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高線量被ばく:治療など役立つ可能性があるたんぱく質作成(毎日)

2012-09-04 15:49:12

産業技術総合研究所本部(茨城県つくば市)


 高線量被ばくによる障害の治療や予防に役立つ可能性があるたんぱく質を、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が新たに作成し、マウス実験で効果を確かめた。6日に東北大(仙台市)で始まる日本放射線影響学会で発表する。

 新たなたんぱく質は、2種類のたんぱく質の遺伝子を人工的に組み換えて合成して作られ、「FGFC」と名付けられた。

 研究チームは、生後8週間のマウス8匹に放射線の一種のエックス線6シーベルトを照射し、2時間後に腹部にFGFCを投与した。その結果、20日目で6匹が生き残った。投与しないマウスでは生存は2匹だけだった。また、エックス線を照射する前にFGFCを投与すると、30日後もすべてが生存。投与しなかった群では3匹が死んだ。

 強い放射線を浴びると、小腸の粘膜にある幹細胞がダメージを受けるが、照射後の投与には、残った幹細胞の増殖を促進する効果があり、照射前の投与には幹細胞が死ぬのを防ぐ効果があるという。

実験の被ばく線量は、99年に茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)で起きた臨界事故で死亡した作業員が浴びた線量に匹敵する。産総研の今村亨・研究グループ長は「安全性を確かめたうえで治療薬を開発し、原発事故の際の備蓄品リストに加えてもらうことを目指したい」と話している。【安味伸一】

 

http://mainichi.jp/select/news/20120904k0000e040166000c2.html