HOME10.電力・エネルギー |原発の段階的廃止はエネルギー安全保障に悪影響=東電の広瀬社長(WSJ) |

原発の段階的廃止はエネルギー安全保障に悪影響=東電の広瀬社長(WSJ)

2012-09-06 19:46:19

Yoshikazu Tsunoyoshikazu Tsunoa/Agence France-Presse/Getty Images
 【東京】東京電力JP:95010.00%の広瀬直己社長は、東電の投資や燃料購入計画を「全面的に」見直す必要があり、国のエネルギー安全保障に悪影響を及ぼす可能性があるとして日本が原発を段階的に廃止する可能性について懸念を表明した。広瀬社長は5日に行われたインタビューで、「日本はエネルギー資源がないので、経験的に言えば、ある程度分散化しておいた方がセキュリティー上も、燃料調達上も賢いと思う」とし、1970年代のオイルショック後、「我々は2回、大幅な値上げをしたが、当時日本の社会はパニックになった」と語った。

Yoshikazu Tsunoyoshikazu Tsunoa/Agence France-Presse/Getty Images




 こうした発言の背景には、昨年の福島第1原発事故を踏まえ、野田佳彦首相率いる民主党政権が来週、先送りされていた日本の将来的な電源構成に関する決定を発表する見通しであることがある。日本の電力会社や大企業の多くは、事故発生までは日本の電力の約30%を供給していた原発の維持を強く主張している。

 だが、世論調査の結果は国民の大多数が原発廃止を支持していることを一貫して示しており、野田政権は現在、2030年までの段階的廃止を提案する方向に傾きつつある。

  そのため東電は微妙な立場に立たされている。福島第1原発の所有者であり運営者でもある東電は、事故の原因となった災害への備えが不十分だったとして、国民と事故調査委員会の双方から非難を受けている。だが、同社は国内最大の原発である柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市・刈羽村)も運営している。事故被害者への補償や原子力エネルギーの不足を補うための割高な化石燃料の購入に必要なコストを賄うには財務力の強化が必要であり、それが可能かどうかは柏崎刈羽原発の早期再稼働にかかっている。

 安全性に対する国民の懸念から、柏崎刈羽原発をはじめ国内の原発は2基を除いて全て運転が停止されている。

 広瀬社長は、「(福島第1原発のような事故を)絶対、2度と起こらないようにするからと説明し、新潟の人々がOKと言ってくれて初めて(柏崎刈羽原発を)運転を再開できる」と述べた。

 原発の再稼働をめぐる状況は不透明なままだが、広瀬社長は黒字化計画を見直す予定はないとした。同計画の達成には、13年4月までに柏崎刈羽原発の原子炉のうち少なくとも1基の再稼働が必要になる。

 長期的に原発が1基も再稼働されなければ、東電は液化天然ガスへの依存度を高めざるを得なくなるだろうと広瀬社長は指摘した。福島第1原発事故直後に一時的に再稼働された非効率な石油火力発電所を、より効率的なガス火力発電所に恒久的に置き換える必要が出てくるためだ。

 原発が稼動しない状況が続いた場合、代替の火力は「LNGでやるのがコスト的にも環境にもベストだと思っているので、調達を拡大しないといけない」と、広瀬社長は述べた。

  さらに、「この状態が続けば、抜本的な対策を考えなければならない」とし、「緊急設置電源で高いディーゼルオイルを使うものなどをずっと使い続けるわけにはいかない。ずっと動かないということになれば、(以前から計画している)新しい発電所の建設を前倒しにしないければならない」とした。

 

http://jp.wsj.com/Japan/node_507229