HOME |和解成立2割満たず 原子力損害賠償紛争解決センター 迅速化に課題(福島民報) |

和解成立2割満たず 原子力損害賠償紛争解決センター 迅速化に課題(福島民報)

2012-09-04 11:54:23

fukusimachusai_generated_thumbnail
東京電力福島第一原発事故に伴う賠償で、東電と被災者の和解仲介を担う政府の原子力損害賠償紛争解決センター福島事務所は13日で開所から1年を迎える。8月31日現在、東京、福島両事務所に計3793件の申し立てが寄せられたが、和解が成立したのは639件と2割にも満たない。当初、3カ月程度での和解を想定していたが、これまでに平均6カ月を要している。迅速化には人員不足や、個人が作成する申立書の不備をいかに解消するかが課題だ。

■申し立て8月末現在で3793件
■取り下げも
 センターは和解仲介手続きの迅速化を進めようと、政府が示した賠償基準より具体的な基準「総括基準」を独自に作成したほか、東電が不当に和解仲介手続きを遅らせた場合、年利5%の損害遅延金を課すなどした。
 取り組みは奏功し、和解件数は4月が44件、5月が64件、6月が93件、7月が134件、8月が151件と順調な伸びを見せている。
 ただ、8月31日現在、申し立ては3793件。このうち、和解が成立したの639件、16.8%にとどまっているのが現状だ。
 手続きが思うように進まないため、申し立てを取り下げたケースは同日現在、231件に上っている。

■福島県内常駐せず
 センターには3日現在、東電と被災者の和解仲介手続きを担当する仲介委員が205人、調査官が61人いる。開所当初から専門家らに人員不足を指摘されたため、日弁連を通じて調査官となる弁護士を募集し、今月1日付で新たに18人が加わった。
 しかし、月約400件ペースで押し寄せる申し立てに、現状では処理しきれないのが実情だ。関係者は「増員はしたが、まだまだ足りない」と嘆く。
 さらに、仲介委員や調査官は全員、東京事務所に常駐。郡山市の福島事務所には常駐しておらず、浅井嗣夫所長を含め弁護士は2人だけ。調査官が申立人から直接話を聞く口頭審理のため、東京からいわき市や会津若松市などを訪れる。
 県内に調査官らが常駐できない理由について、センターは「東京事務所を中心に書類などを一括管理しているため」としている。善後策として8月からテレビ会議を導入し、東京事務所にいながら県内の福島事務所や各支所の申立人と話すことができるようするなど対策は講じたが、関係者の1人は「大事な話はテレビ会議ではできず、結局訪れることになる」と打ち明ける。県内の弁護士からは「被災者がいる福島に調査官が常駐していないのはおかしい」と批判が出ている。

■精査に忙殺
 センターに提出された申立書のうち、7~8割は弁護士ではなく、被災者本人が作成したものだ。証拠書類が足りなかったり、記入漏れがあったりするケースが多い。
 調査官はその都度、1つ1つ本人に確認しながら書類を精査している。しかし、膨大な時間を要するため、和解成立が遅れる一因となっているという。
 センター関係者は「損害を裏付ける証拠をきっちりとそろえた上で、弁護士などにアドバイスを受けてから申立書を作成してほしい」と呼び掛ける。

 

http://www.minpo.jp/news/detail/201209043459