に向けた地権者の意向確認など膨大な事務作業に、限られた職員での対応を余儀なくされている。専門職員が足りず、避難住民の訪問活動への影響や災害復旧工事の遅れも懸念される。
 津波で甚大な被害を受けた相馬市では、防災集団移転事業が動きだした。市都市整備課職員は数1000人に上るとみられる地権者の移転に対する意向確認、固定資産評価といった業務に日々追われている。地権者の生活形態はさまざまで、深夜までの勤務や休日の戸別訪問も多い。

 現在の十数人での態勢では勤務シフトのやり繰りが難しい。市は総務省を通じて一般事務職員9人の派遣を全国の自治体に求めているが、決まったのは1人だけ。都市整備課の担当者は「業務量が極めて多く、担当職員に負担がのしかかっている」と悲鳴を上げる。

 先月10日に町のほぼ全域にかかる警戒区域が、早期帰還を目指す避難指示解除準備区域に再編された楢葉町。原発事故に伴い土地・住宅の固定資産評価が大きく変化したため、課税に向けて算定をやり直す作業に迫られている。今月から業務を本格化させ、今年度中に作業を完了させたい考えだが、対象は町内の約2000軒に上る。現在の税務課2人態勢では間に合わず、町は経験豊富な一般事務職員2人を要望したが、返答はない。

 「経験が求められる事務で、地元の臨時採用では対応が困難」。総務課の担当者は苦り切った表情を浮かべる。
 福祉、土木分野などで資格が必要な専門職員の不足が、復旧・復興の足かせになるとの懸念も出ている。

 原発事故で今なお多くの住民が村外で避難生活を送る川内村は、保健師ら4人態勢で郡山、いわき両市などの仮設住宅を巡回している。住民の帰還が始まっている影響で訪問先は確実に増える見通しだ。村は保健師1人の増員を要望しているが、なしのつぶてだ。担当職員は「地元で福祉の専門職を採用するのは大変難しい」と嘆く。

 震災で震度6強の揺れに襲われた須賀川市は、農地や水路など農業施設、公共施設の修復工事が山積している。農業土木、建築関係など15人程度が発注業務や現場管理に当たっているが、残業の日々が続く。

 農業土木、建築の技術職合わせて4人の派遣を希望するが、1人も決まらない。人事課職員は農家の営農に影響が出ることを危惧し、「対応が追い付かない。支援を全国に訴えたい」と力を込める。

 一方、県総務部は「全国の自治体は行財政改革を進めており、どこも職員数に余裕はない。まず、自治体が職員確保に努めてほしい」と求めている。

※県内市町村の職員派遣要望 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による業務量の増大に伴い、浜通りと中通りを中心とした25市町村が総務省を通じて全国の自治体から職員派遣を求めている。8月1日現在、212人の要望があるが、決定は86人(40.6%)にとどまる。要望の半数近い102人は一般事務で、固定資産評価などに精通した職員の需要が高いが、充足は47人(46.1%)となっている。一方、復旧作業が山積する市町村から土木や建築分野の技術職計96人の要望があるが、決定は35人(36.5%)。住民が避難生活を送る自治体などが保健師計10人を求めているが、決まったのは3人(30%)。

 

http://www.minpo.jp/news/detail/201209033438